【ITニュース解説】Cache Me If You Can: Design Patterns for Performance

2025年09月03日に「Dev.to」が公開したITニュース「Cache Me If You Can: Design Patterns for Performance」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

システムの高速化・安定化に不可欠なキャッシングとロードバランシングの基本。キャッシングはデータの一時保存で応答を速め、ロードバランシングはアクセスを分散して負荷を軽減する。データ更新時のキャッシュ無効化戦略も重要となる。

ITニュース解説

Webサービスやアプリケーションが多くのユーザーに利用されるようになると、大量のアクセスをいかに効率良く、そして安定して処理するかが極めて重要な課題となる。この課題を解決するために不可欠な技術が「キャッシング」と「ロードバランシング」である。これらは、高性能なシステムを設計する上での基本であり、システムの応答速度や安定性を支える根幹をなす。

まず、キャッシングについて解説する。キャッシングとは、一度取得したデータや計算結果を、一時的に高速な記憶領域に保存しておく技術のことである。ユーザーからのリクエストのたびに、データベースへの問い合わせのような時間のかかる処理を実行するのではなく、一時保存したデータを返すことで、システムの応答を劇的に速くすることができる。これは、データベースへの負荷を軽減し、システム全体のスケーラビリティ、つまり規模の拡大への対応能力を高めるための最も効果的な手段の一つである。

キャッシュは、その目的や配置場所によっていくつかの種類に分類される。アプリケーションキャッシュは、アプリケーションが動作するサーバーのメモリ内にデータを保持するもので、RedisやMemcachedといった専用のソフトウェアがよく利用される。メモリ上で直接データをやり取りするため非常に高速だが、サーバーの再起動などでデータが消えてしまう揮発性という特徴を持つ。次に、データベースキャッシュは、データベース管理システム自体が備えている機能で、頻繁に実行されるクエリの結果などをキャッシュし、データベースへの直接のアクセスを減らす役割を担う。そしてCDN(コンテンツデリバリネットワーク)キャッシュは、画像や動画、CSSファイルといった静的なコンテンツを、世界中に分散配置されたキャッシュサーバーに配置する仕組みである。これにより、ユーザーは物理的に最も近いサーバーからコンテンツを取得できるため、表示速度が大幅に向上する。

キャッシュを利用する際には、データの書き込み方法も考慮する必要がある。ライトスルー方式は、データを書き込む際にキャッシュとデータベースの両方に同時に書き込みを行う。この方法は、常に両者のデータが一致するため一貫性が高く安全だが、書き込み処理に時間がかかるという側面がある。一方、ライトバック方式は、まず高速なキャッシュにのみ書き込みを行い、後で非同期的にデータベースに反映させる。書き込みは非常に高速だが、データベースに反映される前にキャッシュサーバーに障害が発生すると、データが失われるリスクを伴う。また、キャッシュしたデータにはTTL(Time To Live)と呼ばれる有効期限を設定するのが一般的で、この期限を過ぎたデータは古いものとみなされ、破棄される。

しかし、キャッシングには「キャッシュの無効化」という大きな課題がつきまとう。これは、元のデータが更新された際に、古いキャッシュデータをいかにして新しいものに置き換えるかという問題である。TTLを利用する方法はシンプルだが、有効期限が切れるまでは古いデータがユーザーに提供され続けてしまう可能性がある。この問題に対処する手法としてバージョニングがある。これは、データが更新されるたびにキャッシュのキーにバージョン番号を付与し(例:user:v1:123からuser:v2:123へ)、データ更新と同時に参照するキーを変更することで、確実に新しいデータを取得させる方法である。さらに、キャッシュの有効期限が切れた瞬間に多数のアクセスが集中し、データベースに負荷が殺到する「キャッシュスタンピード」という現象も考慮しなければならない。これを防ぐためには、ロック機能を使って最初にアクセスしたリクエストのみがデータベースに問い合わせるように制御したり、複数のリクエストを一つにまとめたりする対策が必要となる。

次に、ロードバランシングについて説明する。ロードバランシングは、その名の通り、サーバーにかかる負荷(ロード)を均等に分散(バランス)させるための仕組みである。一台のサーバーで処理できるリクエスト数には限界があるため、複数台のサーバーを用意し、ロードバランサと呼ばれる装置が交通整理役となって、外部からのリクエストを各サーバーに適切に振り分ける。これにより、システム全体の処理能力を向上させると同時に、一台のサーバーに障害が発生しても、他の正常なサーバーにリクエストを振り分けることで、サービスを停止させることなく継続させることが可能になる。

ロードバランサは、動作するネットワークの階層によって主にL4ロードバランサとL7ロードバランサに分けられる。L4ロードバランサは、IPアドレスやポート番号といった通信の基本的な情報だけを見てリクエストを振り分ける。処理がシンプルで高速なのが特徴である。一方、L7ロードバランサは、HTTPヘッダーやURLのパス、Cookieといった、よりアプリケーションに近い階層の情報を解析して、リクエストの内容に応じた高度な振り分けが可能である。例えば、URLが「/images」で始まるリクエストは画像配信用サーバーへ、「/checkout」で始まるリクエストは決済処理用サーバーへと振り分ける、といった柔軟な制御ができる。

リクエストをどのサーバーに振り分けるかを決定するアルゴリズムにもいくつか種類がある。ラウンドロビンは、リクエストを各サーバーに順番に、均等に割り振る最もシンプルな方式である。リーストコネクションは、その時点で接続数が最も少ないサーバーに次のリクエストを送る方式で、各サーバーの負荷をより均等に保つのに役立つ。ハッシングは、送信元のIPアドレスなどの情報からハッシュ値を計算し、その結果に基づいて振り分け先のサーバーを固定する方式である。これにより、特定のユーザーからのリクエストは常に同じサーバーで処理されるため、セッション情報をサーバー側で保持する場合などに有効である。

このように、キャッシングとロードバランシングは、現代のWebシステムが大規模なトラフィックに耐え、ユーザーに快適なサービスを提供するために不可欠な技術である。これらの仕組みを適切に設計し、組み合わせることで、システムのパフォーマンス、可用性、そしてスケーラビリティを確保することができる。

【ITニュース解説】Cache Me If You Can: Design Patterns for Performance | いっしー@Webエンジニア