【ITニュース解説】3,350 ERAM and the New Standoff: How USA Extended-Range Missiles Could Push Ukraine’s Strike Depth…

2025年09月04日に「Medium」が公開したITニュース「3,350 ERAM and the New Standoff: How USA Extended-Range Missiles Could Push Ukraine’s Strike Depth…」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

米国がウクライナへ長射程の空中発射型弾薬「ERAM」の供与を承認。これは敵の射程圏外から安全に攻撃できるスタンドオフ兵器で、大量生産も可能。ドローンや戦闘機と組み合わせることで、ウクライナの攻撃範囲が大幅に拡大する。

ITニュース解説

ウクライナの戦況に新たな局面をもたらす可能性のある兵器として、米国が供与を承認した「ERAM(Extended-Range Attack Munition)」が注目されている。これは、ウクライナ軍の攻撃能力、特に敵の防御網の外側から安全に攻撃できる「スタンドオフ能力」を大幅に向上させるものであり、その背景には既存の技術を応用し、コスト効率と性能を両立させるという巧妙な技術的アプローチが存在する。

ERAMを理解するためには、まずその原型となった「JDAM(Joint Direct Attack Munition)」という兵器システムを知る必要がある。JDAMは、従来から使用されてきた無誘導の通常爆弾に、GPS受信機と操舵翼を備えた誘導キットを取り付けることで、高精度な誘導爆弾に変える後付けのシステムである。これにより、比較的安価な通常爆弾を、天候に左右されずに目標へ正確に誘導できる「スマート爆弾」として運用することが可能になった。これは、既存のハードウェアに新しいモジュールを追加して機能を拡張するという、システム開発におけるアプローチと似ている。このJDAMの登場により、精密攻撃のコストパフォーマンスは劇的に向上した。

次に開発されたのが、JDAMの射程を延長した「JDAM-ER(Extended Range)」である。これは、JDAMのキットに加えて、展開式の翼(ウィングキット)を追加したものである。航空機から投下された後、この翼を展開して滑空することにより、投下地点から数十キロメートル先の目標まで到達できるようになった。これにより、攻撃する航空機は敵の短距離防空システム(SHORAD)の脅威が及ばない、より遠く安全な場所から爆弾を投下できるようになった。

そして、今回注目されているERAMは、このJDAM-ERのコンセプトをさらに推し進めたものと考えられる。具体的には、「Powered JDAM(PJDAM)」と呼ばれる技術が応用されている。PJDAMは、JDAM-ERの滑空能力に加え、小型のジェットエンジンなどの推進装置を搭載することで、自力で長距離を飛行する能力を持つ。これにより、射程は数百キロメートル単位へと飛躍的に延伸され、もはや滑空爆弾というよりは小型の巡航ミサイルに近い兵器となる。この推進装置の追加により、航空機は敵の広範囲な防空網からさらに離れた位置で兵器を発射でき、パイロットと機体の安全性を格段に高めることができる。

ERAMがウクライナにとって戦略的に重要なのは、その「コスト効率」と「量産性」にある。ウクライナはこれまでにも、英国の「ストーム・シャドウ」やフランスの「SCALP-EG」といった高性能な長距離巡航ミサイルを供与され、戦果を挙げてきた。しかし、これらのミサイルは非常に高性能である反面、一発あたりの価格が極めて高く、生産数も限られているため、使用できる目標や頻度に制約があった。一方、ERAMは既存の爆弾をベースに改造するため、専用の巡航ミサイルを新規に製造するよりもはるかに安価であり、大量生産にも向いている。記事で示唆されているように、数千発単位での供給が可能になれば、ウクライナはこれまで攻撃が難しかった多数の目標に対し、持続的かつ大規模な攻撃を行う能力を手にすることになる。

また、技術的な課題として、西側製のERAMをウクライナが運用する旧ソ連製の戦闘機(MiG-29やSu-27など)に統合するプロセスが挙げられる。異なる規格で設計された航空機と兵器を連携させるには、搭載用の架台(パイロン)の物理的な改造に加え、兵器に目標情報などを入力するための電子インターフェース(アビオニクス)の適合が不可欠である。これは、異なるメーカーのシステムや、新旧のシステムを連携させるシステムインテグレーションの作業に相当し、データバスのプロトコル変換やソフトウェアの改修など、高度な技術力が求められる。ウクライナは既に、米国製の対レーダーミサイル「HARM」やJDAM-ERの統合に成功しており、ERAMの統合にもその経験が活かされると考えられる。

ERAMの導入は、戦場の様相を大きく変える可能性がある。ウクライナはロシア軍の支配地域奥深くにある指揮所、弾薬庫、兵站拠点、交通の要衝といった高価値目標を、より安全かつ頻繁に攻撃できるようになる。これにより、前線で戦うロシア軍部隊への補給や指揮系統を混乱させ、その戦闘能力を削ぐことが期待される。これは、単に前線での戦闘力を強化するだけでなく、敵のシステム全体を弱体化させるという、より戦略的な効果を狙うものである。ERAMは、ドローンによる偵察や陽動攻撃と組み合わせることで、さらに効果的な運用が可能となり、ロシアの防空システムにとってより複雑で対処の難しい脅威となるだろう。

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