作業分解図 (サギョウブンカイズ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
作業分解図 (サギョウブンカイズ) の読み方
日本語表記
作業分解図 (サギョウブンカイズ)
英語表記
Work Breakdown Structure (ワークブレークダウンストラクチャー)
作業分解図 (サギョウブンカイズ) の意味や用語解説
作業分解図(WBS: Work Breakdown Structure)とは、プロジェクトの目標を達成するために、プロジェクト全体をより小さく、管理しやすいタスクに分割した階層構造の図のことだ。プロジェクトマネジメントにおいて、スコープ定義の重要な要素であり、プロジェクトの成功に不可欠なツールと言える。 具体的には、プロジェクトの最終的な成果物(デリバラブル)を頂点として、それを段階的に分解していく。分解された各要素は、さらに細分化可能な場合は、より小さなタスクへと分割される。このプロセスを繰り返すことで、最終的に担当者が明確に割り当てられ、実行可能なレベルのタスクまで落とし込むことができる。 作業分解図を作成する目的は、主に以下の3点だ。 1. スコープの明確化: プロジェクトで実施すべき作業範囲を明確に定義し、関係者間で共通認識を持つことができる。これにより、スコープクリープ(プロジェクト範囲の予期せぬ拡大)を防ぐ効果がある。 2. タスクの見落とし防止: プロジェクトを構造的に分解することで、必要なタスクを網羅的に洗い出すことができる。これにより、計画段階でのタスクの見落としを減らし、手戻りを最小限に抑える。 3. 進捗管理の容易化: 各タスクの進捗状況を把握しやすくなり、プロジェクト全体の進捗管理が容易になる。遅延が発生しているタスクを早期に特定し、適切な対策を講じることができる。 作業分解図の作成方法はいくつか存在するが、代表的なものとして、名詞分解法とアクティビティ分解法がある。 名詞分解法は、成果物に着目して分解する方法だ。プロジェクトの最終成果物から順に、必要な成果物、部品、要素などを洗い出し、それらを階層的に構造化していく。例えば、Webサイト構築プロジェクトの場合、最終成果物は「完成したWebサイト」となる。これを「トップページ」「会社概要ページ」「製品紹介ページ」のように分解し、さらに各ページを「デザイン」「コーディング」「コンテンツ作成」といったタスクに分解していく。 一方、アクティビティ分解法は、作業に着目して分解する方法だ。プロジェクトの開始から完了までに必要なアクティビティを洗い出し、それらを時系列順に並べて構造化していく。例えば、ソフトウェア開発プロジェクトの場合、「要件定義」「設計」「開発」「テスト」「リリース」といった主要なアクティビティを洗い出し、各アクティビティをさらに詳細なタスクに分解していく。 作業分解図を作成する際の注意点としては、以下の点が挙げられる。 * 分解の粒度: タスクの粒度が粗すぎると、進捗管理が難しくなり、逆に細かすぎると、管理コストが増加してしまう。担当者が1週間程度で完了できるタスクに分解するのが目安となる。 * MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive): 各階層の要素は、互いに重複がなく、かつ、すべてを網羅している必要がある。これにより、タスクの重複や抜け漏れを防ぐことができる。 * 関係者の合意: 作業分解図は、プロジェクトの関係者間で合意を得て作成する必要がある。関係者の意見を取り入れ、認識のずれをなくすことが重要だ。 作業分解図は、プロジェクトの規模や複雑さに応じて、さまざまな形式で表現される。単純なプロジェクトであれば、表計算ソフトやドローイングツールで作成することもできる。大規模なプロジェクトでは、専用のプロジェクトマネジメントツールを使用するのが一般的だ。 システムエンジニアを目指す上で、作業分解図の作成スキルは非常に重要となる。プロジェクトの計画段階から参画し、スコープ定義やタスク管理を行う上で、作業分解図は欠かせないツールとなるからだ。積極的に作業分解図の作成に携わり、実践的なスキルを磨いていくことが望ましい。