【ITニュース解説】Automating Publisher Reporting on AWS: A Serverless Architecture with Slack Alerts
2025年09月03日に「Dev.to」が公開したITニュース「Automating Publisher Reporting on AWS: A Serverless Architecture with Slack Alerts」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
AWSのサーバーレス技術で出版社の読者レポートを自動作成するシステム構築例。EventBridgeでLambdaを起動し、Athenaでデータを集計してS3に保存。その結果を別のLambdaが整形し、Slackへ自動通知する仕組みを解説。(118文字)
ITニュース解説
このシステムの目的は、日々の出版物に関するレポート作成業務を完全に自動化することである。従来、担当者が手作業で行っていたデータ集計や報告書作成を、コンピュータプログラムに任せることで、時間と労力を削減し、人為的なミスを防ぐことを目指している。この仕組みの中心にあるのが「サーバーレスアーキテクチャ」という考え方だ。これは、プログラムを動かすためのサーバーを自前で用意したり、常に管理したりする必要がない技術のことを指す。プログラムが動くときだけ必要なリソースが自動で割り当てられ、処理が終われば解放されるため、コストを非常に効率的に抑えることができるのが大きな特徴である。このプロジェクトでは、Amazon Web Services (AWS) が提供する複数のサーバーレスサービスを巧みに組み合わせて、自動化のパイプLINEを構築している。
この自動レポートシステムは、主に四つのAWSサービスによって構成されている。まず、全体の司令塔となるのが「Amazon EventBridge」である。これはシステム全体を動かすためのスケジュールを管理するタイマーのような役割を担う。例えば「毎日午前9時に処理を開始せよ」といった命令を正確に実行する。次に、実際の処理を行う頭脳兼実行部隊が「AWS Lambda」だ。Lambdaは、特定のきっかけ(今回はEventBridgeからの時間指定の命令)に応じて、あらかじめ用意されたプログラムコードを実行するサービスである。このシステムでは、役割の異なる三つのLambda関数が連携して動作する。そして、処理対象となる元データや、処理後に作成されたレポートファイルを保管する場所が「Amazon S3」という巨大なオンラインストレージサービスだ。最後に、S3に保管された膨大なデータの中から必要な情報をSQLという言語を使って高速に抽出・集計するのが「Amazon Athena」である。Athenaは、S3をあたかも巨大なデータベースのように扱えるようにする強力な分析ツールだ。
具体的な処理の流れを追ってみよう。まず、毎日の決まった時刻にAmazon EventBridgeが最初のLambda関数、レポート生成担当の「Report Generator」を起動する。起動されたLambdaは、Amazon Athenaに対して「今日の読書活動データを集計してください」というクエリ(命令)を投げる。AthenaはS3上のデータソースを分析し、結果を返す。Lambdaは受け取った結果をCSV形式のレポートファイルとして整形し、命名規則に従ってS3バケットに保存する。この作業が完了すると、関係者が待つビジネスチャットツールSlackに「レポートが完成しました」という一次通知が送られる。
レポート生成から少し時間を置いて、EventBridgeは二番目のLambda関数、集計と通知を担当する「Publisher Summary Aggregator」を起動する。このLambdaは、先ほどS3に保存された最新のCSVレポートを読み込み、出版社ごとの読書数を四半期単位で集計し直す。そして、その結果を単なるテキストではなく、人間が見やすいように整形された表形式のメッセージに変換し、再度Slackに投稿する。これにより、関係者はチャット画面を見るだけで、どの出版社の書籍がどれくらい読まれているかを一目で把握できる。さらに、オプションとして三番目のLambda関数「Missing Publisher Detector」も用意されている。これも決められた時間に起動し、書籍データに出版社情報が欠落しているといったデータの不備がないかを専用のAthenaクエリでチェックする。もし問題が見つかれば、どのデータに不備があるかを示したレポートファイルをS3に作成し、そのファイルへのリンクを添えてSlackで警告を発する。
もちろん、このようなシステムを構築する過程では、いくつかの課題に直面した。例えば、当初はSlackに毎日同じデータが投稿されてしまう問題があった。これはEventBridgeのスケジュール設定が月次になっていたという単純なミスが原因で、日次実行に修正することで解決した。また、レポートを生成するLambdaと、そのレポートを読んでSlackに通知するLambdaの実行タイミングが近すぎたために、通知側がまだ生成されていない古いレポートを読んでしまう「レースコンディション」という問題も発生した。これに対しては、二つのLambdaの起動スケジュールに10分間の間隔を設けることで、確実に最新のファイルが処理されるようにした。その他にも、Slackの通知が見づらいというフィードバックを受けて、メッセージのフォーマットを整形済みテキストとして表示されるように工夫したり、Athenaが一時的に作成する中間ファイルでS3が散らからないように、専用フォルダに隔離し、ライフサイクルポリシーを設定して数日後に自動で削除されるようにしたりといった改善が加えられた。
この自動化パイプラインを導入した結果、レポート作成に関わる手作業は完全になくなり、チームはより創造的な業務に集中できるようになった。データはSlackを通じてリアルタイムに共有され、組織全体の情報可視性が向上した。サーバーレス技術の活用により、インフラの維持管理コストを最小限に抑えつつ、将来的なデータ量の増加にも柔軟に対応できるスケーラブルな基盤が整った。このように、複数のクラウドサービスを適切に組み合わせることで、定型的な業務を効率化し、データの品質と活用度を高めることができる。この事例は、製品の利用状況分析やユーザー行動追跡、営業ダッシュボードの自動更新など、様々な分野に応用可能な実践的パターンと言えるだろう。