【ITニュース解説】保護者からの「うちの子今日なにしてました?」にヒヤヒヤの毎日。Difyを使って今日の様子を堂々と伝えられるアプリを作ってみた!
ITニュース概要
元幼稚園教諭がDifyでアプリを開発。幼稚園教諭が保護者からの「今日なにしてました?」という質問に困る問題を解決し、園児の様子を簡単に伝えられるようにした。日々の報告業務負担を軽減し、保護者との情報共有をスムーズにする。
ITニュース解説
このニュース記事は、幼稚園や保育園で働く人々が日々直面する「今日、うちの子何してた?」という保護者からの質問に、効率的かつ具体的に答えるためのアプリケーション開発事例を紹介している。この課題は、限られた時間の中で園児一人ひとりの活動を詳細に記録し、それを保護者に分かりやすく伝えるという、保育現場特有の労力を伴うものだ。 このアプリ開発では、最新の生成AI技術が中心的な役割を担っている。その核となるツールが「Dify」だ。Difyは、プログラミングの専門知識がなくても、直感的な操作で生成AIを活用したアプリケーションを構築できるプラットフォームである。具体的には、AIに対してどのような指示(これを「プロンプト」と呼ぶ)を与えるか、AIにどのような情報を処理させるか、そしてAIが生成した結果をどのように次のステップに繋げるかといった一連の流れ(「ワークフロー」)を、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)上で視覚的に組み立てていく。これにより、プログラミング経験が少ない人でも、AIの高度な機能を自分のアプリに組み込むことが可能になる。 開発されたアプリの具体的な機能と流れを見てみよう。まず、保育士は「Glide」というノーコードツールで作成されたアプリのインターフェースを使用する。このGlideアプリは、園児の名前や写真を表示し、保育士が活動内容を入力するための窓口となる。保育士は、その園児が今日どのような活動をしたかを、音声で直接入力する。例えば、「〇〇ちゃんは午前中に粘土遊びをして、午後は公園でブランコをしました」といった具体的な内容だ。 この音声入力によってテキスト化された活動データは、次に「Googleスプレッドシート」に保存される。Googleスプレッドシートは、クラウド上で表形式のデータを管理するツールであり、このアプリでは園児の情報や活動記録を一元的に保存するデータベースとして機能している。 スプレッドシートに保存された活動記録は、「Google Apps Script(GAS)」によって処理される。GASは、Googleが提供するさまざまなサービス(スプレッドシート、Gmail、Googleドライブなど)を連携させたり、自動化したりするためのプログラミング言語だ。このアプリでは、GASがスプレッドシートから活動記録を読み込み、それをDifyのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)に送信する役割を担う。APIとは、異なるソフトウェアやサービスが互いに情報をやり取りするための取り決めや窓口のようなものだと考えると良い。 Difyに送られた活動記録は、AIによって分析され、保護者向けの「日報」として文章が生成される。ここでDifyにおけるプロンプト設計が非常に重要になる。保育士の入力した情報(例:「粘土遊びをした」「ブランコをした」)を、保護者が安心して読めるような、丁寧で具体的な言葉遣いに変換したり、活動の要点を分かりやすくまとめたりするよう、AIに細かく指示を出すのだ。例えば、AIは「〇〇ちゃんは午前中、指先を使って粘土の感触を楽しみ、創造性を育む時間を過ごしました。午後には、公園でブランコに挑戦し、友だちと笑顔で遊びました」といった形で日報を作成するかもしれない。このAIによる文章生成は、保育士が手作業で日報を作成する手間を大幅に削減し、より質の高い、パーソナライズされた情報を提供することを可能にする。 Difyで生成された日報テキストは、再びGASを通して受け取られる。GASは、この日報を「LINE Messaging API」を利用して、該当する園児の保護者のLINEアカウントに送信する。LINE Messaging APIは、企業や開発者がLINEのプラットフォーム上でユーザーとコミュニケーションを取るための仕組みだ。これにより、保護者は日報を自分のLINEアプリで手軽に受け取ることができ、保育士は情報共有の手間を最小限に抑えられる。 このように、このアプリはDifyによる生成AIの活用を中心に、Glideでの簡単なUI構築、Googleスプレッドシートでのデータ管理、GASによる各サービスの連携と自動化、そしてLINE Messaging APIによる情報配信という、複数の技術要素を巧みに組み合わせている。それぞれのツールが持つ得意分野を活かし、全体のシステムを構築している点が注目に値する。 この開発事例は、システムエンジニアを目指す初心者にとって多くの学びがある。まず、現場の具体的な課題を発見し、それを技術でどう解決するかという課題解決の視点だ。次に、プログラミング言語だけでなく、Difyのようなノーコード・ローコードツールや、GASのような既存サービスを連携させるスクリプト言語など、多様な技術選択肢があることを示している。また、APIを介して異なるサービスが連携し、一つの大きなシステムとして機能する仕組みを理解する上でも良い例となる。AIの可能性を身近な課題解決に応用するアイデアや、その実現方法を知ることは、今後のシステム開発において非常に重要なスキルになるだろう。このアプリ開発は、テクノロジーが私たちの生活や仕事にどのように役立つかを示す、実践的な成功事例と言える。