【ITニュース解説】Eufy's latest security camera has three lenses and a detachable solar panel
2025年09月05日に「Engadget」が公開したITニュース「Eufy's latest security camera has three lenses and a detachable solar panel」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
Eufyの新型セキュリティカメラ「EufyCam S4」は、4K広角と2K追跡用の計3つのレンズを搭載。侵入者を360度自動で追跡し、ズームも可能。レーダーと赤外線で人や車を正確に検知する。着脱可能なソーラーパネルで充電の手間も削減できる。(118文字)
ITニュース解説
ドイツで開催された国際的な技術見本市IFAにて、スマートホーム製品を手がけるEufyから、新しい屋外用セキュリティカメラ「EufyCam S4」が発表された。このカメラは、複数の先進技術を組み合わせることで、従来のセキュリティカメラが抱えていた課題を解決しようとする意欲的な製品であり、その仕組みはシステム開発を学ぶ上で非常に興味深いものとなっている。
まず、EufyCam S4の最大の特徴は、3つのカメラレンズを搭載している点だ。これは、監視の「広さ」と「深さ」を両立させるためのシステム設計である。一つ目は、4K解像度を持つ固定式の広角カメラだ。視野角は130度あり、家の敷地全体のような広い範囲を常に高精細な映像で捉え続ける役割を担う。システムにおける「常時監視モニター」のような存在と言える。そして、残りの二つは2K解像度の追跡用カメラだ。これらは、広角カメラの視野内で不審な動き、例えば侵入者と思われる人物を検知した際に起動する。検知した対象を自動で追跡し、ズームアップして詳細な映像を記録する役割を持つ。さらに、この追跡用カメラは、パン(左右の首振り)、チルト(上下の首振り)、ズーム(拡大・縮小)といったPTZ機能に対応している。これにより、カメラ自体が物理的に動いて、最大で約50メートル離れた場所にいる人物にも焦点を合わせ続けることが可能だ。また、オートフレーミング機能も備えており、対象が一人でも複数人のグループでも、全員が画面内に収まるように自動で画角を調整する。これら3つのレンズが連携動作することで、広範囲を監視しつつも、特定のターゲットを見失うことなく詳細に記録するという、高度な監視システムを実現している。
セキュリティカメラの運用における大きな課題の一つに、誤報がある。風で揺れる木の枝や、横切る小動物などに反応してしまい、不必要な通知が頻繁に届くという問題だ。EufyCam S4は、この課題を解決するために「デュアルモーション検知システム」という仕組みを採用している。これは、性質の異なる二つのセンサー技術を組み合わせて、検知精度を向上させるアプローチだ。一つは、多くのモーションセンサーで採用されているパッシブ赤外線(PIR)センサーだ。これは、人や動物が発する赤外線、つまり熱の変化を捉えることで動きを検知する技術である。そしてもう一つが、レーダー技術だ。レーダーは電波を発射し、物体から跳ね返ってきた電波を分析することで、その物体の位置や動き、大きさを把握する。PIRセンサーが熱に反応するのに対し、レーダーは物理的な物体の動きを捉えるため、両者を組み合わせることで、それぞれの弱点を補い合うことができる。このシステムにより、人間や車両といった監視対象と、それ以外の無関係な動きとを高い精度で区別し、誤報を大幅に削減することが可能になる。
EufyCam S4は単体でも高性能なカメラだが、別売りのハブ装置「HomeBase S380」と連携させることで、その能力をさらに拡張できる。これは、個々のデバイス(エッジデバイス)と中央処理装置(ハブ)が連携する、分散システムの好例と言える。HomeBase S380は、「BionicMind」と名付けられたEufy独自のAI技術を搭載している。このAIは、カメラが捉えた人物の顔を分析し、事前に登録しておいた家族や友人の顔と照合する顔認識機能を提供する。その精度は99.9%とされており、これにより「登録されていない不審な人物が映った時だけ通知する」といった、より高度で知的なセキュリティ運用が可能になる。さらに、HomeBase S380はデータストレージとしての役割も果たす。撮影された映像データは、インターネット上のクラウドサーバーではなく、この手元にあるHomeBase S380内に直接保存される(ローカルストレージ)。この方式には、月額のクラウド利用料が不要になる経済的なメリットに加え、映像データが外部に送信されないため、プライバシー保護の観点からも非常に重要である。ストレージ容量は最大16TBまで拡張可能で、長期間の録画データを安心して保存できる。
屋外設置機器にとって、電源の確保は常に重要な課題だ。EufyCam S4は、この問題を解決するために、ソーラーパネルと充電式バッテリーを組み合わせたハイブリッド電源システムを採用している。カメラ本体には5.5ワットのソーラーパネルが内蔵されており、直射日光が1時間当たるだけでカメラをフル充電できるほどの高い発電効率を持つ。これにより、配線工事が不要で、日当たりの良い場所であれば自己完結的に電力を賄い、継続的に稼働させることができる。特筆すべきは、このソーラーパネルが取り外し可能である点だ。カメラの設置に最適な場所と、太陽光を最も効率的に受けられる場所が異なっていても、パネルだけを分離して日当たりの良い場所に設置し、ケーブルでカメラ本体に接続することができる。これにより、設置場所の自由度が大幅に向上する。また、内蔵の充電式バッテリーも搭載しているため、曇りや雨の日が続いて太陽光発電ができない場合でも、カメラの動作が停止することはない。このように、複数の電源ソースを組み合わせることで、システムの安定稼働を確保する冗長性の考え方が取り入れられている。
このEufyCam S4は、複数のカメラとセンサーというハードウェア、そしてそれらを制御し、物体追跡や誤報削減を実現するソフトウェア、さらにAIによる高度な画像認識や、効率的なエネルギー管理システムまで、多様な技術要素が緻密に統合された製品だ。一つの目的を達成するために、いかにして複数の技術を組み合わせ、システムとして機能させるかという、システムエンジニアリングの面白さが詰まった一例と言えるだろう。