【ITニュース解説】「Binary Exploitation Workshop for Students」参加記 / CTF Writeup
ITニュース概要
サイバーディフェンス研究所主催のBinary Exploitation Workshop for Students参加記事。1日目はスタックベースのBinary Exploitationを中心に学習。CTF形式で脆弱性のあるプログラムを解析し、攻撃コードを作成して脆弱性を突く演習を行った。
ITニュース解説
この記事は、2025年8月に行われた「Binary Exploitation Workshop for Students」というイベントの参加記録だ。このワークショップは、サイバーディフェンス研究所が主催し、学生向けにバイナリ Exploitation(悪用)の技術を学ぶことを目的としている。特に、記事では1日目の内容を中心に、スタックベースのバイナリ Exploitation について解説されている。 まず、バイナリ Exploitation とは何かを理解する必要がある。プログラムは、コンピュータが理解できる形式(バイナリコード)で記述されている。バイナリ Exploitation は、このバイナリコードの脆弱性を見つけ出し、悪用することで、プログラムの本来の動作とは異なる挙動をさせる技術のことだ。攻撃者は、この技術を利用して、プログラムをクラッシュさせたり、システムを乗っ取ったりすることが可能になる。 記事で取り上げられている「スタックベースのバイナリ Exploitation」は、プログラムがデータを一時的に保存する場所である「スタック」領域の脆弱性を悪用する手法だ。スタックオーバーフローという脆弱性が、この手法の中心となる。 スタックオーバーフローは、プログラムがスタック領域にデータを書き込む際に、割り当てられた領域を超えてデータを書き込んでしまうことで発生する。例えば、プログラムが10バイトの文字列を格納するためにスタック上に10バイトの領域を確保したとする。しかし、プログラムに20バイトの文字列を書き込むように指示すると、10バイトを超えた分のデータは、スタック上の別の場所に上書きされてしまう。 この上書きされたデータが、プログラムの実行順序を決定する「リターンアドレス」と呼ばれる場所だった場合、攻撃者はプログラムの実行をコントロールできるようになる。リターンアドレスは、関数が終了した後にどこに戻るかを指定するアドレスだ。攻撃者は、リターンアドレスを自身が用意した悪意のあるコードのアドレスに書き換えることで、プログラムが終了する際にその悪意のあるコードを実行させることができる。 ワークショップでは、このスタックオーバーフローの原理を理解し、実際に攻撃を仕掛ける演習が行われたと考えられる。記事には具体的なコードや攻撃手法の詳細は記載されていないが、参加者は実際に手を動かしながら、脆弱性を見つけて悪用するプロセスを体験したはずだ。 システムエンジニアを目指す上で、バイナリ Exploitation の知識は直接的に必要となる場面は少ないかもしれない。しかし、プログラムの脆弱性を理解し、攻撃者の視点を持つことは、セキュアなシステムを開発するために非常に重要だ。脆弱性を知ることで、より堅牢なコードを書くことができ、攻撃からシステムを守るための対策を講じることができる。 例えば、スタックオーバーフローを防ぐためには、入力データのサイズを厳密にチェックし、バッファオーバーフローが発生しないように注意する必要がある。また、コンパイラやOSが提供するセキュリティ機能(スタックカナリア、アドレス空間配置のランダム化など)を活用することで、攻撃をより困難にすることができる。 今回のワークショップ参加記は、バイナリ Exploitation の世界への入門として、非常に興味深い内容だ。セキュリティエンジニアを目指す人はもちろん、システムエンジニアを目指す人も、このような情報を参考に、セキュリティに関する知識を深めていくことが重要だと言えるだろう。