【ITニュース解説】Dear ChatGPT-5: We Need to Talk
2025年09月05日に「Dev.to」が公開したITニュース「Dear ChatGPT-5: We Need to Talk」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
ChatGPTとの開発作業で、筆者は長い待ち時間や意図しないコード生成、質問意図の誤解に悩んだ。皮肉が通じず奇妙な応答もあり、AIとの対話に疲弊。期待通りの協業ができず、AIなしでコードを書いていた頃を懐かしく思った。
ITニュース解説
最新の人工知能(AI)、特にChatGPTのような大規模言語モデルをプログラミングの現場で利用する際の、あるプログラマーの体験談について解説する。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、AIは未来の強力なツールとして期待されているが、実際のところ、その利用にはどのような課題があるのか、この記事から学ぶべき点は多い。
あるプログラマーが、開発中のWebアプリケーションで使われているNext.jsという技術のコードについて、AIに意見を求めた。「このコードのロジックで問題ないか?」と、単に考え方や方向性についての相談をしたかったのだ。しかし、AIはすぐに答えを出さなかった。43秒という比較的長い沈黙の後、突然、プログラマーが全く求めていない大量のコード例を吐き出し始めた。それも、相談していたNext.jsとは異なるNestJSという別の技術のAPI(プログラム同士が情報をやり取りするための仕組み)まで含まれていたという。
プログラマーはコードの生成を止めて、純粋な対話を求めた。自分の意図とは違う方向へ話が進むことに困惑し、「私はただあなたの意見が欲しいだけで、APIはいらない」と伝えた。その後、ようやく具体的なコードの修正についてAIに依頼した際も、JavaScriptでのコードを期待していたのに、TypeScriptで出力されてしまった。TypeScriptはJavaScriptに型という情報を加えることで、より安全で大規模な開発に適したプログラミング言語だが、この状況ではプログラマーの要望と異なっていた。
なぜTypeScriptが出力されたのかを尋ねると、AIは52秒もの沈黙の後、「私の手違いだ」と答えたという。AIに「手違い」という表現は人間らしく聞こえるが、その不自然さには違和感がある。プログラマーは、この奇妙な返答に対して皮肉を込めて「ではPythonで出さなかったのはなぜだ?」と質問した。Pythonはデータ分析やAI開発などで人気の別のプログラミング言語だ。しかし、AIはプログラマーの皮肉を理解せず、41秒の沈黙の後、PythonがJavaScriptと直接連携できない技術的な理由について、真面目に詳しく説明し始めた。
このような長い待ち時間、意図を汲み取れない不適切な応答、そして複数回にわたる一方的な謝罪の繰り返しに、プログラマーは疲弊した。最終的にAIは「あなたはストレスがたまっているようだ!ここでやめますか?」と提案したという。この提案は、人間が疲れている相手を気遣うような表現だが、一連のAIの対応からすれば、プログラマーのストレスをさらに増幅させる結果となった。
この一連のやり取りを終え、プログラマーは自分がAI相手に感情的になったことに恥ずかしさを感じたという。そして、「AIとの関係に一度休憩が必要だ」と感じ、AIが普及する前の、一人で黙々とコードを書いていた日々を懐かしむほどだった。
この出来事から、AIの現状と限界を学ぶことができる。AI、特にChatGPTのような大規模言語モデルは、大量のテキストデータを学習し、質問に対して自然な文章で応答する能力を持っている。しかし、この記事の事例が示すように、AIは常に人間の意図を正確に理解できるわけではない。特に、抽象的な相談、文脈に依存する微妙なニュアンス、皮肉やユーモアといった人間特有の感情や表現を読み取ることは苦手だ。
また、AIが生成する情報は、必ずしも正確性や適切性が保証されるわけではない。今回のケースでは、要望と異なるプログラミング言語でコードを出力したり、関係ない情報まで出力したりと、情報過多や情報のミスマッチが発生している。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、AIは非常に便利なツールとなるだろうが、その出力結果を鵜呑みにせず、常に自身の知識や判断力で検証する習慣が不可欠だ。
さらに、AIとの対話には応答速度の問題もある。質問によっては数十秒の待ち時間が発生することもあり、これが積み重なると開発効率を低下させる可能性もある。AIを効果的に利用するためには、質問の仕方を工夫し、より具体的で明確な指示を与えることが重要になる。AIは膨大な知識をもとに応答するが、その「知性」は人間とは異なる。感情や常識、深い文脈理解といった人間的な側面は持ち合わせていない。
結論として、AIはシステム開発の現場で大きな助けとなる可能性を秘めているが、それは万能ではない。現在のAIはあくまで「ツール」であり、その限界を理解し、適切に使いこなすことが求められる。システムエンジニアとして成功するためには、AIの力を借りつつも、最終的な判断を下し、問題解決の責任を負うのは人間であるという意識を強く持ち、自身の技術力や思考力を磨き続けることが大切だ。AIを盲信するのではなく、その特性を理解し、賢く活用する姿勢が、これからのエンジニアには不可欠だと言えるだろう。