【ITニュース解説】フロントエンドのモジュールを共有する手法を考える
2025年09月04日に「Zenn」が公開したITニュース「フロントエンドのモジュールを共有する手法を考える」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
サイボウズのkintoneは、フロントエンド刷新でモノリス構成から脱却し、チームごとのMonorepoで開発を進めている。複数のプロダクトやチーム間でフロントエンドのモジュールを共有する際、ビルド時間やファイルサイズの肥大化が課題となる。Webpack Module Federationなどの技術を用いて、これらの課題を解決し、効率的なモジュール共有を実現する方法を検討している。
ITニュース解説
この記事は、サイボウズのkintoneというプロダクトにおけるフロントエンド刷新の取り組み、特にモジュール共有というテーマについて解説している。システムエンジニアを目指す初心者向けに、その背景、課題、具体的な手法について詳しく説明する。
kintoneのフロントエンド刷新は、従来のモノリスな構成から脱却し、より柔軟で効率的な開発体制を築くことを目的としている。モノリスな構成とは、すべての機能が一体となった巨大なシステムであり、変更や拡張が難しく、開発速度が低下しやすいという課題がある。刷新では、「フロントエンドにAutonomyをもたらす」という目標を掲げ、チーム単位での開発を促進し、各チームが独立して開発を進められるようにすることを目指している。
そのために、アーキテクチャとチーム体制をセットで考え、チーム単位のMonorepo(モノレポ)を採用している。Monorepoとは、複数のプロジェクトやライブラリを一つのリポジトリで管理する手法であり、チーム間のコード共有や依存関係の管理が容易になる。各チームがMonorepo内で担当するモジュールのオーナーシップを持ち、責任範囲を明確にすることで、開発効率の向上と品質の維持を目指している。
しかし、Monorepo環境でも、モジュールを共有する方法を誤ると、結合度が高まり、変更の影響範囲が広がるという課題が生じる。特に、kintoneのような大規模なプロダクトでは、複数のチームが同じモジュールを利用することが多いため、モジュール間の依存関係を適切に管理する必要がある。
記事では、モジュール共有における課題を解決するためのパターンとして、大きく分けて「コンポーネント共有」と「ロジック共有」の2つを挙げている。
コンポーネント共有とは、UI(ユーザーインターフェース)部品のような再利用可能なコンポーネントを共有する方法である。例えば、ボタンや入力フォーム、テーブルなどのUI要素を共通のライブラリとして提供し、各チームがそれを組み合わせて画面を構築する。コンポーネント共有のメリットは、UIの一貫性を保ちやすく、開発効率を向上させることができる点である。しかし、コンポーネントの設計が不適切だと、柔軟性が損なわれ、各チームのニーズに合わなくなる可能性がある。
ロジック共有とは、ビジネスロジックやデータ処理のような機能を共有する方法である。例えば、日付のフォーマット変換や数値計算、APIとの通信処理などを共通のライブラリとして提供し、各チームがそれを呼び出して利用する。ロジック共有のメリットは、コードの重複を減らし、保守性を向上させることができる点である。しかし、ロジックが複雑になると、依存関係が複雑になり、変更の影響範囲が広がる可能性がある。
記事では、これらの課題を解決するために、具体的な実装パターンとしていくつかの手法を紹介している。例えば、コンポーネント共有においては、デザインシステムを導入し、UIコンポーネントの標準化を図る方法や、コンポーネントのprops(プロパティ)を柔軟に設計し、各チームのニーズに対応できるようにする方法などを提案している。また、ロジック共有においては、関心の分離(SoC)を意識し、ロジックを小さく分割し、疎結合にすることで、変更の影響範囲を局所化する方法や、イベント駆動アーキテクチャを採用し、モジュール間の依存関係を間接的にする方法などを提案している。
さらに、共有モジュールのバージョン管理やテスト戦略についても言及している。共有モジュールは、複数のチームが利用するため、変更を行う際には慎重な検討が必要となる。バージョン管理を適切に行い、破壊的な変更(互換性を損なう変更)を行う場合には、事前に周知徹底し、移行期間を設けるなどの対策が必要となる。また、共有モジュールのテストは、単体テストだけでなく、結合テストやE2Eテスト(エンドツーエンドテスト)も実施し、品質を確保することが重要である。
この記事を読むことで、システムエンジニアを目指す初心者は、大規模なフロントエンド開発におけるモジュール共有の重要性、課題、具体的な手法について理解を深めることができる。特に、Monorepo環境における開発、コンポーネント共有とロジック共有の違い、関心の分離、バージョン管理、テスト戦略など、実践的な知識を習得することができるだろう。これらの知識は、将来的に大規模なシステム開発に携わる際に、必ず役に立つはずだ。