【ITニュース解説】BlenderでIllustratorのデータを読み込んでみよう [Illustrator本発売記念・特別編]
2024年11月11日に「Gihyo.jp」が公開したITニュース「BlenderでIllustratorのデータを読み込んでみよう [Illustrator本発売記念・特別編]」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
Blender連載の特別編で、Illustratorで作成したデザインデータをBlenderへ読み込み、厚みを加えて立体的にする方法を解説。デザインソフトと3Dソフトの連携を学ぶ初心者向けの基礎を理解できる。
ITニュース解説
今回解説する記事は、Blenderという3Dグラフィックソフトウェアと、Illustratorという2Dデザインソフトウェアを連携させ、Illustratorで作成した2次元のデータをBlenderに取り込み、それに厚みを与えることで3次元の立体的なオブジェクトとして扱う方法についてである。システムエンジニアを目指す初心者にとって、このようなツール間の連携やデータの取り扱いは、将来的にさまざまな分野で役立つ知識となる。
まず、Blenderとは何か。Blenderは、3Dモデリング、スカルプト、アニメーション、レンダリング、ゲーム開発、VFX(視覚効果)など、幅広い3D制作機能を持つオープンソースの統合型3Dグラフィックソフトウェアである。無料で利用できるにもかかわらず、プロの現場でも使われるほどの高い機能性と拡張性を持つことが特徴だ。システムエンジニアにとって、3Dグラフィックスの基礎を学ぶことは、ゲーム開発、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)アプリケーション、データ可視化、ユーザーインターフェース(UI)デザインといった分野で役立つ可能性がある。Blenderは、これらの3D技術の具体的な原理や操作感を体験できる優れた学習ツールとなる。
次に、Illustratorとは何か。Illustratorは、Adobe社が提供するベクトルグラフィックソフトウェアである。ベクトルグラフィックとは、点を線で結び、その線の太さや色、曲がり具合などを数式で定義する画像表現形式を指す。この形式の最大の利点は、画像をどれだけ拡大・縮小しても画質が劣化しない点にある。ロゴマーク、イラスト、アイコン、Webサイトのレイアウトなど、拡大縮小が頻繁に行われるデザイン制作において不可欠なツールである。ビットマップ画像(ピクセルで構成される画像)とは異なり、形状が数学的に定義されているため、後述するBlenderでの3D化にも適している。
では、なぜIllustratorで作成した2DデータをBlenderに読み込む必要があるのか。Illustratorは優れた2Dデザインツールだが、3次元の奥行きや立体感を表現することはできない。しかし、ロゴやアイコン、図形など、Illustratorで作成されたデザインを、Blenderの持つ3D機能で立体化したいというニーズは非常に多い。例えば、企業のロゴを3Dの看板として表現したり、Webサイトのアイコンを立体的な要素として利用したりする場合が挙げられる。この連携は、2Dのデザイン資産を3D空間で活用し、表現の幅を広げるための重要なワークフローとなる。
IllustratorのデータをBlenderに読み込む具体的な方法の概念について解説する。Illustratorで作成したベクトルデータは、Blenderが直接読み込める形式に変換する必要がある。一般的には、SVG(Scalable Vector Graphics)形式で保存し、Blenderにインポートする方法が使われる。SVGもまたXMLベースのベクトル画像形式であり、Illustratorのデータを忠実に保ったままBlenderに持ち込むことが可能だ。Blenderは、インポートされたSVGデータを「カーブオブジェクト」として認識する。カーブオブジェクトとは、Blender内で点と点をつなぐ線によって形成されるオブジェクトのことで、Illustratorで作成された複雑な図形も、Blenderのカーブとして正確に再現される。この段階ではまだ2次元の平面的な形状である。
読み込んだ2次元のカーブオブジェクトに「厚みをつける」処理は、Blenderの持つ強力な機能の一つである。これは、平面的な形状に奥行きを与え、立体的なオブジェクトへと変換するプロセスだ。Blenderのカーブオブジェクトには、「押し出し(Extrude)」というプロパティが用意されている。このプロパティの値を調整することで、カーブの形状に沿って厚みを持たせることができる。例えば、Illustratorで作成した円形のロゴをBlenderに読み込み、押し出しの値を設定することで、その円が円柱状の立体的なオブジェクトに変化する。また、ベベル(傾斜)を付けることで、エッジを丸くしたり、角張らせたりすることも可能で、これによりより洗練された印象を与えることができる。このようにして、2Dのデザインが3D空間内で物理的な存在感を持つ立体物へと生まれ変わるのである。
システムエンジニアを目指す初心者にとって、このようなBlenderとIllustratorの連携とその過程は、非常に多くの学びを提供する。まず、異なるソフトウェア間のデータ連携の重要性を理解できる。現実世界のシステム開発では、複数のツールやサービスが連携して動作することがほとんどであり、データの互換性や変換の知識は必須となる。次に、ベクトルデータと3Dオブジェクトデータの構造の違いや、データ形式変換の概念を実践的に学ぶことができる。Illustratorの数式で定義された2Dデータが、Blenderでどのように3Dの頂点、辺、面で構成されるオブジェクトに変換されるのかを体験することは、データ構造への理解を深める。さらに、2Dデザインの限界を3Dツールで克服し、表現の幅を広げるという問題解決のアプローチも学ぶことができる。これは、プログラミングだけでなく、ユーザーが求めるものを具現化するための総合的な思考力育成に繋がる。将来的に、WebサイトのUI/UX設計、ゲームの背景やキャラクター作成、AR/VRコンテンツ開発など、多岐にわたる分野でこのようなデザイン・モデリングツールを理解していることが強みとなるだろう。
この記事で紹介されているBlenderとIllustratorの連携は、単なるツールの使い方に留まらず、2Dと3D、そして異なるシステムがどのように協調して、より豊かな表現を生み出すのかという、システム全体を見渡す視点を与えてくれる。プログラミング能力だけでなく、このような視覚的な表現やデータ連携の理解を深めることは、将来のシステムエンジニアとして非常に価値のある経験となるはずだ。