【ITニュース解説】Audi's Concept C previews the company's next-gen EV aspirations
ITニュース概要
Audiは次世代EVの方向性を示すコンセプトカー「Concept C」を発表した。これは、物理操作を重視したシンプルな内装と、過去の名車から着想を得た外装が特徴だ。EVだけでなく、将来のハイブリッド車など様々な動力源を持つAudi車のデザイン基盤となる可能性があり、生産化も視野に入れている。
ITニュース解説
自動車業界では今、電動化への大きな流れの中で、各メーカーがその戦略を再検討する過渡期にある。かつて多くの企業が電気自動車(EV)への全面的な移行を宣言したが、現在はハイブリッド車やプラグインハイブリッド車といった、より移行期の手段に再び注目が集まっている状況だ。その中で、ドイツの自動車メーカーであるアウディも、市場の需要がある限り内燃機関車のサポートを続けるという姿勢を見せている。しかし、同社が今回ミラノで発表した新しいコンセプトカー「Concept C」は、アウディが目指す次世代のEV、そしてハイブリッドやその他のパワートレインを持つ車の姿を鮮やかに提示している。 この「Concept C」は、アウディが提唱する「the radical next(急進的な次世代)」という動きの一部として位置づけられている。これは、ブランドのデザインにおける一種のリブート(再起動)であり、内装から始まる「原点回帰」プロジェクトだという。近年のアウディの車には、ダッシュボードを大きく占める巨大なタッチスクリーンが一つまたは二つ搭載されていることが多いが、「Concept C」ではその傾向から大きく逸脱している。純粋でシンプルなダッシュボードの中央には、繊細に光る縦方向のスロットがあるのみだ。車のコントロールは物理的なボタンやスイッチが中心で、それらは重厚感と触覚に訴えかけるように設計されており、デザイナーたちはこれを「アウディクリック」と表現している。これは、触れることで確かなフィードバックが得られる、かつてのような操作感を重視していることを示唆する。 もちろん、現代的な感覚への配慮もなされている。10.4インチのタッチスクリーンは搭載されているが、普段はダッシュボードの裏に隠されており、必要な時に素早く回転して現れる仕組みだ。同様に、ボタンや触覚センサー式の表面も、必要に応じてバックライトが点灯し、それ以外はダッシュボードに溶け込むように消える。これは、必要な情報や機能だけが提示され、ドライバーが運転に集中できるような配慮であり、ユーザーインターフェース(UI)とユーザーエクスペリエンス(UX)の設計において、情報のオーバーロードを避けるための工夫が見て取れる。物理的な操作とデジタルな表示を状況に応じて使い分けることで、より直感的で安全な運転体験を提供しようとしているのだ。 車の外観もまた、大きな変革を遂げている。新しい「Concept C」のデザインには、2023年に生産を終了したアウディの最後の偉大なロードスター、TTとの共通点が見られる。しかし、このコンセプトカーの最も重要なインスピレーション源を辿ると、さらに時代を遡り、1930年代のオートユニオン・グランプリマシンにまで行き着く。具体的には、1936年から1937年にかけて、現在のフォーミュラワンの前身となるレースで活躍したType Cというマシンだ。そのType Cの形状や垂直に立ち上がったグリルが、「Concept C」にも確かに受け継がれている。しかし、この新しいロードカーには、当時のヴィンテージレーシングマシンにはなかった大きな特徴がある。それは、折りたたみ式のハードトップコンバーチブルだ。 「Concept C」は、アウディの歴史上初めてこの種のルーフを採用した車であり、これによりクーペのような洗練されたルックスと、ロードスターの開放的な走行体験を両立させている。後部のルーバー(羽板)とシンプルで先細りになった形状は、チタンの持つ微妙な暖かみを模倣したカラーリングで彩られている。この先細りになった形状のため、後部窓は存在しない。ポールスター4と同様に、「Concept C」も後方視界を極端に排しており、リアビューミラーはデジタル表示となる。しかし、この車にリアビューミラーだけでなく、サイドミラーやフロントガラスのワイパーまで搭載されていることは、このコンセプトカーがかなり市販に近い状態にあることを示唆している。 肝心な走行性能、すなわち「どうやって動き、どれくらい遠くまで、どれくらい速く走るのか」という実用的な側面については、残念ながらまだ多くの詳細が明らかにされていない。アウディはこれがEVになるとは言っているものの、そのデザインは「電動モビリティへの移行が進む中で」、ハイブリッドや内燃機関を含むあらゆる種類のオプションを搭載する新世代のアウディ車に影響を与えるだろうとも述べている。この「Concept C」自体は間違いなくバッテリー駆動だが、それ以上の詳細は共有されていない。後輪駆動であるとされており、これは後部に単一モーターが搭載されることを示唆している。しかし、将来的にアウディの代名詞ともいえるQuattro(全輪駆動)モデルが登場することは確実視されている。 この車の前身であるTTは、フォルクスワーゲン・ゴルフのシャシーをベースにしており、当初は前輪駆動だった。しかし、この新しいマシンが基盤を共有するとすれば、ポルシェの次期電動718(ミッションRで先行公開されたもの)である可能性が高い。これは、自動車メーカー間でのプラットフォーム共有、つまり複数の車種で共通の基盤技術や部品を利用する「モジュラーデザイン」の考え方が、コスト削減や開発効率向上にどれほど重要であるかを示している。異なるブランド間であっても、EV化の進展に伴い、高性能な電動プラットフォームの共通化が進むのは自然な流れと言えるだろう。 しかし、現時点ではこれらはあくまで憶測であり、この「Concept C」もコンセプトカーの域を出ていない。アウディがこのような車をいつ生産するのかについては言及されていないが、将来的には実際に購入できる車になる運命にあるとされている。これは、惜しまれつつ生産終了したTTのファンにとっては朗報だろう。もし最終的に生産される「Concept C」が、コンセプトモデルと同じくらい魅力的な姿でディーラーに並ぶことになれば、先代のTTと同じくらい大きな話題を呼ぶことになるかもしれない。この車は、単なるデザインスタディではなく、アウディがこれからの自動車産業でどのように存在感を示していくかを明確に提示する重要な一台と言えるだろう。