【ITニュース解説】富士電機製FRENIC-Loader 4における信頼できないデータのデシリアライゼーションの脆弱性

2025年09月03日に「JVN」が公開したITニュース「富士電機製FRENIC-Loader 4における信頼できないデータのデシリアライゼーションの脆弱性」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

富士電機製のFRENIC-Loader 4に、信頼できないデータを処理するデシリアライゼーションの脆弱性が見つかった。この脆弱性が悪用されると、システムが不正に操作される危険性がある。

ITニュース解説

富士電機が提供するFRENIC-Loader 4は、産業分野で広く利用されるインバータという機器の設定や監視を行うためのソフトウェアである。インバータはモーターの回転速度などを制御する重要な装置であり、工場やプラントにおいて生産ラインの効率化や省エネルギー化に貢献する。FRENIC-Loader 4は、このインバータとパソコンを接続し、専門的なパラメータの変更、運転状況のモニタリング、故障診断などを可能にするツールで、産業システムの安定稼働を支える基盤となっている。

ソフトウェアがデータを処理する際、多くの場合はメモリ上で特定のデータ構造やオブジェクトとして情報が保持される。しかし、この情報をファイルとして保存したり、ネットワークを通じて別のシステムに送ったりする場合には、メモリ上の形そのままでは扱えない。そこで、データを一時的に特定の形式、例えばバイトの並び(バイト列)に変換する操作が必要となる。この変換プロセスをシリアライゼーションと呼ぶ。シリアライゼーションされたデータは、ディスクに保存したり、ネットワーク経由で送信したりするのに適した形になる。そして、送信されたデータや保存されたデータを元のデータ構造やオブジェクトの形に戻す操作がデシリアライゼーションである。これは、データを箱に詰めて送り、受け取った側がその箱を開けて中身を元の形に組み立て直すような処理に例えることができる。

通常、ソフトウェアはデシリアライゼーションを通じて、受け取ったデータを問題なく処理することを想定している。しかし、ここで問題となるのが「信頼できないデータ」の存在である。信頼できないデータとは、プログラムが想定していない、あるいは悪意を持って改ざんされたデータのことである。例えば、外部の不特定多数から受け取るデータや、ネットワーク経由で送られてくるが送信元が不明なデータなどがこれに該当する。もし、このような信頼できないデータの中に、プログラムにとって有害な命令やコードが埋め込まれていた場合、デシリアライゼーションの処理中にその悪意のある命令が実行されてしまう可能性がある。これが「信頼できないデータのデシリアライゼーションの脆弱性」である。

この脆弱性が悪用されると、攻撃者はデシリアライズされるデータの中に、任意のプログラムを実行させるためのコードを仕込むことができる。例えば、システムの管理者権限を奪う命令や、重要な情報を外部に送信する命令、あるいはシステム全体を停止させる命令などが考えられる。FRENIC-Loader 4のような産業用制御システムに深く関わるソフトウェアの場合、この脆弱性が悪用されれば、工場内のインバータの設定が勝手に変更されたり、モーターが誤動作したり、最悪の場合、生産ライン全体の停止や物理的な損害に繋がる可能性も否定できない。これは単なる情報漏洩にとどまらず、現実世界の物理的な影響を及ぼしかねない極めて深刻な問題となる。

この脆弱性の事例は、システム開発においてセキュリティを最初から考慮することの重要性を浮き彫りにする。特に、外部からの入力を扱う際には、そのデータが信頼できるものか、悪意ある内容を含んでいないかを常に厳しく検証する習慣が求められる。単にデータ形式が正しいだけでなく、内容自体に危険がないかを確認する「入力値検証」の徹底は、あらゆるソフトウェア開発において基本中の基本と言える。また、デシリアライゼーションを行う際には、安全なデシリアライゼーションライブラリの利用や、デシリアライズするデータの種類を厳密に制限するといった対策が有効である。今回の脆弱性も、製品のバージョンアップやパッチの適用によって対処されるため、利用者は常に最新のセキュリティ情報を確認し、適切なアップデートを行うことが重要となる。システムエンジニアを目指す者は、このような脆弱性のメカニズムを理解し、安全なシステムを設計・構築するための知識と意識を常に持ち続ける必要がある。