【ITニュース解説】バックアップとは? 取得方法や取得単位、世代管理の方法を分かりやすく解説

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ITニュース概要

データ消失や破損に備え、データを別の場所に保存するのが「バックアップ」。記事では、取得方法、取得単位、世代管理といった基礎知識を分かりやすく解説する。

ITニュース解説

バックアップは、現代のITシステムにおいて非常に重要な要素である。その目的は、万が一の事態に備えてデータを保護し、システムの安定稼働を維持することだ。データは、コンピュータの故障、ソフトウェアの不具合、人為的なミス、サイバー攻撃など、さまざまな原因で失われたり破損したりする可能性がある。これらの予期せぬ事態が発生した際に、バックアップデータがあれば、元の状態にデータを復旧させることができる。システムエンジニアにとって、バックアップの知識はシステム設計、運用、そして障害対応において不可欠な基礎知識となる。 バックアップの基本的な考え方は、大切なデータを元の場所とは別の安全な場所にコピーして保存しておくことである。これは、万が一元のデータが利用できなくなった場合でも、コピーからデータを復元できるようにするためだ。この「別の場所」とは、物理的に離れた場所であったり、異なるストレージデバイスであったり、あるいはクラウドサービス上であったりする。重要なのは、元のデータと同時に失われるリスクを低減することである。 バックアップにはいくつかの取得方法があり、それぞれに特徴がある。主要なものとしては、フルバックアップ、差分バックアップ、増分バックアップの三種類が挙げられる。 まず、フルバックアップは、対象となる全てのデータを毎回完全にコピーする方法である。この方法の最大の利点は、復元が非常に簡単であることだ。最新のフルバックアップさえあれば、それ一つでデータを完全に復元できる。しかし、毎回全てのデータをコピーするため、バックアップにかかる時間や、バックアップデータを保存するために必要なディスク容量が大きくなるという欠点がある。 次に、差分バックアップは、最初に取得したフルバックアップから、変更された部分のみをバックアップする方法である。つまり、前回のフルバックアップからの変更点だけを保存する。これにより、フルバックアップに比べてバックアップにかかる時間や容量を抑えることができる。データを復元する際には、最新のフルバックアップと、その後の最新の差分バックアップの二つがあれば良い。フルバックアップの頻度を少なくし、日々の変更点を差分バックアップで補う運用が一般的だ。 そして、増分バックアップは、前回のバックアップ(フル、差分、増分を問わず)から変更された部分のみをバックアップする方法である。これは、差分バックアップよりもさらに効率的で、バックアップにかかる時間と容量を最も少なくすることができる。しかし、データを復元する際には、最初のフルバックアップに加え、それ以降の全ての増分バックアップが必要となるため、復元の手順が複雑になる可能性がある。 これらのバックアップ方法以外にも、リアルタイムに近い形でデータを同期するレプリケーション(ミラーリング)という手法もある。これは厳密にはバックアップとは異なるが、データの可用性を高めるための重要な手段として併用されることが多い。レプリケーションは、常に最新のデータを別の場所に複製しておくことで、元のデータに障害が発生してもすぐに切り替えて利用できるようにする。 次に、バックアップの取得単位について見てみよう。これは、何を一つの塊としてバックアップするか、という考え方である。 最も基本的な単位は、ファイルやフォルダである。これは、特定のドキュメントや写真、アプリケーションの設定ファイルなど、個別のデータを選択してバックアップする方法だ。ユーザーデータや特定のアプリケーションのデータ保護に適している。 次に、データベース単位のバックアップがある。企業システムでは、顧客情報や取引履歴など、重要なデータがデータベースに格納されていることが多い。データベースのバックアップでは、データベースシステム全体の状態や、データそのものを一貫性のある形で取得する。これには、データベース専用のツールが使われることが多く、データの整合性を保ちながらバックアップを取得する技術が必要となる。 さらに、仮想マシン単位のバックアップも一般的だ。クラウド環境やデータセンターでは、一台の物理サーバー上で複数の仮想マシンが動作していることが多い。仮想マシンのバックアップでは、仮想ディスクイメージ全体や、仮想マシンの実行状態(スナップショット)をバックアップする。これにより、仮想マシン全体を迅速に復元したり、別の環境に移行したりすることが可能になる。 最後に、システム全体(ベアメタル)のバックアップという単位もある。これは、OS、アプリケーション、設定ファイルなど、コンピュータシステム全体を丸ごとディスクイメージとしてバックアップする方法である。万が一、サーバーが起動不能になった場合でも、このイメージからシステム全体を復元できるため、非常に強力な復旧手段となる。 最後に、バックアップの「世代管理」について解説する。世代管理とは、過去に取得した複数のバックアップデータをどのように保存・管理するか、という考え方である。単に最新のバックアップだけを保存するのではなく、複数の時点のバックアップを保持することで、より柔軟なデータ復旧を可能にする。例えば、誤ってファイルを削除してしまった場合に、昨日や一週間前の状態に戻したい、といった要望に応えることができる。 世代管理の方法として一般的なのが、FIFO(First-In, First-Out)とGrandfather-Father-Son(GFS)である。 FIFOは「先入れ先出し」の原則で、最も古いバックアップデータを順次削除し、常に一定数のバックアップを保持する方法だ。例えば、「直近7世代を保持する」といったルールであれば、新しいバックアップが取得されるたびに最も古いバックアップが削除される。シンプルで分かりやすいが、特定の古い時点のデータを長期的に保持したい場合には向かない。 一方、GFS(Grandfather-Father-Son)は、「祖父」「父」「息子」という名前が示すように、異なる周期でバックアップを管理する方法である。例えば、「Son(息子)」として日次バックアップを毎日取得し数世代保持する、「Father(父)」として週次バックアップを毎週取得し数週間保持する、「Grandfather(祖父)」として月次バックアップを毎月取得し数ヶ月から数年保持する、といった組み合わせで運用する。この方法を採用することで、日々の細かい変更への対応と、長期的なデータ保持の両方を効率的に実現できる。特定の時点への復旧が必要な場合に、幅広い選択肢を提供できるため、多くの企業で採用されている。 また、特定の業務要件に応じて、柔軟な世代管理ルールを設定することもある。例えば、法規制や監査要件に対応するため、特定の期間のデータを必ず保持する必要がある場合などだ。 システムエンジニアとして、これらのバックアップの取得方法、取得単位、そして世代管理の方法を理解し、システムの要件や利用可能なリソースに応じて最適なバックアップ戦略を設計・実装する能力は非常に重要となる。データは企業の最も貴重な資産の一つであり、その保護はITシステムの安定稼働と事業継続性の確保に直結する。したがって、バックアップは単なるデータコピー作業ではなく、システム運用の根幹を支える重要なプロセスであると認識する必要がある。

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