【ITニュース解説】第845回 デスクトップ環境の2024-2025年
2025年01月08日に「Gihyo.jp」が公開したITニュース「第845回 デスクトップ環境の2024-2025年」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
Ubuntuで利用可能な様々なデスクトップ環境の現状と未来を解説。2024年に生じた主要な変更点や出来事、そして2025年に予想される進化やトレンドを紹介する。
ITニュース解説
新しい年を迎え、Linuxディストリビューションの中でも特に人気のあるUbuntuを取り巻くデスクトップ環境の動向は、システムエンジニアを目指す皆さんにとって注目すべきテーマだ。デスクトップ環境とは、コンピューターの画面上に表示される操作画面全般を指し、アイコンやウィンドウ、メニューといった視覚的な要素を提供し、ユーザーがコンピューターを直感的に操作できるようにするソフトウェアの集合体である。サーバー環境ではコマンドラインが主流だが、開発環境の構築や普段使い、GUIアプリケーション開発においては、このデスクトップ環境の知識が重要となる。
Ubuntuの標準デスクトップ環境は「GNOME」だが、他にも様々なデスクトップ環境を提供する公式派生版(フレーバー)が存在する。例えば、Kubuntuは「KDE Plasma」、Xubuntuは「Xfce」、Lubuntuは「LXQt」、Ubuntu MATEは「MATE」といった具合だ。これらの多様な選択肢は、ユーザーの好みや用途、コンピューターの性能に合わせて最適な環境を選べるという利点がある。
2024年のデスクトップ環境は、大きな節目を迎えた。特に注目すべきは、主要なデスクトップ環境におけるメジャーバージョンのリリースだ。GNOMEはバージョン46をリリースし、より洗練されたユーザーインターフェースと機能強化が図られた。GNOMEは元々シンプルなデザインを特徴としているが、最新版ではファイルの管理機能や通知システムが改善され、日々の作業効率を高める工夫が凝らされている。また、GNOMEが利用するグラフィカルツールキットであるGTKがバージョン4へと移行を進めていることも重要だ。これはアプリケーション開発の基盤技術であり、新しいGTK4に対応したアプリケーションは、よりモダンな見た目と高いパフォーマンスを発揮できるようになる。
KDE Plasmaも同様に、バージョン6という大規模なアップデートが行われた。KDE Plasmaはカスタマイズ性の高さと豊富な機能を特徴とし、洗練されたデザインが多くのユーザーに支持されている。Plasma 6では、その基盤となるQtツールキットがバージョン6へと進化し、グラフィックス性能やシステムの応答性が向上した。さらに、近年Linuxデスクトップで主流となりつつあるWaylandディスプレイサーバーへの対応も大きく強化され、より安定した動作とセキュリティの向上が期待されている。
軽量性を重視するデスクトップ環境も進化を続けている。LXQtはバージョン2.0をリリースし、Qt6ツールキットへの移行を完了させた。これにより、古いコンピューターやリソースの少ない環境でも快適に動作するというLXQtの強みを維持しつつ、モダンな機能を取り込むことが可能になった。MATEはGNOME 2の操作性を継承しており、安定性と親しみやすいインターフェースが特徴だ。バージョン1.28では、GTK3ベースで安定した改良が加えられ、クラシックな操作感を好むユーザーに引き続き支持されている。Xfceもバージョン4.20に向けて開発が進められており、軽量さと安定性を保ちながら、将来的にはGTK4への移行も視野に入れている。
これらのデスクトップ環境の進化と並行して、Linuxデスクトップ全体で「Wayland」への移行が加速している。Waylandは従来のX Window Systemに代わる新しいディスプレイサーバープロトコルであり、セキュリティの強化、描画パフォーマンスの向上、そしてモダンなディスプレイ技術への対応を目的としている。Ubuntuの開発元であるCanonicalもWaylandをデフォルトにすることを推進しており、将来的には多くのLinuxディストリビューションでWaylandが標準となる見込みだ。システムエンジニアとしては、Waylandの動作原理やトラブルシューティングに関する知識が、今後のLinux環境でアプリケーションを開発・運用する上で不可欠となるだろう。
アプリケーションのパッケージング技術にも進展があった。SnapやFlatpakといった新しいパッケージ形式が普及し、アプリケーションの配布と管理がより簡単になっている。これらの技術は、依存関係の問題を解消し、異なるLinuxディストリビューション間でのアプリケーション互換性を高めることで、開発者とユーザー双方にメリットをもたらす。SEとしては、これらのパッケージング技術の仕組みを理解し、自分の開発したアプリケーションをどのように配布するか、あるいは既存のアプリケーションをどのように管理するかの選択肢として考慮する必要がある。
2025年に向けては、これらの動きがさらに加速すると予測される。Waylandはより成熟し、多くのアプリケーションがWaylandネイティブに対応することで、ユーザー体験は一層向上するだろう。各デスクトップ環境はGTK4やQt6への移行を完了させ、それによって引き出される新しい機能やパフォーマンスの恩恵をユーザーは享受できるようになる。セキュリティとパフォーマンスの継続的な改善はもちろん、ハードウェアとの連携も深まり、より統合されたデスクトップ体験が実現されるかもしれない。
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、これらのデスクトップ環境の動向を理解することは、単に好きな操作画面を選ぶという以上の意味を持つ。開発環境の選定、特定のGUIツールを開発する際の技術選定、クライアント環境の管理、そして最新技術のトレンド把握といった多岐にわたる場面で役立つ知識となる。どのようなデスクトップ環境がどのような特性を持ち、どのような技術的背景で動いているのかを知ることは、将来のキャリアにおいて必ず役立つだろう。