【ITニュース解説】Delta Electronics製COMMGRにおける暗号論的強度が不十分なPRNGの使用の脆弱性

2025年09月05日に「JVN」が公開したITニュース「Delta Electronics製COMMGRにおける暗号論的強度が不十分なPRNGの使用の脆弱性」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

Delta ElectronicsのCOMMGRには、乱数生成器が予測されやすい弱いものを使用している脆弱性がある。そのため、セキュリティ上の問題が生じ、情報漏えいの危険性がある。

ITニュース解説

Delta Electronicsが提供するCOMMGRというソフトウェア製品に、セキュリティ上の重大な弱点が見つかったというニュースがある。具体的には、この製品が「暗号論的強度が不十分な擬似乱数生成器(PRNG)」を使用していることが問題とされており、これはシステム全体の安全性に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、詳しく解説する。

まず「擬似乱数生成器(PRNG)」とは何か。コンピュータはプログラムされた通りに動く機械であり、本来、予測不可能な「真の乱数」を自力で生み出すことは難しい。そこで、ある初期値(これを「シード」と呼ぶ)を基にして、あたかもランダムであるかのように見える数字の並びを生成する仕組みが利用される。これがPRNGだ。PRNGが生成する数列は、実は一定の法則に従って作られているため、厳密には「乱数」ではないが、多くの一般的な用途、例えばゲームにおける敵の出現パターンや、シミュレーションにおける偶然性の表現などでは、これで十分なランダム性が得られる。

しかし、全ての乱数が同じ品質で良いわけではない。特にセキュリティが求められる場面では、単に「ランダムに見える」だけでは不十分で、他人に予測されては困る重要な情報、例えばパスワードの生成、暗号化キーの作成、ネットワーク通信におけるセッションIDの生成などには、特別に高い品質のPRNGが求められる。これが「暗号論的強度を持つPRNG」だ。「暗号論的強度」とは、生成された乱数列の一部が攻撃者に知られたとしても、残りの乱数や次に生成される乱数を予測することが極めて困難である、という性質を指す。さらに、PRNGの内部状態(次にどの乱数を生成するかを決める隠れた情報)を推測することも、非常に難しい必要がある。もし、過去に生成されたいくつかの乱数から、次に何が来るかを高い確率で予測できてしまったり、PRNGの内部状態を突き止められたりするような場合、それは「暗号論的強度が不十分」である、ということになる。

今回のCOMMGRの脆弱性は、まさにこの「暗号論的強度が不十分なPRNG」を使用している点にある。これは、COMMGRが内部で生成する何らかの乱数が、攻撃者によって予測されやすい可能性があることを意味する。例えば、COMMGRがユーザー認証に使うセッションIDや、特定のデータを暗号化するためのキー、あるいはセキュリティトークンなどを生成する際に、この脆弱なPRNGを使っていたと仮定してみよう。攻撃者は、生成された乱数のパターンを分析したり、システムの内部的な動作を推測したりすることで、本来であれば予測不可能なはずのセッションIDや暗号化キーを、比較的容易に割り出してしまうかもしれない。

このような脆弱性が悪用された場合、様々な深刻な事態が起こりうる。攻撃者は、予測したセッションIDを使って正規のユーザーになりすまし、システムに不正にログインできる可能性がある。これにより、ユーザーの個人情報が漏洩したり、システム内の重要な設定が改ざんされたりする危険性が高まる。また、予測した暗号化キーが利用されれば、本来保護されているはずの通信内容を盗聴されたり、保存されているデータが復号されて読み取られたり、あるいは不正に改ざんされたりすることも可能になる。さらに、システムが生成する乱数が予測可能であるため、特定の操作やデータがどのタイミングで生成されたかを特定され、システム内部の構造や挙動をより深く理解されてしまい、他の脆弱性を探す手がかりを与えてしまう可能性もある。結果として、不正アクセス、情報漏洩、データ改ざん、サービスの停止など、深刻なセキュリティ事故につながる危険性があり、特にCOMMGRが制御システムや重要インフラに関わる場合、その影響はさらに甚大になる可能性がある。

システムを開発するシステムエンジニアを目指す者としては、乱数が必要となる場面が非常に多く、それぞれの用途に応じて適切な品質のPRNGを選択することの重要性を理解する必要がある。セキュリティが求められる場面では、必ず「暗号論的強度を持つPRNG」を選んで使用することが極めて重要だ。安易に一般的な標準ライブラリのPRNGを使うだけでなく、そのPRNGが暗号論的強度を満たしているか、その特性をしっかりと確認する習慣が求められる。今回のDelta Electronics製COMMGRの脆弱性は、開発者が使用するライブラリやコンポーネントのセキュリティ特性を十分に理解し、常に適切なものを選択することの重要性を強く示している。また、このような脆弱性が発見された際には、速やかに修正プログラム(パッチ)を適用し、システムを最新の状態に保つことが、利用者としての責任となる。開発者も利用者も、セキュリティに対する意識を高く持ち、適切な対策を講じることが、安全なシステム運用のために不可欠である。

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