【ITニュース解説】第837回 Active Directoryへの統合ツールadsysを使う(2) Ubuntuマシンのセットアップ

2024年11月06日に「Gihyo.jp」が公開したITニュース「第837回 Active Directoryへの統合ツールadsysを使う(2) Ubuntuマシンのセットアップ」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

Active DirectoryにUbuntuを統合するツールadsysの設定方法を解説。前回のAD側準備に続き、今回はUbuntuマシン本体の設定を進める。Windowsのネットワーク管理機能であるActive DirectoryにLinuxマシンを連携させる手順の第2回。

ITニュース解説

現代の企業や組織では、たくさんのコンピューターやユーザーが存在するネットワークを効率的に管理する必要がある。この「集中管理」を実現する最も代表的なシステムの一つが、Microsoftが提供する「Active Directory(アクティブディレクトリ、略してAD)」だ。ADは、ネットワーク内のすべてのコンピューター、ユーザー、プリンターなどの情報を一元的に管理し、それぞれのアクセス権限や設定を細かく制御するための「中心的な管理システム」としての役割を果たす。

想像してみてほしい。もし会社に100台のパソコンがあり、社員が新しく入社したり、部署を異動したりするたびに、それぞれのパソコンに手作業でアカウントを作成し、必要なソフトウェアをインストールし、セキュリティ設定を行うとしたら、どれほどの時間と労力がかかるだろうか。ADがあれば、そうした作業をADサーバー上から一括して、自動的に、しかも安全に行うことができる。これがADの最大のメリットだ。ユーザーは一度ADに登録されたIDとパスワードで、ADに接続されているどのコンピューターにもログインできるようになり、必要な情報に安全にアクセスできるようになる。

しかし、ADが主に得意とするのは、Windowsオペレーティングシステムが動作するコンピューターの管理だ。最近では、サーバーや開発環境、特定の業務用途などで、LinuxのようなWindows以外のOSも利用される機会が増えている。特に、オープンソースのLinuxディストリビューションである「Ubuntu(ウブントゥ)」は、使いやすさや豊富なソフトウェアから、多くの現場で採用されている。

ここで問題が生じる。WindowsマシンはADで集中管理できるが、Ubuntuマシンは個別に管理する必要があり、管理者の負担が増大してしまうのだ。これを解決し、UbuntuマシンもADの恩恵を受けられるようにするのが、今回取り上げるツール「adsys(エーディーシス)」である。adsysは、UbuntuマシンをActive Directoryに「統合」し、ADの持つ強力な集中管理機能、特に「グループポリシー」の仕組みをUbuntuマシンにも適用できるようにするための接続役となる。

グループポリシーとは、ADの核となる機能の一つで、ネットワーク上のコンピューターやユーザーに対して、さまざまな設定やセキュリティポリシーを一元的に適用する仕組みだ。例えば、「ログインパスワードは8文字以上で、数字と記号を含むこと」「特定のウェブサイトへのアクセスを禁止する」「デスクトップの背景を変更させない」「特定のソフトウェアのインストールを許可しない」など、非常に細かなルールをADサーバーから設定し、ネットワーク全体に適用できる。これにより、セキュリティレベルの均一化や、IT環境の標準化が容易になる。

通常、グループポリシーはWindowsマシン向けに用意されている設定項目が多い。しかし、adsysのようなツールを利用することで、Ubuntuマシンもグループポリシーの管理対象に加えることができるようになるのだ。そのために必要なのが、「管理テンプレート」と呼ばれるものだ。管理テンプレートは、グループポリシーで設定できる項目を増やすための「設定項目を定義するファイル」だと考えると分かりやすい。例えば、「Ubuntuにおける特定のソフトウェアの自動更新設定」や「UbuntuでのSSH接続の許可/不許可」といった、Ubuntu固有の設定項目をグループポリシーから制御できるようにするための定義ファイルをADサーバーに読み込ませるのだ。前回の記事では、このUbuntu用の管理テンプレートをActive Directory側に配置し、ADがUbuntuマシン向けの設定項目を扱えるようにする準備が行われた。

そして今回の記事では、いよいよその準備が整ったADに対して、Ubuntuマシン側から接続し、グループポリシーの適用を受けられるようにするための「Ubuntuマシンのセットアップ」に焦点が当てられている。具体的には、Ubuntuマシンにadsysというツールをインストールし、正しく設定を行う手順だ。

まず、Ubuntuマシンにadsysパッケージ自体を導入する作業が必要になるだろう。これは、Ubuntuが提供するソフトウェアリポジトリから、コマンド一つで簡単に行えることが多い。adsysがインストールされたら、次に、そのadsysがActive Directoryサーバーとどのように連携するかを設定する。例えば、どのActive Directoryドメインに参加するのか、認証にはどのような方法を用いるのかといった、具体的な接続情報を設定ファイルに記述する作業が含まれると推測される。

これらの設定が終われば、いよいよUbuntuマシンをActive Directoryドメインに「参加」させる手順に進む。これは、WindowsマシンがADに参加するのと同じように、UbuntuマシンがADのメンバーとなり、ADから認証を受けたり、グループポリシーを受け取ったりできるようにするプロセスだ。この参加が成功すれば、ADに登録されたユーザーアカウントでUbuntuマシンにログインできるようになり、さらにADから設定されたグループポリシーがUbuntuマシンにも自動的に適用されるようになる。

つまり、adsysとActive Directoryの統合が完了すれば、IT管理者はADサーバーの管理画面から、WindowsマシンだけでなくUbuntuマシンの設定も一元的に行えるようになる。これにより、個別のUbuntuマシンにログインして設定を変更する手間が省け、セキュリティポリシーの適用漏れを防ぎ、運用管理の効率を大幅に向上させることができる。システムエンジニアを目指す上で、このような異なるOS環境をいかに効率的に統合・管理していくかは、非常に重要な知識となる。この連携は、多様なシステムが混在する現代のITインフラにおいて、管理の複雑さを軽減し、よりセキュアで一貫性のある環境を構築するための基盤となるのだ。

この一連の作業は、ITインフラの設計や運用に携わるシステムエンジニアにとって不可欠なスキルの一部であり、特に大規模な組織で多様なOSを扱う場合には、その重要性はさらに増す。Active DirectoryとLinuxの連携は、異種混合環境における集中管理の実現という、現代のIT課題に対する具体的な解決策の一つなのである。