【ITニュース解説】Go, C, and ASM to make an online game between an N64 and PS1

2025年09月03日に「Reddit /r/programming」が公開したITニュース「Go, C, and ASM to make an online game between an N64 and PS1」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

N64とPS1間でオンラインゲームを作るプロジェクトが公開された。Goでサーバーを構築し、Cやアセンブリでカーネルを操作、USB通信などを活用。異なる古いゲーム機同士を接続する技術を多様な言語で実現する。

ITニュース解説

このニュースは、ニンテンドー64(N64)とプレイステーション1(PS1)という、本来はオンライン通信機能を持ち合わせていない異なる種類のゲーム機同士で、インターネットを介したオンライン対戦ゲームを可能にするという、非常に野心的なプロジェクトについて報じている。現代のシステムエンジニアを目指す人にとって、この試みはソフトウェアとハードウェアがどのように連携し、いかにして複雑なシステムが構築されるかを学ぶための優れた事例となる。

N64とPS1は、どちらも1990年代に登場したゲーム機であり、現在の高速インターネットが普及する以前の時代に開発された。そのため、両者ともネットワーク接続機能は標準搭載されておらず、それぞれが全く異なるハードウェア構造と独自のオペレーティングシステム(OS)を持っている。CPUの種類やデータ処理方式、グラフィック描画の方法、さらにはゲームデータを保存するメディアまで異なるため、一方のゲーム機で動作するゲームをもう一方のゲーム機で遊ぶことはできず、ましてや異なるゲーム機間で直接通信してオンライン対戦を実現することは、通常は不可能だと考えられている。

このプロジェクトでは、このような技術的な壁を乗り越えるために、Go言語、C言語、そしてアセンブリ言語(ASM)という、それぞれ特性の異なる複数のプログラミング言語を巧みに組み合わせて利用している。それぞれの言語が、システム全体の中で重要な役割を担っているのだ。

Go言語は、主にサーバーサイドの処理を担当している。これは、ゲーム機から送られてくる情報をリアルタイムで受け取り、ゲームの進行状況を管理し、再びゲーム機へと結果を返す「中央サーバー」のような役割だ。Go言語は、現代のプログラミングにおいて、特にネットワーク通信を伴うシステムや、複数の処理を効率的に同時に行う(並行処理)必要がある場面でよく使われる。このプロジェクトでは、N64やPS1といった古いゲーム機から送られてくる多様なデータをインターネット上で処理し、異なるゲーム機間でゲームの状態を正確に同期させるために、Go言語による堅牢なサーバーが不可欠となる。Go言語は、異なるゲーム機からの通信を円滑に仲介し、全体を統括する役割を担っていると言える。

次に、C言語だ。C言語は、オペレーティングシステム(OS)の開発や、ハードウェアを直接制御するプログラム(組み込みシステムやファームウェアなど)を書く際に広く利用される、比較的「低レベル」寄りのプログラミング言語である。このプロジェクトでは、N64にUSB通信機能を追加するためのプログラムや、Raspberry Pi Picoという小型のマイコンボード上で動作するファームウェアの開発にC言語が使われている。例えば、N64のコントローラーの入力情報や、ゲーム内のキャラクターの位置データといったゲーム機内部の情報を、USB経由で外部の機器に送信できるようにするためには、ゲーム機のハードウェアに近い部分をC言語で細かく制御する必要がある。Raspberry Pi Picoは、このような古いゲーム機と、Go言語で構築された現代のサーバーとの間に立ち、ゲーム機から送られてくる電気信号や、特定の形式のデジタルデータを、サーバーが理解できる形に変換して送受信する「橋渡し役」を果たしている。

そして、最も「低レベル」なプログラミング言語が**アセンブリ言語(ASM)**だ。アセンブリ言語は、CPU(中央演算処理装置)が直接理解する機械語とほぼ一対一に対応しており、CPUに直接命令を出すことで、ハードウェアを究極的に精密に制御することを可能にする。このプロジェクトでは、PS1の「カーネルをハイジャックする」という部分で、C言語とアセンブリ言語が使われている。カーネルとは、OSの最も基本的な部分であり、ハードウェアの管理、プログラムの実行、メモリの割り当てなど、システムの中核をなす機能を提供している。PS1はもともとインターネット通信機能を備えていないため、ゲーム機本体から直接ネットワーク通信を行う機能を追加するには、カーネルの挙動を根本から変更するか、新しい機能を挿入する必要がある。アセンブリ言語を使用することで、PS1のCPUに対し、その本来の設計にはないネットワーク通信機能を実現させるための、極めて細かな命令を直接与えているのだ。これは非常に高度な技術であり、PS1のハードウェア構造とシステムの動作原理に対する深い理解がなければ実現できない。

このシステムがどのように動作するかを具体的に想像してみよう。N64とPS1の各ゲーム機には、それぞれ特殊なハードウェア拡張と、それを制御するカスタムソフトウェアが導入されていると推測できる。N64側では、C言語で書かれたファームウェアを搭載したRaspberry Pi Picoのようなデバイスが、ゲーム機のデータ(例えばコントローラーのボタン入力やキャラクターの動き)をUSB経由で読み取り、Go言語で構築された中央サーバーに送信する。PS1側では、C言語とアセンブリ言語で書かれた「カーネルハイジャック」のコードが、ゲーム機本体の内部から直接、あるいは追加されたネットワークインターフェースを通じてGoサーバーと通信する。Goサーバーは、これら両方のゲーム機から送られてくる情報をリアルタイムで受け取り、ゲームの状態を同期させ、お互いのゲーム機にその結果(例えば相手のキャラクターの動き)をフィードバックする。これにより、異なるゲーム機を使用しているにもかかわらず、まるで同じ空間でプレイしているかのようなオンライン対戦が実現するのだ。

このプロジェクトは、システムエンジニアを目指す皆さんにとって、多くの重要な学びをもたらす。一つには、異なる時代の技術や、異なる性質を持つハードウェア・ソフトウェアを組み合わせることで、いかにして新しい価値が生まれるかという点だ。次に、Go、C、アセンブリ言語という、それぞれ得意とする領域が全く異なるプログラミング言語が、一つの大きな目標達成のためにいかに協力し合っているかという点も重要だ。高レベルな言語で全体のロジックを組み上げつつ、低レベルな言語でハードウェアの限界に挑戦するというアプローチは、複雑なシステム開発における典型的な手法である。

このニュースは、システムエンジニアとして、ハードウェアの知識、OS(オペレーティングシステム)の知識、ネットワークの知識、そして様々なプログラミング言語の知識が、現代の技術課題を解決するためにいかに不可欠であるかを教えてくれる。そして何よりも、既存の制約にとらわれず、技術的な課題に対して創造的に挑戦する姿勢が、不可能だと思われたことを可能にする原動力となることを示しているのだ。

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