【ITニュース解説】My Next Step in Cybersecurity: Internship at Young Cyber Knights Foundation
2025年09月05日に「Dev.to」が公開したITニュース「My Next Step in Cybersecurity: Internship at Young Cyber Knights Foundation」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
サイバーセキュリティ専門家「レッドチーマー」を目指す学生が、インターンシップを開始した。企業システムへの模擬攻撃(侵入テスト)を通じて実践的な技術を習得。攻撃と防御の両方の視点を学び、キャリアの重要な一歩を踏み出す。
ITニュース解説
サイバーセキュリティの世界には、組織のシステムを実際に攻撃することで、その防御力や隠れた脆弱性を検証する専門家たちが存在する。彼らは「レッドチーム」と呼ばれ、実際のサイバー攻撃者が用いるような高度な技術や思考を駆使して、企業のセキュリティ体制に潜む問題点をあぶり出す役割を担う。ある若者が、このレッドチームの専門家を目指すための重要な一歩として、専門組織でのインターンシップに参加するというニュースは、現代のITインフラを支える上で、攻撃者の視点を学ぶことがいかに重要であるかを示している。
システムエンジニアを目指す上で、セキュリティは避けて通れない重要なテーマである。一般的に、セキュリティ業務は「防御側」と「攻撃側」の二つの側面に大別される。多くのエンジニアが関わるのは「防御側」、通称「ブルーチーム」の役割だ。ブルーチームは、ファイアウォールや侵入検知システムといったセキュリティ機器を運用・監視し、サーバーやネットワークを外部の脅威から守る。システムの脆弱性に対する修正パッチを適用したり、セキュリティポリシーを策定したりと、日々の運用を通じてシステムの安全性を維持することが主な任務である。一方、今回のニュースの主題である「レッドチーム」は、「攻撃側」の役割を担う。彼らの仕事は、悪意を持ってシステムを破壊することではない。むしろ、善良なハッカー、いわゆる「ホワイトハットハッカー」として、組織の許可を得た上で擬似的な攻撃を仕掛け、ブルーチームが構築した防御網を突破できるかどうかを試すのである。この活動を通じて、ブルーチームだけでは気づきにくい設定の不備や、未知の脆弱性、従業員のセキュリティ意識の低さといった、組織が抱える本質的な弱点を特定し、セキュリティレベル全体の向上に貢献する。
この記事の筆者がインターンシップで学ぼうとしている内容は、レッドチーマーになるための核心的なスキルセットそのものである。一つ目は「ペネトレーションテスト(侵入テスト)」の実践的スキルの強化だ。ペネトレーションテストとは、特定のシステムやアプリケーションに対して、既知の攻撃手法を用いて侵入を試みるセキュリティ診断手法である。教科書で攻撃手法を学ぶだけでは、複雑に絡み合った現実のシステムに対応することは難しい。インターンシップのような実務環境で、多様なシナリオに基づいたテストを経験することで、理論を実践へと昇華させ、真に通用するスキルを身につけることができる。
二つ目は、「攻撃シミュレーション技術」の習得である。これはペネトレーションテストよりもさらに高度で、包括的な活動を指す。単一の脆弱性を突くだけでなく、実際の攻撃者のように、情報収集から始まり、標的の組織に侵入し、内部で権限を拡大して最終目的に至るまでの一連のプロセスを長期間にわたって模倣する。これにより、個別の技術的な防御策だけでなく、組織の検知能力やインシデント発生時の対応プロセス全体が有効に機能しているかを評価することができる。レッドチームの活動の根幹をなすこの技術を学ぶことは、より高度なセキュリティ専門家への道を開く。
そして三つ目が、「効果的な緩和策」の学習である。攻撃手法を熟知するだけでは、レッドチーマーの任務は半分しか完了しない。発見した脆弱性がどのようにすれば修正できるのか、どのような防御策を講じれば同様の攻撃を防げるのかという「緩和策」を具体的に提示できなければならない。攻撃者の視点を持つことで、なぜその防御策が必要なのか、その対策のどこに限界があるのかを深く理解できる。この知識は、堅牢なシステムを設計・構築するすべてのシステムエンジニアにとっても極めて有益なものである。
筆者が特に重要視しているのが、「攻撃と防御の二つの視点を持つこと」の価値である。サイバーセキュリティは、常に攻撃側と防御側のせめぎ合いの中にあり、両者の間には非対称性が存在する。防御側はすべての攻撃経路を守らなければならないのに対し、攻撃側はたった一つの弱点を見つければ侵入できる。このため、防御側は常に攻撃者が何を考え、どのような手段で攻めてくるのかを予測し、先回りして対策を講じる必要がある。攻撃者の視点を理解して初めて、効果的な防御戦略を立てることが可能になるのだ。これは、システムを構築するエンジニアにとっても同様である。自分が開発するシステムが「どのように攻撃されうるか」を想像する力は、設計段階からセキュリティを考慮に入れる「セキュリティ・バイ・デザイン」という現代的な開発思想を実践する上で不可欠な素養となる。
このニュースは、サイバーセキュリティのプロフェッショナルを目指す一人の若者の挑戦を通じて、これからのIT業界で活躍するために必要なスキルとマインドセットを浮き彫りにしている。システムをただ作るだけでなく、それをいかにして守るか、そして守るためには攻撃者の視点がいかに重要であるかを示唆している。システムエンジニアを目指す者にとって、自身が構築するシステムの安全性を確保することは最も重要な責務の一つであり、そのためには技術的な知識だけでなく、攻撃と防御の両面から物事を捉える多角的な視点を養い続ける姿勢が求められる。