【ITニュース解説】AIコーディングで「保活手帳」というアプリをリリースした

2025年09月01日に「Zenn」が公開したITニュース「AIコーディングで「保活手帳」というアプリをリリースした」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

個人開発者が、自身の保育園探しでの課題を解決するため、AIコーディングを活用してWebアプリ「保活手帳」を開発。保育園や幼稚園の見学で使う質問リストを簡単に管理できる点が特徴である。

ITニュース解説

最近、一個人の開発者によって「保活手帳」というWebアプリケーションがリリースされた。これは、保育園や幼稚園を探す「保活」を行う保護者を支援するためのツールであり、園の見学時に確認したい質問リストの管理やメモの記録を簡単に行えるように設計されている。このアプリケーションが注目される理由は、その機能性だけでなく、開発プロセスにAI、特に大規模言語モデルであるChatGPTを全面的に活用した「AIコーディング」が採用された点にある。この事例は、AIと人間が協業する現代的なソフトウェア開発の一つの形を示しており、これからシステムエンジニアを目指す人々にとって、新しい開発手法や技術活用の可能性を学ぶ上で非常に有益な教材となる。

システム開発の原点は、多くの場合、身近な課題の解決にある。「保活手帳」もその例外ではない。開発者自身の二度目の保活経験が開発の直接的なきっかけとなった。保育園の見学では、施設の環境や方針、費用など、確認すべき事項が多岐にわたる。これらの質問を事前にリストアップしておくことは重要だが、いざリストを管理しようとすると、手書きのメモでは判読が難しくなったり、スマートフォンのメモアプリでは管理が煩雑になったりするという課題があった。この「自分が本当に欲しいと思えるツールがない」という具体的な課題認識が、アプリケーション開発の原動力となった。このように、ユーザーのニーズを深く理解し、それを解決するための具体的な機能を定義することは、システムエンジニアにとって最も重要なスキルの一つである。このアプリは、質問項目をカテゴリ分けして管理でき、見学当日にはチェックリストとして活用し、その場でメモを残せるという、まさに課題解決に直結した機能を提供している。

この開発で中心的な役割を果たしたのがAIコーディングである。これは、開発者が自然言語で「このような機能を作りたい」とAIに指示すると、AIがそれに沿ったソースコードを生成する開発手法を指す。ただし、AIが全自動でアプリケーションを完成させるわけではない。開発者はAIの「コーディングパートナー」として振る舞う。まず、どのような技術構成(技術スタック)で開発を進めるかといった大枠の設計からAIに相談し、提案を受ける。次に、具体的な機能実装の段階では、「ユーザーが質問を追加できるフォームを作ってほしい」といった詳細な指示をAIに与え、コードを生成させる。重要なのは、生成されたコードを鵜呑みにせず、開発者自身がその内容を理解し、レビューし、必要に応じて修正・調整を加える点である。これは、経験豊富なエンジニアとペアを組んで開発を進める「ペアプログラミング」という手法に酷似している。また、開発中に発生したエラーコードをAIに提示し、原因の特定や解決策を尋ねることも可能であり、開発の効率を飛躍的に向上させる。AIへの的確な指示、生成されたコードの読解力と修正能力が、AIコーディングを成功させる鍵となる。

「保活手帳」の開発には、現代のWeb開発で主流となっている技術が採用されている。アプリケーションの見た目や操作感を担当するフロントエンドには、人気のライブラリであるReactを基盤としたフレームワーク「Next.js」が使われた。これにより、高速で快適なユーザー体験を実現している。プログラミング言語には、JavaScriptに静的型付けの機能を追加した「TypeScript」が採用され、コードの品質向上とバグの早期発見に貢献している。アプリケーションの裏側、すなわちデータの保存やユーザー認証(ログイン機能)といったバックエンド機能は、「Supabase」というサービスを利用して構築された。SupabaseはBaaS(Backend as a Service)と呼ばれるクラウドサービスの一種で、本来であれば複雑なサーバー側の設定やデータベース管理を大幅に簡略化してくれる。これにより、開発者はフロントエンドの開発に集中しやすくなる。そして、完成したアプリケーションは「Vercel」というプラットフォームを使ってインターネット上に公開(デプロイ)されている。VercelはNext.jsとの親和性が非常に高く、簡単な手順で迅速なデプロイが可能だ。これらのモダンな技術スタックは、一見すると初心者には敷居が高く感じられるかもしれないが、AIのサポートを得ることで、学習と実践のハードルは大きく下がり、短期間でのプロダクト開発が可能になることをこの事例は示している。

この「保活手帳」の開発事例は、システムエンジニアを目指す初心者に対して多くの重要な示唆を与えている。第一に、プログラミングは目的ではなく、あくまで課題を解決するための手段であるという本質を再認識させてくれる。自身の経験から課題を見つけ出し、それを解決するアプリケーションを自らの手で作り上げる経験は、技術的なスキル以上に価値がある。第二に、AIを有効活用する能力が、これからのエンジニアにとって必須のスキルになることを示している。プログラミングの基礎知識を土台として、AIにどのように指示を与え、その出力をどう評価し、自らのプロジェクトに組み込んでいくかという能力が、生産性を大きく左右するだろう。AIは、新しい技術を学ぶ際の強力な家庭教師にもなり得る。従来であれば独学で習得するのに時間がかかったモダンな技術も、AIと対話しながら実践的に学ぶことで、学習速度を飛躍的に高めることができる。しかし、AIに依存しすぎるのではなく、その出力の正当性を判断できるだけの基礎的な知識をしっかりと身につけることが、AIを真に使いこなすための前提条件となる。AIコーディングは、ソフトウェア開発の民主化を推し進め、アイデアさえあれば誰でも迅速に形にできる時代をもたらした。この変化の波に乗り、AIを強力なパートナーとして開発に取り組む姿勢こそが、次世代のシステムエンジニアに求められる資質と言えるだろう。

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