【ITニュース解説】第876回 夏休み特別企画 自作PCを組もう[後編] ——組み立てたあとにローカルLLM「gpt-oss-20b」を動かす
ITニュース概要
自作PCの組み立て方とUbuntuのインストール手順を解説。さらに、組み上がったPCでローカルLLM「gpt-oss-20b」を動かす方法までを伝える。夏休み特別企画の後編で、自分でPCを作りAIを動作させる全工程がわかる。
ITニュース解説
このニュース記事は、パソコンの自作からオペレーティングシステム(OS)のインストール、そして最先端の人工知能(AI)技術である大規模言語モデル(LLM)のローカル環境での動作まで、一連のプロセスを解説している。システムエンジニア(SE)を目指す初心者にとって、この実践的な体験は、コンピューターのハードウェアとソフトウェアの基本的な仕組みを理解し、実際に手を動かすことで得られる貴重な学習機会となる。 まず、自作PCの組み立てについて説明する。自作PCとは、CPU(中央演算処理装置)、メモリ、ストレージ、マザーボード、グラフィックボード(GPU)、電源ユニット、PCケースといった個別の部品を自分で選び、それらを組み合わせて一台のパソコンを完成させることだ。自作の主な利点は、自分の特定の用途に合わせて最適な性能を持つ部品を選び、コストパフォーマンスの高いシステムを構築できる点にある。また、部品一つひとつの役割と接続方法を理解することで、パソコンの内部構造に関する深い知識とトラブルシューティング能力を養うことができる。組み立ての具体的な工程では、まずマザーボードにCPUを慎重に取り付け、CPUクーラーを装着する。次に、メモリをマザーボードのスロットに差し込み、ストレージデバイス(HDDやSSDなど)をPCケースに取り付ける。高性能なGPUは、AI処理に不可欠なため、これもマザーボードの適切なスロットに挿入する。最後に、電源ユニットを設置し、すべての部品に電源ケーブルやデータケーブルを接続していく。この作業では、精密な電子部品を扱うため、静電気対策を徹底し、無理な力を加えないよう慎重に進めることが重要となる。特に、LLMのような計算負荷の高いAIを動作させる場合、高性能なCPU、大容量のメモリ、そして非常に強力なGPUの選定が不可欠であり、これらの部品がAIの処理速度と快適さに直接影響する。 次に、組み立てたPCにOSとしてUbuntuをインストールする工程について述べる。OSは、パソコンのハードウェアを制御し、ユーザーがアプリケーションを利用できるようにするための基盤となるソフトウェアだ。WindowsやmacOSが一般的に知られているが、開発現場ではLinuxというOSの一種が広く利用されている。UbuntuはそのLinuxディストリビューションの中でも特に人気があり、使いやすさと豊富な開発ツールが特徴だ。オープンソースソフトウェアであるため、誰でも無料で利用でき、世界中の開発者コミュニティによって常に改良が続けられている。Ubuntuをインストールするためには、まず別のパソコンを使ってUbuntuのインストール用データをUSBメモリなどに書き込み、起動可能なインストールメディアを作成する。このUSBメモリを自作PCに差し込み、PCの電源を入れた際にUEFI(またはBIOS)設定画面に入り、USBメモリから起動するように設定を変更する。その後は、画面の指示に従って言語や地域、キーボードレイアウトを選択し、ディスクのパーティション(記憶領域の分割)設定を行い、ユーザー名とパスワードを設定すればインストールは完了する。Ubuntuが選ばれる理由は、プログラミング環境の構築が容易であり、多くの開発ツールがデフォルトで提供されていること、そしてLLMなどのAI関連ソフトウェアがLinux環境で開発・動作することが多いため、AI開発との相性が非常に良い点にある。 最後に、Ubuntuをインストールした自作PC上で、ローカルLLMである「gpt-oss-20b」を動作させる部分について解説する。LLMとは、大量のテキストデータを学習することで、人間が話すような自然な言葉を理解し、文章を生成する能力を持つAIモデルだ。普段利用するChatGPTのようなサービスはインターネット上のサーバーで動作するが、「ローカルLLM」とは、インターネットに接続することなく、自分のPCの計算資源を使ってLLMを動かすことを指す。この方式の利点は、入力データが外部に送信される心配がないためプライバシーが保護されること、そして自分のPCの性能を最大限に活用してカスタマイズや実験を自由に行える点にある。しかし、「gpt-oss-20b」のような大規模なモデルをローカルで動かすには、非常に高い計算能力が求められる。このため、自作PCの組み立て段階で、高性能なCPU、大容量メモリ、そして特に強力なGPUを選ぶことが重要となる。GPUは画像処理だけでなく、AIの学習や推論(計算)において、膨大なデータを並列処理する能力に優れており、LLMの動作速度に直接影響を与える。記事で言及されている「gpt-oss-20b」は、オープンソースとして公開されているLLMの一つであり、そのモデルデータと実行環境をダウンロードし、Ubuntu上で動作させることができる。具体的な手順としては、まずPythonなどのプログラミング言語環境や、AI開発に必要なPyTorchなどのフレームワーク、そしてモデル実行のための特定のライブラリをインストールする。その後、巨大なモデルデータをダウンロードし、コマンドラインインターフェースから特定のコマンドを実行することで、LLMにテキストを入力し、その応答を得るといった操作が可能になる。この経験を通じて、SE初心者は単にパソコンを組み立てるだけでなく、最先端のAI技術がどのように手元のハードウェア上で動作しているのかを体験し、ハードウェアとソフトウェアが連携して複雑なタスクをこなす仕組みを深く理解することができる。 このように、自作PCの組み立てから始まり、Ubuntuのインストール、そしてローカルLLMの動作に至る一連のプロセスは、システムエンジニアとして必要な基礎知識と実践的なスキルを効率的に学ぶ貴重な機会となる。ハードウェアの知識、OSの管理、そしてAI技術の基本を網羅的に体験することで、コンピューターシステム全体に対する理解を深めることができ、将来のキャリアにおいて大きな強みとなるだろう。