ウェブサーバ(ウェブサーバ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
ウェブサーバ(ウェブサーバ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
ウェブサーバ (ウェブサーバ)
英語表記
web server (ウェブサーバー)
用語解説
ウェブサーバは、インターネットの最も基本的な構成要素の一つであり、WebサイトやWebアプリケーションをユーザーに提供するための基盤となるソフトウェアである。ユーザーがWebブラウザを通じて特定のURLにアクセスすると、そのリクエストを受け取り、要求されたWebページや画像、動画などの情報をユーザーのブラウザに送信する役割を担う。具体的には、HTMLファイル、CSSファイル、JavaScriptファイル、画像ファイルといった様々な種類のファイルを管理し、WebブラウザからのHTTP(Hypertext Transfer Protocol)リクエストに応じて、適切なHTTPレスポンスを生成し返送する。これにより、ユーザーはWebブラウザ上で情報を見たり、サービスを利用したりすることが可能となる。ウェブサーバがなければ、今日私たちが当たり前のように利用しているインターネット上の多くのサービスは機能しない。
ウェブサーバの動作原理は、クライアント・サーバモデルに基づいている。まず、ユーザーがWebブラウザ(クライアント)のアドレスバーにURLを入力し、Enterキーを押すと、WebブラウザはそのURLに対応するウェブサーバのIPアドレスをDNS(Domain Name System)を通じて問い合わせる。IPアドレスが判明すると、WebブラウザはそのIPアドレスとウェブサーバがHTTP通信に使用する特定のポート番号(通常はHTTPでは80番、HTTPSでは443番)を指定して、ウェブサーバへTCP接続を確立しようとする。接続が成功すると、WebブラウザはHTTPリクエストメッセージを作成し、ウェブサーバへ送信する。HTTPリクエストには、要求するリソースのパス(例: /index.html)、使用するHTTPメソッド(例: GET、POST)、クライアントの情報などが含まれる。
ウェブサーバはこのHTTPリクエストメッセージを受信すると、まずその内容を解析する。リクエストされたリソースがウェブサーバのファイルシステム上に存在する静的なファイル(HTML、CSS、JavaScript、画像など)であれば、ウェブサーバは該当するファイルを読み込み、その内容をHTTPレスポンスメッセージのボディ部に含める。さらに、HTTPレスポンスには、リクエストが成功したかどうかを示すステータスコード(例: 200 OK)、コンテンツのタイプ(Content-Type)、コンテンツの長さ(Content-Length)などの情報を含むHTTPヘッダが付加される。生成されたHTTPレスポンスメッセージは、TCP接続を通じてWebブラウザに返送される。Webブラウザはこのレスポンスを受信し、HTMLを解釈して画面に描画することで、ユーザーはWebページを閲覧できるようになる。
しかし、ウェブサーバの機能は単に静的ファイルを返すだけではない。現代のWebアプリケーションは、ユーザーの入力に応じて内容が変化したり、データベースから情報を取得して表示したりする動的なコンテンツが主流である。ウェブサーバは、このような動的なコンテンツのリクエストを受けた場合、直接ファイルを返すのではなく、CGI(Common Gateway Interface)やFastCGIなどのインタフェースを介して、PHP、Python、Ruby、Javaなどのプログラミング言語で記述されたアプリケーションプログラム(またはアプリケーションサーバ)に処理を委譲する。アプリケーションプログラムは、リクエストされたデータに基づいてデータベースを操作したり、複雑な計算を行ったりして、最終的に動的に生成されたHTMLやJSONなどのコンテンツをウェブサーバに返す。ウェブサーバはその結果を受け取り、同様にHTTPレスポンスとしてクライアントに送信する。この場合、ウェブサーバはアプリケーションサーバの「窓口」のような役割を果たし、クライアントからのリクエストをアプリケーションサーバに橋渡しし、アプリケーションサーバからの応答をクライアントに返送する仲介者となる。このような構成は、Webサイトの拡張性や柔軟性を高める上で非常に重要である。
主要なウェブサーバソフトウェアとしては、オープンソースの「Apache HTTP Server」(通称Apache)や「Nginx」(エンジンエックス)、そしてMicrosoftが提供する「IIS」(Internet Information Services)などが広く利用されている。Apacheは長年にわたり最も普及しているウェブサーバであり、多機能で幅広いOSに対応している。Nginxは、Apacheに比べて軽量で高速な処理が可能であり、特に大量の同時接続を扱う際のパフォーマンスに優れているため、リバースプロキシやロードバランサとしての利用も多い。IISはWindows Server環境で利用されることが多く、Microsoft製品との連携が容易である。これらのソフトウェアはそれぞれ特徴を持ち、構築されるシステムの要件に応じて選択される。
ウェブサーバは、HTTP通信の処理、ファイルの配信といった基本的な機能に加え、様々な付加機能も提供する。例えば、特定のユーザーだけがアクセスできるページに対する認証機能、SSL/TLSプロトコルによる通信の暗号化(HTTPS)によるセキュリティ機能、ウェブサーバへのアクセス履歴やエラー情報を記録するログ機能、キャッシュの制御、URLの書き換え(URLリライティング)などが挙げられる。また、多数のウェブサーバが連携して大規模なシステムを構築する場合、ウェブサーバはリクエストを複数のアプリケーションサーバに分散させるためのロードバランシングの起点となったり、アプリケーションサーバの前面に立って静的コンテンツの配信やSSL/TLS終端処理、リクエストのフィルタリングなどを行ったりするリバースプロキシとして機能することもある。
ウェブサーバの安定稼働は、Webサービス提供において極めて重要である。そのため、OSのセキュリティパッチの適用、ウェブサーバソフトウェア自体の設定最適化、十分なリソース(CPU、メモリ、ディスクI/O、ネットワーク帯域)の確保、そして外部からの不正アクセスを防ぐためのファイアウォール設定など、多岐にわたる運用・管理が求められる。ウェブサーバは、インターネットを支えるまさに心臓部とも言える技術であり、システムエンジニアとしてWebサービスを開発・運用する上でその仕組みを深く理解することは不可欠である。