【ITニュース解説】Docker Series: Episode 12 — Docker Security — Protect Your Images, Containers & Secrets 🔒
2025年09月03日に「Dev.to」が公開したITニュース「Docker Series: Episode 12 — Docker Security — Protect Your Images, Containers & Secrets 🔒」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
Dockerを安全に使うセキュリティ対策を解説。イメージやコンテナ、パスワードなどの機密情報を守るため、公式イメージの利用、非rootユーザーでの実行、定期的な更新、Trivyなどの専門ツール活用が重要だ。
ITニュース解説
Dockerは、アプリケーションをコンテナという独立した環境で動かすための技術であり、開発の効率化や運用を容易にする多くのメリットがある。しかし、その利便性の裏で、セキュリティという重要な側面が見過ごされがちである。コンテナはアプリケーションを分離するが、これはセキュリティが自動的に保証されるという意味ではない。設定ミスやイメージ内の脆弱性が原因で、攻撃者にシステムへの侵入を許したり、機密データが流出したりするリスクは常に存在する。システムエンジニアを目指す上で、Docker環境を安全に保つための知識は不可欠となる。
まず、安全なDockerイメージを作成することから始める。Dockerイメージは、アプリケーションとその実行に必要なすべてのものがパッケージ化されたテンプレートのようなものであり、これが安全でなければ、そこから作られるコンテナも安全とは言えない。最も基本的な対策は、公式のベースイメージを使うことである。例えば、alpineやubuntuといった公式イメージは、多くの場合、信頼できる組織によって管理され、セキュリティパッチが適用されているため、未知の脆弱性が含まれるリスクが低い。また、一度使ったイメージも定期的にdocker pullコマンドで更新し、最新の状態に保つことが重要である。これは、ソフトウェアの脆弱性が日々発見されているため、常に最新のセキュリティ対策を取り入れるためだ。さらに、イメージのサイズをできるだけ小さくすることもセキュリティの観点から推奨される。不要なソフトウェアやライブラリが含まれていなければ、それらを通じた攻撃の機会を減らすことができるからである。そして、イメージの作成後には、TrivyやClairといった専門のスキャンツールを使って、既知の脆弱性がないかをチェックすることが非常に有効だ。これにより、潜在的なセキュリティリスクを構築段階で特定し、修正できる。
次に、アプリケーションが扱うパスワードやAPIキーのような機密情報(シークレット)の管理について考える。Dockerファイルを記述する際に、これらの機密情報を直接(ハードコードして)書き込むことは絶対に避けるべきである。Dockerファイルは多くの場合、バージョン管理システムで共有されたり、公開されたりする可能性があり、そこに機密情報が含まれていれば、第三者に悪用される危険性があるからだ。代わりに、Docker Swarmのようなオーケストレーションツールが提供するDocker Secrets機能や、AWS Secrets Manager、HashiCorp Vaultのような外部のシークレットマネージャーを使うべきである。これらは機密情報を安全に保存し、必要なコンテナにのみ安全な方法で渡す仕組みを提供する。もし、これらの専用ツールを使わない場合でも、環境変数やマウントされたファイルを通じて機密情報を渡す方法があるが、この際も、コンテナのログに機密情報が残らないように注意するなど、慎重な取り扱いが求められる。
コンテナが実際に動作している間のセキュリティ、つまりコンテナ実行時のセキュリティも重要である。デフォルトでは、コンテナ内のプロセスはrootユーザーとして実行されることが多いが、これはセキュリティ上好ましくない。rootユーザーはシステム全体に対する広範な権限を持つため、もしコンテナが侵害された場合、攻撃者がその権限を利用してホストシステム全体に影響を及ぼす可能性があるからだ。これを防ぐため、コンテナ内のアプリケーションは可能な限り非rootユーザーとして実行するように設定すべきである。Dockerfile内でUSER命令を使って非rootユーザーを定義し、そのユーザーでアプリケーションを実行させることが推奨される。また、コンテナが使用できるCPUやメモリの量に上限を設定する(--memoryや--cpusオプションを使用)ことも、リソースの枯渇攻撃を防ぐ上で有効である。そして、--privilegedモードは、コンテナにホストシステムのすべての特権を与える非常に危険な設定であるため、絶対に必要でない限り使用を避けるべきである。
ネットワークセキュリティもDocker環境を安全に保つ上で欠かせない要素だ。Dockerはデフォルトでブリッジネットワークと呼ばれる仮想ネットワークを提供する。これを利用してサービスごとにネットワークを分離することで、あるサービスが侵害されても、他のサービスへの影響を最小限に抑えることができる。また、コンテナが外部に公開するポートは、必要最小限に限定することが重要である。使わないポートは閉じることで、外部からの不要なアクセスポイントを減らすことができる。さらに、NginxやTraefikのようなリバースプロキシを導入し、アクセス制御やSSL/TLSによる暗号化を行うことや、ファイアウォールを設定して不審な通信をブロックすることも、ネットワークセキュリティを強化する上で非常に効果的である。
Dockerセキュリティを支援するツールも多数存在し、これらを活用することでセキュリティ対策を効率的に進めることができる。Trivyは前述の通り、Dockerイメージ内の脆弱性をスキャンし、既知の脆弱性データベースと照合してくれるツールである。Falcoは、コンテナの実行時に不審な挙動(例えば、シェルが予期せず起動したり、機密ファイルにアクセスされたりするような活動)をリアルタイムで監視し、異常を検知した際にアラートを出すことで、攻撃の兆候を早期に捉える手助けとなる。Docker Bench for Securityは、Dockerの公式セキュリティチェックリストに基づいて、現在のDocker環境がセキュリティのベストプラクティスにどれだけ準拠しているかを自動で評価してくれるツールで、設定ミスを発見し、改善するための指針を与えてくれる。
ここで、非rootユーザーでコンテナを実行する具体的なDockerfileの例を挙げる。まず、FROM node:18-alpineで信頼できるNode.jsの公式軽量イメージをベースに指定する。次に、RUN addgroup appgroup && adduser -S appuser -G appgroupという命令で、appgroupというグループとappuserという非rootユーザーを作成し、ユーザーをグループに所属させる。そして、USER appuserと記述することで、それ以降のすべてのコマンド(アプリケーションの実行など)がappuserの権限で実行されるように設定する。その後のWORKDIR /appで作業ディレクトリを定め、COPY . .でホスト側のアプリケーションコードをコンテナ内にコピーし、RUN npm install --productionで必要なライブラリをインストールする。最後にCMD ["node", "server.js"]で、コンテナ起動時にアプリケーションを実行するコマンドを指定する。
このDockerfileのように非rootユーザーでアプリケーションを実行させることで、もし万が一、コンテナが攻撃を受けたとしても、攻撃者はroot権限を持たないため、ホストシステムへの影響を限定的にとどめることができる。
これらのセキュリティ対策を講じることで、Docker環境の脆弱性を減らし、パスワードなどの機密情報を適切に管理し、最終的には本番環境で安全に動作する強固なコンテナを構築できるようになる。セキュリティは一度設定すれば終わりではなく、継続的な監視と更新が必要なプロセスである。しかし、これらの基本的なベストプラクティスを理解し実践することで、安全なシステム運用の基礎を築くことができる。