【ITニュース解説】Cookie Chaos: How to bypass __Host and __Secure cookie prefixes

2025年09月04日に「Reddit /r/programming」が公開したITニュース「Cookie Chaos: How to bypass __Host and __Secure cookie prefixes」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

Webサイトが情報を安全に保存する仕組み「Cookie」には、セキュリティを強化する`__Host`や`__Secure`という特別な種類がある。この記事は、これらの安全対策を特定の状況下でどのように回避し、悪用できる可能性があるかを議論する。

ITニュース解説

Webアプリケーションのセキュリティを考える上で、Cookieは非常に重要な要素だ。Cookieとは、Webサイトがユーザーのブラウザに保存する小さなテキストデータであり、セッション管理、ユーザー設定の記憶、パーソナライズされたコンテンツの提供など、様々な用途で利用される。しかし、その利便性の一方で、Cookieは悪意のある攻撃者にとって格好の標的となり得るため、そのセキュリティ確保はWeb開発において常に大きな課題となっている。

これまでもCookieのセキュリティを強化するための様々な仕組みが導入されてきた。例えば、Secure属性を付与することで、CookieがHTTPS接続(暗号化された通信)でのみ送信されるようにし、通信経路での盗聴を防ぐ。HttpOnly属性は、JavaScriptからCookieにアクセスすることを禁止し、クロスサイトスクリプティング(XSS)攻撃によって悪意のあるスクリプトがCookieを盗み出すのを防ぐ。また、SameSite属性は、クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)攻撃を防ぐために、Cookieがどのサイトからのリクエストで送信されるべきかを制御する。

しかし、これらの属性だけでは防ぎきれない種類の攻撃や、開発者の設定ミスによる脆弱性のリスクが残されていた。特に問題となったのは、サブドメインを利用した攻撃や、意図しないCookieの上書きによるセッションハイジャックのリスクだ。例えば、example.comというメインドメインとそのサブドメインであるsub.example.comが存在する場合、sub.example.comで設定されたCookieがメインドメインのCookieに影響を与えたり、その逆の状況が発生したりすることがあった。攻撃者がコントロールできるサブドメインを通じて、メインドメインの重要なセッションCookieを操作し、ユーザーのセッションを乗っ取るといったシナリオが考えられたのだ。

このような背景から、より厳格なセキュリティ要件を持つCookieを設定できるようにするために導入されたのが、__Host-__Secure-という特別なプレフィックスを持つCookieだ。これらは、特定のルールを満たさなければ設定できないという制約をブラウザ側に課すことで、より強固なセキュリティを保証しようとするものだ。

まず__Secure-プレフィックスが付いたCookieは、必ずSecure属性が付与されていなければならない。つまり、常にHTTPS通信でのみ送受信されることが保証される。これは、既存のSecure属性の要件をさらに強調し、誤ってHTTP経由で送信されるリスクを排除するためのものだ。

さらに強力なのが__Host-プレフィックスが付いたCookieだ。これは__Secure-の要件に加えて、さらに二つの厳しい制約を課す。一つは、Path=/という属性が必須であること。これは、そのCookieがドメイン全体のどのパスに対しても有効であることを意味し、特定のパスでしか使えないCookieが意図せずセキュリティ上の穴になるのを防ぐ。もう一つは、Domain属性を設定してはならないことだ。この制約が非常に重要で、Domain属性を設定しないことで、CookieはそのCookieを設定したホスト(例えばexample.comならexample.com自身)にのみ限定される。サブドメイン(例えばsub.example.com)から同じ名前の__Host-プレフィックス付きCookieを設定しようとしても、それは許されない。これにより、サブドメインからの干渉を完全に排除し、メインドメインの重要なセッションCookieなどがサブドメインを通じて上書きされたり、盗まれたりするリスクを大幅に低減することを目的としていた。

しかし、今回のニュース記事が示唆するのは、これらの厳格なプレフィックスを持つCookieが、特定の条件下で「バイパス」され、意図しない挙動を示す可能性があるというものだ。Redditのスレッドでは、主にブラウザの実装の微妙な違いや、複数のCookieが設定された際のブラウザの優先順位の解釈、あるいはアプリケーション側の不注意な設定が原因で、__Host-__Secure-プレフィックスの意図したセキュリティが損なわれるケースが議論されている。

具体的に考えられるバイパスのシナリオの一つは、異なるドメインまたはサブドメイン間で、同じ名前だが異なるプレフィックスや属性を持つCookieが設定された場合に発生する。例えば、example.com__Host-sessionidというCookieが適切に設定されており、これがDomain属性を持たずPath=/となっているとする。このCookieはexample.comにのみ送信されるはずだ。しかし、もし攻撃者が制御するsub.example.comが、同じsessionidという名前で、__Secure-プレフィックスを持たない通常のCookie(Secure属性もなければHttpOnly属性もないかもしれない)を、Domain=example.comとして設定し、さらにPath=/も持っていた場合、一部のブラウザの挙動やCookieの処理順序によっては、メインドメインの__Host-sessionidが、サブドメインから設定されたセキュアでないsessionidによって上書きされてしまう可能性が指摘されているのだ。

このような状況は、ブラウザがCookieを処理する際の内部的なロジックや、特定のHTTPヘッダーの解釈、あるいはWebアプリケーションがCookieを検証するロジックの不備に起因することが多い。攻撃者がセッションIDを上書きすることに成功すれば、セッション固定攻撃やセッションハイジャックといった重大な脆弱性に繋がる。セッション固定攻撃では、攻撃者がユーザーに特定のセッションIDを使わせ、ユーザーがそのIDでログインした後に、攻撃者がそのIDを使ってユーザーになりすます。セッションハイジャックでは、認証済みのユーザーのセッションCookieを盗み出し、そのユーザーとしてWebアプリケーションにアクセスする。どちらの攻撃も、ユーザーの個人情報漏洩や、不正な操作、アカウント乗っ取りといった被害をもたらす可能性がある。

この「Cookie Chaos」が私たちシステムエンジニアを目指す初心者にもたらす教訓は非常に大きい。まず、Cookieの各属性やプレフィックスの役割と、それらがどのように連携し、あるいは相互に影響し合うのかを深く理解することの重要性だ。単に「SecureHttpOnlyを付ければ安全」という考え方では不十分であり、__Host-__Secure-といったより厳格なルールもなぜ必要なのか、そしてそれらがどのような制約を持つのかを正確に把握する必要がある。

次に、Webアプリケーションを開発する際には、常に防御的な視点を持つことが求められる。WebブラウザやHTTPプロトコルの仕様は非常に複雑であり、想定外の挙動や、特定の環境下でのみ発生する問題も少なくない。そのため、開発者は最新のセキュリティ情報を常に追跡し、自身のアプリケーションがこれらの仕様の「穴」を悪用されないよう、多層的な防御策を講じる必要がある。単一のセキュリティ機能に依存するのではなく、入力検証、サーバーサイドでの厳格なセッション管理、そして定期的なセキュリティテストなど、全体的な設計でセキュリティを確保することが重要だ。

今回のニュースは、たとえ最新のセキュリティ対策を講じていても、その実装やブラウザの挙動、他のシステムとの相互作用によって、意図しない脆弱性が生まれる可能性があることを示している。これは、Webセキュリティが常に進化し続ける複雑な分野であり、システムエンジニアとして継続的に学び、対策を更新していく必要があることを私たちに強く訴えかけていると言えるだろう。常に警戒心を持ち、細部にまで注意を払う姿勢が、安全なWebサービスを構築する上で不可欠だ。

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