【ITニュース解説】Episode 13: Docker Compose Advanced (Scaling & Multi-Env Setup)
2025年09月04日に「Dev.to」が公開したITニュース「Episode 13: Docker Compose Advanced (Scaling & Multi-Env Setup)」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
Docker Composeの応用を解説する。サービスの複数インスタンス実行や負荷分散、開発・本番環境での設定切り替え、Overrideによる柔軟な管理、ネットワーク構築など、実際の開発現場で役立つ実践的なテクニックを習得できる。
ITニュース解説
ニュース記事は、Docker Composeの基本的な使い方をさらに一歩進め、実際の開発現場で役立つ高度な活用法を解説している。システムエンジニアを目指す初心者にとって、Docker Composeは複数のアプリケーション(Webサーバー、データベース、キャッシュなど)を連携させて動かすための非常に便利なツールだが、この解説では、より大規模なシステムや複雑な開発フローに対応するためのテクニックを学ぶことができる。
まず、「サービスのスケーリング」について学ぶ。アプリケーションが人気を集め、多くのユーザーからのアクセスが集中する状況を想像してほしい。一つのWebサーバーだけでは処理しきれなくなり、応答が遅くなったり、最悪の場合、サービスが停止してしまう可能性もある。このような課題を解決するのがサービスのスケーリングだ。Docker Composeでは、「docker-compose up --scale web=3」といった簡単なコマンド一つで、特定のサービス(例えば、Webサーバー)のインスタンスを複数(この例では3つ)立ち上げることができる。これにより、ユーザーからのリクエストがそれぞれのインスタンスに分散され、一台あたりの負荷が軽減される。これが「ロードバランシング」と呼ばれる仕組みであり、システム全体の処理能力が向上し、たとえ一部のインスタンスに障害が発生しても、残りのインスタンスが処理を継続するため、サービスの安定性も高まるのだ。
次に、「複数環境ファイル」の管理について解説する。ソフトウェア開発では、開発環境、テスト環境、本番環境など、いくつかの異なる環境が存在するのが一般的だ。それぞれの環境で、データベースの接続先やAPIキー、デバッグモードの有効・無効といった設定が異なることが多い。これらの設定を一つのファイルで管理しようとすると、非常に複雑になり、ミスも発生しやすくなる。そこで、Docker Composeでは「.env」ファイルを使って環境変数を管理し、さらに「.env.dev」や「.env.prod」、「.env.staging」といった環境ごとの設定ファイルを使い分ける方法が提供されている。「docker-compose --env-file .env.prod up」のようにコマンドで指定することで、本番環境用の設定ファイルを使ってアプリケーションを起動できる。これにより、環境ごとの設定変更が容易になり、開発者はそれぞれの環境に合わせた適切な動作を簡単に実現できる。
さらに、「Composeオーバーライドファイル」の活用も重要だ。通常、docker-compose.ymlファイルには、アプリケーションの基本的な構成や共通の設定を記述する。しかし、開発中にだけ必要となる設定、例えばローカルのソースコードをコンテナ内に同期させるためのボリュームマウントや、特定のポートをローカルマシンに公開する設定などは、本番環境では不要な場合が多い。このような場合、「docker-compose.override.yml」というファイルを作成し、そこに開発環境特有の設定を記述する。このオーバーライドファイルは、docker-compose.ymlの内容を上書きしたり、設定を追加したりする役割を持つ。これにより、docker-compose.ymlを本番環境向けにクリーンな状態に保ちつつ、開発者は「docker-compose -f docker-compose.yml -f docker-compose.prod.yml up -d」のように、複数のComposeファイルを組み合わせて使用できる。この仕組みによって、開発環境と本番環境で設定を明確に分離し、誤って開発用の設定が本番環境に適用されるリスクを防ぐことができるのだ。
「Composeでのネットワーキング」も、より高度なアプリケーションを構築する上で欠かせない要素である。特に、アプリケーションが複数の小さなサービス(マイクロサービス)に分割されていて、それぞれが独立して動作し、互いに連携し合うようなアーキテクチャの場合、サービス間の通信をどのように行うかが重要になる。Docker Composeでは、「カスタムネットワーク」を定義することで、特定のサービス群だけがアクセスできる独立した通信経路を作り出すことが可能だ。これにより、サービス間の通信が安全かつ効率的に行えるようになる。また、複数のDocker Composeプロジェクトを跨いでサービスを連携させることも可能であり、例えば、データベースサービスを一つのComposeプロジェクトで管理し、Webアプリケーションサービスを別のComposeプロジェクトで管理するといった、より柔軟なシステム構成も実現できる。
これらの高度な機能を使う上で、「ベストプラクティス」にも目を向ける必要がある。最も重要なのは、「ハードコーディングを避けて環境変数を利用する」ことだ。データベースのパスワードやAPIキーといった機密情報、あるいは頻繁に変更される可能性のある設定値を、Composeファイル内に直接書き込む(ハードコーディングする)のは避けるべきだ。代わりに、.envファイルや環境変数としてこれらの値を定義し、Composeファイル内ではそれらの環境変数を参照するようにする。これにより、設定変更が容易になり、特に機密情報に関しては、Composeファイルがバージョン管理システム(Gitなど)に公開されても、パスワードなどが外部に漏れるリスクを低減できる。機密情報はさらに厳重に、「Composeファイルの外部」で管理することが推奨される。具体的には、Docker SwarmのSecretsやKubernetesのSecretsといった、機密情報管理専用のツールを活用する方法がある。
これらの高度なDocker Composeの機能を使いこなすことで、Node.jsとRedisを組み合わせたアプリケーションを例に、実際にRedisのインスタンスをスケールさせ、リクエストがどのように分散されるかを確認したり、開発環境と本番環境で異なる.envファイルを切り替えてみたりといった実践的な学習が可能になる。システムエンジニアを目指す初心者にとって、これらの知識は、単一のコンテナを動かすだけではなく、複数のサービスが連携し、変化する要求に対応できるような、より堅牢で柔軟なアプリケーションを開発・運用するために不可欠なスキルとなるだろう。