【ITニュース解説】Delta Electronics製EIP BuilderにおけるXML外部エンティティ参照(XXE)の不適切な制限の脆弱性

2025年09月03日に「JVN」が公開したITニュース「Delta Electronics製EIP BuilderにおけるXML外部エンティティ参照(XXE)の不適切な制限の脆弱性」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

Delta Electronics製EIP Builderに、XML外部エンティティ参照(XXE)の脆弱性が発見された。この問題により、外部から不正なファイルやデータが読み込まれる危険性があるため、利用者は対策を検討すべきだ。

ITニュース解説

Delta Electronicsが提供するEIP Builderというソフトウェアにおいて、「XML外部エンティティ参照(XXE)の不適切な制限」というセキュリティ上の脆弱性が発見された。この脆弱性は、情報セキュリティの基礎を学ぶ上で非常に重要な概念であり、システムエンジニアを目指す者であればその内容と影響を理解しておく必要がある。

まず、この脆弱性の背景にある「XML」について説明する。XML(Extensible Markup Language)は、データを構造化して記述するための汎用的なマークアップ言語である。ウェブページの表示方法を記述するHTMLとは異なり、XMLはデータの種類や意味を記述することに特化しており、システム間のデータ交換や設定ファイルの記述など、幅広い用途で利用されている。多くのソフトウェアが内部的にXMLを処理することで、様々な情報を管理したり、外部と連携したりしているのだ。

XMLには、「エンティティ」という便利な機能が存在する。これは、XML文書内で繰り返し使われる文字列や特殊文字を定義し、後からその定義を参照できるようにする仕組みである。例えば、特定の記号を安全に記述したり、頻繁に登場する社名などを短縮形として定義し、文書内で利用したりすることができる。このエンティティの中には、XML文書の外部にあるファイルやリソースを参照する「外部エンティティ」という種類がある。外部エンティティは、複数のXML文書で共通の定義を共有したり、XML文書の内容を外部の大きなデータファイルと連携させたりする際に利用され、XMLの柔軟性を高める機能の一つである。

しかし、この便利な外部エンティティ参照機能が悪用されると、「XML外部エンティティ参照(XXE)」という脆弱性につながる可能性がある。通常、外部エンティティはXML文書の作成者が意図した安全なリソースを参照するために用いられるが、もしシステムが悪意のある第三者によって作成されたXMLファイルを処理してしまった場合、その外部エンティティが悪意のあるファイル、例えばシステムの重要な設定ファイルやユーザー情報、さらにはパスワードファイルといった機密情報を含むファイルを参照するように仕向けられる恐れがある。

この脆弱性が「不適切な制限」と表現されるのは、XMLを処理するソフトウェアやシステムが、外部エンティティ参照を処理する際に、その参照先が安全な場所であるかを適切に検証しなかったり、あるいは外部からの不審な参照をブロックしたり、外部エンティティの処理自体を無効化したりする設定がなされていないためである。多くのXMLパーサー(XML文書を読み込んで解釈するソフトウェア部品)は、デフォルトで外部エンティティ参照を許可する設定になっていることがあり、開発者が意識的にその設定を変更しない限り、この脆弱性が生じやすい状況にある。つまり、信頼できないXMLデータを受け取った場合でも、外部エンティティ参照をそのまま許可してしまい、結果として本来アクセスされるべきではないシステム上のファイルが読み込まれてしまう事態が発生するのだ。

XXE脆弱性が悪用されると、いくつかの深刻な危険性が考えられる。最も一般的なのは、情報漏洩である。攻撃者は、ウェブサーバーやアプリケーションサーバーが動作しているシステム内の設定ファイル、ユーザー情報、システムが利用するパスワードファイル、内部のソースコードなど、機密性の高いファイルを読み取ろうとする。これらの情報が外部に漏洩すれば、攻撃者はさらにシステムへの深い侵入を試みたり、盗み出した情報をもとに他の攻撃へと発展させたりする足がかりにする可能性がある。

また、情報漏洩だけでなく、サービス妨害(DoS)攻撃に利用される可能性もある。例えば、システムに過剰な負荷をかけるような、存在しない無限の外部リソースを参照させたり、非常に大きなファイルを繰り返し読み込ませたり、無限ループを引き起こすようなXML構造を送りつけたりすることで、EIP Builderを含むシステムが正常に動作しなくなる可能性がある。Delta Electronics製EIP Builderは、産業用制御システムなど、特定の重要な環境で利用されることが想定されるため、その停止は生産活動の停止や物理的な設備への損害など、大きな損失につながる可能性がある。場合によっては、他の脆弱性と組み合わせることで、遠隔から任意のコードを実行されるような、より深刻な攻撃につながる可能性も否定できない。

この脆弱性に対する対策としては、主にソフトウェアの利用者と開発者双方に責任が求められる。利用者側としては、Delta Electronicsが提供する最新の修正プログラムやアップデートを速やかに適用することが最も重要である。脆弱性が修正された新しいバージョンのEIP Builderに更新することで、この問題は解決される。また、可能な場合は、XMLパーサーの設定において、外部エンティティの処理を無効化することも非常に有効な対策となる。多くのXMLパーサーは、この機能を簡単に無効化するオプションを提供しているため、開発者やシステム管理者は積極的にこの設定を行うべきである。

システムエンジニアを目指す者にとって、このような広く使われる技術に潜むセキュリティリスクを理解することは不可欠である。現代の情報システムは、様々な技術が複雑に組み合わさって構築されており、それぞれの技術が持つ特性を深く理解し、そこに潜むセキュリティ上の弱点を把握することが、安全なシステム設計、実装、そして運用を行う上で非常に重要となる。常に最新のセキュリティ情報を追いかけ、自身の知識をアップデートしていく姿勢が求められるだろう。