【ITニュース解説】Erdus - a universal ER diagram converter: challenges in schema migration

2025年09月06日に「Reddit /r/programming」が公開したITニュース「Erdus - a universal ER diagram converter: challenges in schema migration」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

Erdusは、ER図やSQL、Prismaなど異なる形式のデータベーススキーマを相互変換するツールだ。関係性、複合キー、図のレイアウトを正確に保ちながら変換するのが難しく、一貫したID生成や適切な中間表現の設計といった技術的課題を解決している。

ITニュース解説

システムエンジニアを目指す上で、データベースの設計と管理は非常に重要なスキルの一つである。データベースを設計する際、データの構造や関係性を視覚的に表現するための図がある。これが「ER図(Entity-Relationship Diagram)」である。このER図や、実際にデータベースを構築するための設計図である「スキーマ」は、さまざまなツールや形式で作成されるため、異なる形式間でこれらを変換する必要が生じることがある。今回紹介する「Erdus」プロジェクトは、そのようなER図やスキーマの変換を可能にするユニバーサルコンバーターの開発とその技術的な挑戦について述べている。

まず、ER図とは何か、なぜ重要なのかを理解する必要がある。ER図は、データベースに保存するデータの種類(エンティティ)と、それらのデータ間の関係性(リレーションシップ)を記号で表した図である。例えば、顧客情報と注文情報という二つのデータは、「顧客が注文する」という関係で結ばれている。ER図を用いることで、データベースの構造を一目で理解し、開発者や利用者が共通認識を持つことができる。一方、「スキーマ」とは、データベースの論理的な構造を定義するもので、どのテーブルにどのようなデータが、どのような型で、どのような制約(例えば、重複を許さない、必ず値が入るなど)を持って格納されるかを具体的に記述した設計図である。SQLデータベースであれば、CREATE TABLE文などで定義されるものがこれにあたる。

Erdusプロジェクトは、このER図やスキーマを異なる形式間で双方向に変換することを目指している。具体的には、ER図作成ツールである「ERDPlus」の旧形式と新形式、一般的なデータベース言語である「SQL」のスキーマ、そして現代的なWebアプリケーション開発で使われるデータベースツール「Prisma」のスキーマの間で変換が可能である。ここで重要なのは「双方向」変換である点だ。例えば、SQLのスキーマからERDPlusの図を作成し、さらにそのERDPlusの図から再度SQLのスキーマに戻す、といったことができる。これにより、異なるツールや開発環境を使っているチーム間での連携がスムーズになる。

この変換において、Erdusが特に重視するのは、データベースの重要な要素である「リレーションシップ」、複数の列を組み合わせて主キーや外部キーとする「複合外部キー」、そしてER図の「視覚的なレイアウト」を維持することである。リレーションシップや複合キーは、データ間の関連性を正確に表現し、データの整合性を保つ上で不可欠な要素だ。これらが変換の過程で失われたり、誤って解釈されたりすると、データベースの構造が壊れてしまう可能性がある。また、ER図のレイアウトは、その図の読みやすさや理解しやすさに直結する。せっかく正確な情報が変換されても、要素がバラバラに配置されていては、図としての価値が半減してしまう。

Erdusの開発者は、このユニバーサルコンバーターを実現するにあたり、いくつかの技術的な課題に直面した。その一つが「決定論的ID生成」である。データベース内のテーブルやカラムといった要素には、それぞれ一意の識別子(ID)が割り当てられていることが多い。異なる形式間で変換を繰り返すと、これらのIDが毎回新しく生成されてしまい、元の要素との対応関係が失われる可能性がある。これを避けるためには、入力される情報に基づいて常に同じIDが生成される「決定論的」な方法でIDを生成する必要がある。これにより、変換を繰り返しても、どの要素がどの要素に対応しているか、という参照の一貫性を保つことができるのだ。

二つ目の課題は、「複合キーのマッピングと、整合性を損なわずにリレーションシップを再構築すること」である。複合キーとは、複数のカラムを組み合わせて、テーブル内の行を一意に識別するためのキーである。例えば、注文テーブルにおいて、顧客IDと商品IDの組み合わせで一つの注文を特定するといった場合がこれにあたる。これらの複合キーが他のテーブルの外部キーとして参照されている場合、そのリレーションシップは非常に複雑になる。異なるスキーマ形式間では、複合キーやリレーションシップの表現方法が異なるため、これらを正確にマッピングし、データの整合性を損なわずに元の関係性を再構築することは高度な技術を要する。誤ったマッピングは、データベースのデータが矛盾する原因となりかねないため、慎重な設計が求められる。

三つ目の課題は、「フォーマット間で移動する際に視覚的な位置を維持すること」であった。ER図は、テーブルや関係性をボックスや線で表現し、それらが配置される位置やサイズ、線のつながり方によって全体の構造を直感的に理解できるように作られている。異なるER図作成ツールやスキーマ表現では、このレイアウト情報の持ち方が異なるため、あるツールで作成した図を別のツールに変換した際に、要素がぐちゃぐちゃになってしまい、視覚的に読み取りにくくなる問題が発生する。Erdusは、この視覚的なレイアウト情報も保持しながら変換することで、変換後のER図の有用性を高めようとしている。これは、ユーザーが変換された図を再度手動で整理する手間を省き、生産性を向上させる上で非常に重要である。

そして、最も根幹となる課題は、「ラウンドトリップ変換をサポートするのに十分厳密な中間表現(IR)の設計」であった。「中間表現(IR:Intermediate Representation)」とは、異なる形式のデータを直接変換するのではなく、一度共通の汎用的なデータ形式に変換し、そこから目的の形式に変換するという方式で使われる。Erdusの場合、ERDPlus、SQL、Prismaといった多様なスキーマ形式の情報を一度すべて表現できるような、厳密かつ詳細な中間表現を設計する必要があった。このIRが不十分だと、特定の情報が欠落したり、正確に表現できなかったりするため、元の形式に戻す「ラウンドトリップ変換」が不可能になったり、情報が失われたりする。IRは、すべての形式が持つ要素を網羅し、かつそれぞれの形式が持つ特有の情報を保持できるだけの柔軟性と厳密さを併せ持つ必要がある。このIRがしっかり設計されていることで、各形式からIRへの変換と、IRから各形式への変換という、二段階のシンプルな変換処理で多様な形式間の双方向変換が実現可能となる。

Erdusプロジェクトは、このようにデータベースの設計図であるER図やスキーマの変換という、一見地味に見えるがシステム開発において非常に重要な課題に取り組んでいる。異なるツールやプラットフォームが混在する現代の開発環境において、このような変換ツールは、開発の効率化、チーム間の連携促進、そしてデータ整合性の維持に大きく貢献する。システムエンジニアを目指す初心者にとって、このようなプロジェクトは、データベースの深い理解だけでなく、データ構造の抽象化、複雑な変換ロジックの設計、そしてユーザーの利便性を追求する姿勢など、多くのことを学ぶ良い機会となるだろう。

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