【ITニュース解説】Reverse proxy and service mesh built on top of Cloudflare's Pingora
2025年09月04日に「Dev.to」が公開したITニュース「Reverse proxy and service mesh built on top of Cloudflare's Pingora」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
AralezはCloudflare PingoraとRustで構築された、高性能なリバースプロキシ兼サービスメッシュだ。動的設定、TLS終端、負荷分散、認証、WebSocket/gRPC自動対応など多機能。高いパフォーマンスと柔軟な設定で、開発者の運用を効率化する。
ITニュース解説
Aralezは、Cloudflareが開発した高性能なプロキシエンジンであるPingoraを基盤に、Rustというプログラミング言語で構築された、リバースプロキシおよびサービスメッシュ機能を提供する新しいソフトウェアだ。これはWebサービスやアプリケーションをインターネットに公開する際の交通整理役として機能し、高い性能と堅牢なセキュリティ、そして柔軟な運用を実現することを目指して作られた。
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、リバースプロキシやサービスメッシュという言葉は聞き慣れないかもしれない。簡単に説明すると、リバースプロキシとは、インターネット上のユーザー(クライアント)から送られてくるリクエストを、直接Webサーバーが受け取るのではなく、その手前に立つ別のサーバーが受け取り、適切なWebサーバーに転送する仕組みのことだ。これにより、複数のWebサーバーへの負荷分散、セキュリティの強化、通信の暗号化(TLS終端)といった重要な役割を果たすことができる。例えるなら、Webサイトへのアクセスを管理する受付係のようなものだ。サービスメッシュは、特に『マイクロサービス』と呼ばれる、小さな独立した複数のプログラムが連携して動作するシステムにおいて、それぞれのプログラム間の通信を効率的かつ安全に管理するための仕組みだ。これにより、複雑なサービス間のやり取りを簡単に設定・監視できるようになる。
Aralezはこれらの基本的な役割に加え、多くの便利な機能を備えている。例えば、『動的な設定リロード』機能は、稼働中のAralezの動きを止めずに、バックエンドサーバー(実際にWebサイトのコンテンツを提供するサーバー)の設定を変更できるというものだ。通常、設定変更にはシステムの再起動が必要な場合が多いが、AralezはAPIを通じてリアルタイムに更新できるため、サービスの停止時間を最小限に抑えられる。また、『TLS終端』とは、ユーザーとの間で暗号化された通信(HTTPS)をAralezが受け持ち、バックエンドサーバーには暗号化されていない通信で転送することだ。これにより、バックエンドサーバー側の負荷を軽減し、セキュリティ設定も一元管理できる。Aralezは必要なSSL/TLS証明書を特定のフォルダから自動で読み込み、バックエンドサーバーがすでにTLSを使用しているかどうかも自動で検出する。これは他の製品では手動設定が必要となることが多い機能で、運用をシンプルにする大きなメリットとなる。
Webサイトへのアクセスが集中しすぎると、サーバーがダウンしてしまう可能性がある。Aralezには『レートリミッター』という機能があり、1秒あたりのリクエスト数を制限できる。これにより、予期せぬアクセス集中からサーバーを守ることが可能だ。この制限は、全てのWebサイトに一律に適用したり、特定のWebサイト(仮想ホスト)や特定のURLパスにだけ設定したりできる。セキュリティ面では、『認証』機能も充実しており、Basic認証、APIキーによる認証、そしてJWT(JSON Web Token)を使った認証に対応している。これにより、特定のユーザーやアプリケーションだけがアクセスできるように制限をかけられる。
バックエンドに複数のサーバーがある場合、Aralezはそれらのサーバーにリクエストを均等に振り分ける『ロードバランシング』を行う。主な方法として、リクエストを順番に送る『ラウンドロビン』、故障したサーバーを自動的に回避する『ヘルスチェック付きフェイルオーバー』、同じユーザーからのリクエストを常に同じサーバーに送る『スティッキーセッション』などがある。さらに、AralezはHTTP通信とWebSocket通信(リアルタイム通信によく使われる)を同じポートで扱える『統一ポート』機能や、静的なファイルを配信するための『ファイルサーバー』機能も内蔵している。これら全ての機能が、メモリ安全性の高いRustと、非同期処理に優れたTokioという技術によって、非常に高いパフォーマンスで動作する。
Aralezの設定は、主に『main.yaml』と『upstreams.yaml』という二つのYAML形式のファイルで行う。『main.yaml』にはAralez全体の動作に関する設定が、『upstreams.yaml』にはどのドメインからのリクエストをどのバックエンドサーバーに送るかといった詳細なルーティング情報が記述される。この『upstreams.yaml』は、ファイルが変更されると即座に反映される『ホットリロード』に対応しており、再起動なしで新しい設定が適用されるため、非常に柔軟な運用が可能だ。また、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)パイプラインや他のシステムからAPIを通じてリモートで設定をプッシュする機能も備わっている。
Aralezの導入も簡単で、GitHubから事前にコンパイルされたバイナリをダウンロードするほか、Dockerコンテナとして動かすこともできる。特にDockerイメージは、設定ファイルをマウントするだけで手軽に環境を構築できるため、システムエンジニア初心者にも扱いやすい。AralezはRust言語で書かれているため、CやGo言語で書かれた他のプロキシ製品と比較しても高いパフォーマンスを発揮する。開発元のベンチマークによると、CPUやメモリに制約がある環境でも、秒間10万以上のリクエストを安定して処理できることが示されており、これはNginxやTraefikといった既存の有名製品と比べても遜色ない、あるいはそれ以上の性能だと言える。WebSocketやgRPCといった最新の通信プロトコルも、特別な設定なしに自動でサポートされる点が、Nginxなどの手動設定が必要な製品に対する大きな優位点だ。
Aralezは、Rustという言語の特性を活かし、非常に高いメモリ安全性も実現している。これは、従来のC言語などで書かれたシステムで問題となりがちだったメモリ関連のバグ(セキュリティ脆弱性やクラッシュの原因)を大幅に削減できることを意味する。システムの安定稼働を重視するプロキシサーバーにおいて、このメモリ安全性は非常に重要な要素だ。さらに、Aralezはシステムの稼働状況を監視するための『Prometheus Metrics』を内蔵しているため、リアルタイムでパフォーマンスデータやエラー情報を収集し、可視化することが容易だ。これにより、問題発生時の早期発見や、システムのボトルネック特定に役立てることができる。
Aralezは、Cloudflareの最新技術Pingoraと、高い性能と安全性を誇るRust言語を組み合わせることで、リバースプロキシとサービスメッシュの機能を一つのソフトウェアで提供する。動的な設定変更、豊富な認証・ロードバランシング機能、そして自動的なプロトコルサポートなど、現代のWebアプリケーションが必要とする多くの要素を内蔵しており、システム構築における複雑さを軽減しつつ、高い信頼性とパフォーマンスを実現する強力なツールだ。これからシステムエンジニアを目指す皆さんにとって、このような新しい技術トレンドを知り、その背景にある技術やメリットを理解することは、将来のキャリア形成において非常に有益となるだろう。