【ITニュース解説】Simplifying Workload Communication with Azure Private DNS Zones
2025年09月04日に「Dev.to」が公開したITニュース「Simplifying Workload Communication with Azure Private DNS Zones」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
Azure Private DNS Zonesは、仮想ネットワーク内のサーバー間通信をIPアドレスではなくドメイン名で行う仕組みを提供する。カスタムDNS不要で、Private DNS Zone作成、仮想ネットワークリンク、レコード追加の3ステップで、安全かつシンプルな内部通信を実現する。
ITニュース解説
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、クラウド環境におけるネットワークの理解は非常に重要だ。特に、アプリケーションやサービスが互いに通信する際の「名前解決」の仕組みは、安定したシステム運用に不可欠な要素である。今回の記事は、Azureの「Private DNS Zone」というサービスを活用し、社内のシステム(ワークロード)間通信を、IPアドレスではなくドメイン名を使ってシンプルかつセキュアに行う方法を解説している。
まず、なぜドメイン名で通信したいのか、その基本的な考え方を説明する。コンピュータ同士が通信する際は、必ずIPアドレスという数字の羅列を使う。例えば、「192.168.1.100」のような形式だ。しかし、人間にとってIPアドレスは覚えにくく、どのIPアドレスがどのシステムを指しているのかを常に把握するのは難しい。そこで登場するのがドメイン名、例えば「google.com」のような人間が理解しやすい名前である。このドメイン名とIPアドレスの対応関係を管理し、ドメイン名からIPアドレスを調べる役割を果たすのがDNS(Domain Name System)だ。社内システムの場合でも、もしあるシステムのIPアドレスが変更された場合、そのシステムと通信する全てのアプリケーションの設定を修正しなければならない。しかし、ドメイン名で通信していれば、DNSの対応情報だけを更新すればよいため、運用が格段に楽になる。
今回のケースでは、インターネットに公開されていない、社内ネットワーク内のワークロード間でドメイン名による通信を実現したいという要件があった。このような場合、一般的には自分でDNSサーバーを構築・運用することも可能だが、それにはコストと手間がかかる。そこで、Azureのサービスを最大限に活用し、カスタムDNSソリューションを避けながらこの要件を満たすために採用されたのが、Azure Private DNS Zoneというサービスだ。
Azure Private DNS Zoneは、Azureの仮想ネットワーク(VNet)内部だけで機能する、プライベートなDNS解決サービスである。インターネットに公開されることのない、閉じた環境での名前解決を可能にする。このサービスを使えば、企業は自社の内部ドメイン名(例: private.contoso.com)を定義し、そのドメイン名に対する名前解決をAzureプラットフォーム上で簡単かつ安全に管理できるのだ。
具体的な実装手順は以下の通りだ。
まず第一に、「Private DNS Zone」の作成から始める。これは、private.contoso.comという名前のドメイン名に対する名前解決を管理するための「箱」を作成するようなものだと考えると分かりやすい。Azure Portalで「Private DNS zones」を検索し、新しいゾーンを作成する。この際、リソースグループ、ゾーン名(private.contoso.com)、そしてゾーンが存在するリージョン(例: East US)を指定する。このステップで、社内ドメイン名の基盤となるプライベートなDNS管理領域が確立される。このゾーンは、あくまで名前解決の情報を持つ場所であり、まだどの仮想ネットワークからこの情報を参照できるかは決まっていない状態だ。
次に重要なのが、「仮想ネットワークリンク」の作成である。作成したprivate.contoso.comゾーンを開き、「仮想ネットワークリンク」の項目を選択して新しいリンクを作成する。ここで、「app-vnet-link」のようなリンク名と、実際にこのDNSゾーンを参照させたい仮想ネットワーク(例: app-vnet)を指定する。さらに、「自動登録を有効にする」というオプションを選択することが可能だ。これを有効にすると、指定した仮想ネットワーク内にある仮想マシンなどが自動的にこのPrivate DNS Zoneに自身の情報(IPアドレスとホスト名)を登録し、互いに名前で解決できるようになる。このリンクによって、app-vnet内の全てのワークロードが、private.contoso.comというゾーンで定義されたドメイン名を使って、他のワークロードのIPアドレスを問い合わせられるようになるのだ。これにより、特定の仮想ネットワーク内のシステムは、外部に情報が漏れることなく、内部のドメイン名で通信できるようになる。
最後のステップは、「DNSレコードセット」の作成である。これは、private.contoso.comゾーン内で具体的なドメイン名とIPアドレスの対応関係を定義する作業だ。例えば、バックエンドのワークロードをbackend.private.contoso.comというドメイン名でアクセスできるようにしたい場合、Private DNS Zone内で「backend」という名前のレコードセットを作成する。レコードのタイプは、ドメイン名をIPv4アドレスに変換する「Aレコード」を選択し、バックエンドワークロードの実際のIPアドレス(例: 10.1.1.5)を設定する。TTL(Time To Live)は、この情報がキャッシュされる期間を示す値で、ここでは「1」(秒)と設定されている。このレコードが作成されることで、app-vnet内のワークロードがbackend.private.contoso.comというドメイン名で通信しようとした際、Private DNS Zoneが10.1.1.5というIPアドレスを正しく返すようになる。
これら一連の設定により、社内のワークロードはIPアドレスを直接知らなくても、backend.private.contoso.comのような分かりやすいドメイン名を使って安全に通信できるようになった。このアプローチの大きなメリットは、Azureネイティブのサービスを利用するため、DNSサーバーの構築や運用管理といった手間が一切かからない点にある。また、仮想ネットワークの内部で完結するため、名前解決の情報がインターネットに公開されることがなく、セキュリティが向上する。システムエンジニアにとって、クラウド環境におけるネットワークとDNSの知識は非常に重要であり、Azure Private DNS Zoneのようなサービスを理解し活用できるスキルは、クラウドネイティブなアーキテクチャを設計・構築する上で不可欠となるだろう。