【ITニュース解説】ヘッドレスCMS「Directus」に脆弱性 - 7月の更新で対処
ITニュース概要
Webサイトの裏側を管理するヘッドレスCMS「Directus」に、外部から攻撃を受ける可能性のある脆弱性が見つかった。この問題は7月に公開された更新版で修正されているため、利用者は速やかなアップデートが必要である。
ITニュース解説
オープンソースのヘッドレスCMSである「Directus」において、複数のセキュリティ上の脆弱性が存在することが明らかになった。これらの脆弱性を悪用されると、情報漏洩やシステムの乗っ取りなど、深刻な被害につながる可能性がある。開発元はすでに問題を修正したバージョンを公開しており、利用者に対して速やかなアップデートを呼びかけている。 まず、今回のニュースを理解するために、中核となる技術である「ヘッドレスCMS」について解説する。CMSは「コンテンツ・マネジメント・システム」の略であり、Webサイトのテキストや画像などのコンテンツを専門的な知識がなくても管理・更新できるシステムを指す。代表的なものにWordPressがある。従来のCMSは、コンテンツを管理するバックエンド機能と、そのコンテンツをWebページとして表示するフロントエンド機能が一体化しているのが一般的であった。一方、「ヘッドレスCMS」は、このフロントエンド機能、つまり「ヘッド(頭)」の部分を持たない。コンテンツ管理機能に特化し、管理しているデータはAPIと呼ばれる仕組みを通じて外部に提供する。これにより、開発者はWebサイトだけでなく、スマートフォンアプリ、デジタルサイネージ、IoTデバイスなど、様々なプラットフォームに対して同じコンテンツを柔軟に配信できるようになる。「Directus」は、既存のSQLデータベースをラップする形で、このヘッドレスCMS機能を提供する人気の高いソフトウェアである。 今回Directusで発見された脆弱性は複数存在する。その中でも特に重要なものをいくつか解説する。一つ目は「格納型クロスサイトスクリプティング(Stored XSS)」と呼ばれる脆弱性(CVE-2024-5182)である。これは、攻撃者が悪意のあるスクリプトをWebアプリケーションに注入し、それがデータベースなどに保存されてしまうタイプの攻撃だ。そして、他のユーザーがそのスクリプトが埋め込まれたページにアクセスすると、ユーザーのブラウザ上でスクリプトが実行されてしまう。結果として、ユーザーの個人情報(クッキーなど)が盗まれてアカウントが乗っ取られたり、偽の情報を表示させられたりする被害が発生する可能性がある。 二つ目は「サーバーサイド・リクエスト・フォージェリ(SSRF)」という脆弱性(CVE-2024-5183)だ。これは、攻撃者がアプリケーションのサーバーを騙して、本来意図しない任意の場所にリクエストを送信させてしまう攻撃手法である。通常、サーバーは外部から直接アクセスできない社内ネットワークなどの内部システムと通信していることが多い。SSRFを悪用されると、攻撃者はこのサーバーを踏み台にして、外部からでは到達不可能な内部ネットワーク上の他のサーバーへ攻撃を仕掛けたり、機密情報を盗み出したりすることが可能になる。非常に危険性の高い脆弱性の一つと言える。 三つ目は「ディレクトリトラバーサル」の脆弱性(CVE-2024-5184)である。これは、Webアプリケーションがファイルやディレクトリへアクセスする際のパス(場所を示す文字列)の検証が不十分な場合に発生する。攻撃者は、「../」のような特殊な文字列をリクエストに含めることでディレクトリの階層を遡り、本来アクセスが許可されていない設定ファイルやプログラムのソースコード、パスワードファイルなどを不正に閲覧・取得することができてしまう。システムの根幹に関わる情報が漏洩するリスクがある。 最後に、デフォルトの管理者パスワードが推測しやすいという設定上の問題(CVE-2024-5185)も指摘されている。ソフトウェアをインストールした直後の初期設定において、管理者アカウントのパスワードが「admin」や「password」のような単純なものになっていると、攻撃者に容易に推測され、システム全体を乗っ取られる危険性が高まる。これはプログラムの欠陥ではないが、セキュリティを確保する上で非常に重要な観点である。 これらの脆弱性に対する最も確実な対策は、ソフトウェアを最新版にアップデートすることである。Directusの開発チームは、今回発見された脆弱性を修正したバージョンをすでにリリースしている。具体的には、バージョン「10.12.1」以降に更新することで、報告されたすべての問題が解消される。自身が運用するシステムの安全を維持するためには、利用しているソフトウェアの脆弱性情報を日頃から収集し、セキュリティパッチが公開された際には、システムの仕様や影響範囲を十分に検証した上で、迅速に適用することが不可欠である。システムエンジニアを目指す上で、機能開発のスキルだけでなく、こうしたセキュリティに関する知識を身につけ、安全なシステムを構築・運用する意識を持つことは極めて重要だ。