【ITニュース解説】Fortinet 製 FortiOS の脆弱性対策について(CVE-2024-55591)
ITニュース概要
Fortinet社のセキュリティOS「FortiOS」に、Web画面で不正なスクリプトが実行される脆弱性(CVE-2024-55591)が発見された。情報漏洩の危険があるため、利用者は速やかに最新バージョンへのアップデートが必要である。
ITニュース解説
Fortinet社が開発するセキュリティ製品の基盤となるオペレーティングシステム、FortiOSにおいて、新たな脆弱性(CVE-2024-55591)が発見された。この脆弱性は、外部の攻撃者によって悪用された場合、組織のネットワークに深刻な被害をもたらす危険性があるため、迅速な対応が求められている。システムエンジニアを目指す者にとって、このようなセキュリティに関する情報を正確に理解し、適切に対処する能力は、システムの設計や構築と同様に極めて重要なスキルとなる。 まず、FortiOSがどのような役割を担うシステムであるかを理解することが重要だ。FortiOSは、主にFortinet社の「FortiGate」というネットワークセキュリティ製品に搭載されている。FortiGateは、ファイアウォール、VPN、アンチウイルス、侵入防止システムなど、複数のセキュリティ機能を一つの機器に統合した製品であり、UTM(Unified Threat Management:統合脅威管理)や次世代ファイアウォールと呼ばれる。企業の社内ネットワークとインターネットの境界に設置され、外部からのサイバー攻撃や不正なアクセスを防ぎ、内部の重要な情報資産を保護する「門番」の役割を果たしている。したがって、このFortiOSに脆弱性が存在するということは、企業のネットワーク全体の安全性を根底から揺るがす重大な問題となる。 今回報告された脆弱性CVE-2024-55591は、FortiOSが提供するSSL-VPN機能に存在する、ヒープベースのバッファオーバーフローと呼ばれる種類のものである。これを理解するために、各用語を解説する。SSL-VPNは、インターネットのような公衆網を経由して、社内ネットワークへ安全にリモートアクセスするための技術であり、特にテレワークの普及に伴い広く利用されている。一方、バッファオーバーフローとは、プログラムがデータを処理する際に発生しうる重大な欠陥の一つだ。プログラムは、処理対象のデータを一時的に保存するために「バッファ」という一定サイズのメモリ領域を確保する。しかし、プログラムの設計に不備があると、このバッファが想定しているサイズを超える量のデータが外部から送り込まれた際に、データがバッファから溢れ出てしまう現象が発生する。これがバッファオーバーフローである。特に「ヒープベース」とは、プログラムが実行中に動的に確保するメモリ領域(ヒープ領域)でこの問題が起こることを指す。溢れ出たデータは、隣接するメモリ領域に書き込まれ、そこに格納されていた他の重要なデータを破壊したり、プログラムの正常な動作を妨げたりする。最も危険なのは、攻撃者がこの現象を意図的に利用し、溢れさせるデータの中に悪意のあるプログラムコードを紛れ込ませることだ。これにより、攻撃者はシステム上で任意の命令を実行する権限を奪取できてしまう可能性がある。 この脆弱性が悪用された場合、攻撃者は正規のIDやパスワードによる認証を回避して、脆弱なFortiGate機器に不正にアクセスし、システムを完全に制御下に置くことが可能になる。FortiGateはネットワークの境界を守る要であるため、一度ここを突破されると、攻撃者は社内ネットワークへ自由に侵入できる状態となる。その結果、社内サーバーに保管されている顧客情報や財務データ、開発中の製品情報といった機密データを窃取したり、社内のコンピューターを人質にとって身代金を要求するランサムウェアを感染させたり、さらにはその企業を踏み台として別の組織へのサイバー攻撃を仕掛けたりするなど、被害は甚大かつ多岐にわたる可能性がある。特にSSL-VPN機能は、外部からアクセスされることを前提としているため、攻撃の標的になりやすいという特徴がある。 このような深刻な事態を未然に防ぐため、システム管理者は速やかに対策を講じる必要がある。最も重要かつ根本的な対策は、Fortinet社が提供する、この脆弱性を修正したバージョンのファームウェアにアップデートすることである。製品開発元は、問題が発見されると修正プログラムを開発し、新しいバージョンとして公開する。これを適用することで、脆弱性の原因そのものを取り除くことができる。システム管理者は、まず自社で運用しているFortiGateのFortiOSがどのバージョンであるかを確認し、今回発見された脆弱性の影響を受ける対象であるかどうかを正確に判断しなければならない。バージョンの確認は、Webブラウザ経由の管理画面や、コマンドラインを用いた操作によって行うことができる。影響を受けるバージョンを使用していることが判明した場合は、業務への影響を最小限に抑えるよう計画を立てた上で、可能な限り速やかにアップデート作業を実施すべきである。もし、何らかの事情ですぐにアップデートを行うことが難しい場合には、一時的な「回避策」を適用することも検討する。例えば、脆弱性が存在するSSL-VPN機能自体を一時的に無効化する、あるいは信頼できる特定の送信元IPアドレスからのみアクセスを許可するよう設定を厳格化するといった措置が考えられる。ただし、これらの回避策は攻撃を受けるリスクを低減させるための一時しのぎに過ぎず、脆弱性そのものはシステム内に残存していることを忘れてはならない。したがって、最終的には必ずアップデートを行い、問題を根本的に解決することが不可欠である。 今回の脆弱性に関する一連の動向は、システムエンジニアの役割が、単にシステムを構築するだけでなく、その後の運用・保守、そしてセキュリティの維持にまで及ぶことを明確に示している。脆弱性は日々新たに発見されるため、自らが管理するシステムに関するセキュリティ情報を常に収集・分析し、リスクを評価した上で、迅速かつ的確な対応を講じる一連のサイクルを実践する能力は、現代のエンジニアに必須の資質と言える。IPA(情報処理推進機構)やJPCERT/CCといった公的機関、そして利用製品のベンダーが発信する最新のセキュリティ情報を定期的に確認する習慣を身につけ、安全なシステム運用を継続していくことが強く求められる。