広域通信網 (コウイキツウシンモウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
広域通信網 (コウイキツウシンモウ) の読み方
日本語表記
広域通信網 (コウイキツウシンモウ)
英語表記
WAN (ワイエーエヌ)
広域通信網 (コウイキツウシンモウ) の意味や用語解説
広域通信網とは、遠く離れた場所にある複数のローカルエリアネットワーク(LAN)や個々のデバイスを相互に接続し、データ通信を可能にするための広範囲なネットワーク基盤を指す。これは、同一の建物内や限られた敷地内で完結するLANとは異なり、都市間、国境を越え、さらには大陸間といった地理的に広大な範囲をカバーする。企業が複数の支店や営業所を持つ場合、それらの拠点間で情報を共有したり、本社システムにアクセスしたりするためには、この広域通信網が不可欠となる。また、私たちが日常的に利用しているインターネットも、世界中の様々なネットワークが相互に接続された、最も大規模な広域通信網の一種である。システムエンジニアにとって、この広域通信網の仕組みや技術要素を理解することは、現代のITインフラを構築し、運用する上で極めて重要な基礎知識となる。 詳細を述べる。広域通信網は、その名の通り広範囲をカバーするため、LANとは異なる技術やインフラが利用される。主な構成要素としては、異なるネットワーク間でのデータ転送を司るルータ、物理的な接続を確立する回線終端装置やモデム、そして通信サービスを提供する通信事業者(キャリア)の設備が挙げられる。通信媒体としては、光ファイバーケーブルが海底や地中に敷設され、高速かつ大容量のデータ伝送を可能にしているほか、衛星通信や無線技術も特定の環境下で利用されることがある。 広域通信網の接続形態にはいくつかの種類がある。代表的なものに、専用線、VPN、そしてMPLSがある。専用線接続は、特定の二拠点間を常時占有する形で接続する方式で、高い帯域幅と安定性、セキュリティを確保できる反面、コストが高いという特徴がある。主に、大容量のデータを高速かつ確実にやり取りする必要がある企業の本社とデータセンター間などで利用される。次に、VPN(Virtual Private Network)は、インターネットのような公衆網を利用しながらも、データの暗号化や認証技術を駆使することで、あたかも専用線であるかのように安全な仮想的なプライベートネットワークを構築する技術である。専用線に比べてコストを抑えつつ、柔軟な拠点間接続やリモートワーク環境の実現に貢献しており、今日の企業ネットワークで広く採用されている。さらに、MPLS(Multiprotocol Label Switching)は、通信事業者の基幹網でよく用いられる技術で、データパケットにラベルを付与することで、ルーティング処理を高速化し、サービス品質(QoS)を向上させることが可能である。これにより、音声や動画といったリアルタイム性が求められる通信の品質を保証しやすくなる。 広域通信網は、TCP/IPプロトコルを基盤として動作し、データはIPパケットとして送信される。ルータは、これらのパケットが目的地まで正しく到達するように、ルーティングプロトコルを用いて最適な経路を選択し、転送する役割を担う。この経路選択の仕組みが適切に設計・運用されなければ、ネットワークの遅延や停止といった問題が発生する可能性がある。 現代の企業活動において、広域通信網はクラウドサービスの利用、グローバルなビジネス展開、そしてリモートワークの普及といった様々な側面でその重要性を増している。多くの企業が基幹システムをクラウドへ移行する中、各拠点からクラウドサービスへ安全かつ安定的に接続するための広域通信網の設計は、システムエンジニアの重要な業務の一つである。また、IoTデバイスの普及に伴い、膨大な量のデータが遠隔地から収集・分析されるようになり、その通信基盤としても広域通信網が利用されている。 システムエンジニアは、広域通信網の設計、構築、運用、そして保守に至るまで、多岐にわたる業務に携わる。具体的には、適切な通信方式の選定、ルータやファイアウォールなどのネットワーク機器の選定と設定、ネットワークの監視とパフォーマンスチューニング、そして障害発生時の原因究明と復旧作業などが含まれる。広域通信網におけるセキュリティ対策も極めて重要であり、不正アクセスや情報漏洩を防ぐための設計や実装もシステムエンジニアの責務となる。これらの業務を円滑に進めるためには、広域通信網に関する深い知識と技術的なスキルが不可欠である。