【ITニュース解説】【Fauna】夢の次世代データベースFaunaDBのソースコードが公開されていた
2025年09月01日に「Qiita」が公開したITニュース「【Fauna】夢の次世代データベースFaunaDBのソースコードが公開されていた」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
高性能な次世代データベースとして注目されたFaunaDB。SQLが使えず独自言語の学習が必要な点が導入の障壁となりサービスは終了したが、その全ソースコードが公開され、誰でも利用できるようになった。(118文字)
ITニュース解説
Webサービスやアプリケーションを開発する上で、データを保存し管理するための「データベース」は欠かせない存在だ。ユーザー情報や商品の在庫、投稿された記事など、あらゆるデータがデータベースに格納されている。近年、インターネットの普及により、世界中のユーザーが利用する大規模なサービスが増え、それに伴いデータベースにも新たな性能が求められるようになった。そんな中、次世代のデータベースとして大きな注目を集めたのが「FaunaDB」である。最近、このFaunaDBの根幹をなす技術であるソースコードが公開されたというニュースが話題となった。これは、システムエンジニアを目指す上で、技術の進化とビジネスの現実を学ぶ上で非常に興味深い出来事だ。
FaunaDBが「夢の次世代データベース」とまで呼ばれた理由は、従来のデータベースが抱える課題を解決する、いくつかの画期的な特徴を持っていたからだ。その一つが「グローバルなスケーラビリティ」である。これは、サービスが世界的に拡大し、利用者が急増しても、システムを停止させることなく柔軟に対応できる能力を意味する。従来のデータベースでは、性能を向上させるためにサーバー自体の性能を上げる「スケールアップ」という手法が主流だったが、これには限界があった。一方、FaunaDBはサーバーの台数を増やすことで性能を向上させる「スケールアウト」に優れており、地理的にも世界中のデータセンターにデータを分散配置することができた。これにより、世界中のどこからアクセスしても高速な応答が可能となり、また、特定の地域で障害が発生しても他の地域のサーバーが稼働し続けるため、サービスが停止しにくいという高い信頼性も実現していた。
さらに、FaunaDBの最も革新的な点は「強整合性」をグローバルな分散環境で実現したことにある。データベースにおける「整合性」とは、データの正確さや一貫性が保たれている状態を指す。「強整合性」は、データを書き込んだ直後に、世界のどこからデータを読み出しても必ず最新の値が取得できることを保証する仕組みだ。これは銀行の残高照会のように、一瞬のデータのズレも許されないシステムでは必須の要件である。しかし、データを世界中に分散させると、全てのサーバーに瞬時に同じデータを反映させることは物理的に難しく、一般的にはデータの反映に少し時間がかかる「結果整合性」という仕組みが採用されることが多い。FaunaDBは、この技術的な常識を覆し、グローバルな分散環境でありながら強整合性を保つという、非常に高度な技術を実現していた。この特性は、これまで実現が困難とされてきた、高い信頼性と世界規模の拡張性を両立させるものとして、多くのエンジニアから期待を集めた。
これほど優れた技術を持っていたFaunaDBだが、残念ながらビジネスとして成功するには至らず、サービスは終了してしまった。その最大の要因は、導入の敷居の高さにあった。データベースを操作するためには、一般的に「SQL」という標準的な問い合わせ言語が広く使われている。多くのエンジニアがSQLの知識を持っているため、SQLが使えるデータベースは学習コストが低く、導入しやすい。しかし、FaunaDBはSQLに対応しておらず、「FQL (Fauna Query Language)」という独自の言語を習得する必要があった。新しい技術を学ぶことはエンジニアにとって重要だが、プロジェクト全体で採用するとなると、チームメンバー全員が新しい言語を学ぶ必要があり、これは大きな負担となる。技術的にどんなに優れていても、開発者が使いにくい、学びにくいと感じてしまえば、広く普及させることは難しい。この「学習コストの高さ」が、多くの開発者に採用をためらわせる大きな障壁となり、結果として利用者が増えず、収益化に失敗する原因となった。
サービスは終了したが、FaunaDBが開発した革新的な技術が完全に失われたわけではない。その技術の結晶であるソースコードが「オープンソース」として公開されたからだ。オープンソース化されると、誰でも自由にそのソースコードを閲覧、改変、利用することが可能になる。これにより、FaunaDBがどのようにしてグローバルな強整合性を実現していたのか、その複雑な仕組みを世界中の開発者が学ぶことができるようになった。この貴重な技術は、今後、新たなデータベースの開発や、既存のシステムの改良に活かされていくだろう。FaunaDBという一つのサービスは幕を閉じたが、その技術的な遺産はコミュニティによって受け継がれ、未来の技術の発展に貢献する可能性を秘めている。この一連の出来事は、単に優れた技術を開発するだけではビジネスとして成功するとは限らないという、IT業界の厳しい現実を示している。同時に、たとえ一つのプロジェクトが失敗に終わっても、その中で生まれた価値ある技術はオープンソースという形で共有され、次世代へと繋がっていくという、IT業界の持つ文化の素晴らしさも教えてくれる事例と言えるだろう。