【ITニュース解説】How to use GPT for natural language querying
2025年09月04日に「Dev.to」が公開したITニュース「How to use GPT for natural language querying」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
GPTは、ユーザーが入力した自然な言葉を解析し、JSONなどの構造化データへ変換する。この技術で、複雑なフォームやUIの自動生成、業務プロセスの定義、データベースの自然言語検索、データ可視化などが可能になり、システム開発の効率と柔軟性が大きく向上する。
ITニュース解説
多くのアプリケーションでは、ユーザーからの入力を、フォームやプルダウンメニュー、厳密な入力規則といった、コンピュータが理解しやすい構造化された形式に限定する必要がある。しかし、人間は普段、自由な言葉、つまり自然言語で思考し、表現する。このギャップは、ユーザーにとって入力の煩わしさとなり、情報の伝達を妨げることがある。そこで、GPTのような大規模言語モデルが、この課題を解決する重要な役割を果たす。GPTは、ユーザーが入力した自然言語の情報を、コンピュータが扱いやすい、整理された構造化データへと変換する能力を持つ。これにより、ユーザーはより自然に情報を伝えられ、開発者はその情報を効率的にシステムで利用できるようになる。
具体的な例として、GPTを使ってレシピの情報を構造化することが挙げられる。通常、レシピは文章で書かれているが、コンピュータが直接理解し、例えば材料の在庫管理や調理手順の自動化に利用するのは難しい。そこで、材料や手順、それぞれの依存関係(この手順を行うにはどの材料や前の手順が必要かなど)を明確に定義した「JSONスキーマ」という設計図を用意する。JSONは、Webアプリケーションで広く使われる、情報を整理して記述するためのデータ形式だ。GPTには、このJSONスキーマと実際のレシピの文章の両方を渡し、そのスキーマに沿ってレシピ情報をJSON形式で出力するよう指示する。例えば、「オリーブオイル1杯」という文章から、材料名「オリーブオイル」、量「1 tbsp」といった情報を抽出し、それぞれにIDを割り振る。さらに、「ベーコンを炒める」という手順には「オリーブオイル」が必要であり、「ベーコンを炒める」のは「フライパンを準備する」手順の後に行う、といった依存関係も抽出してJSONに含める。もし最初に得られた結果が期待通りでなくても、GPTに「ステップ8は他のステップに依存しないので、JSONを修正してください」のように追加の指示(フォローアッププロンプト)を与えることで、出力を調整できる。
この技術は他の多くの場面でも応用可能だ。例えば、企業内の業務の流れを示す「ビジネスプロセス」を自然言語で記述し、それを「BPMN(ビジネスプロセスモデリング表記法)」という国際標準の形式のXMLファイルに変換できる。BPMNは、業務プロセスを図として表現するためのもので、Camundaのような専門ツールで利用可能だ。また、ユーザーがテキストで「こんなフォームが欲しい」と要望するだけで、入力欄の種類や検証ルール(例えば、電話番号は数字のみ、といった制約)が定義されたJSONデータが生成され、そこから自動的にWebフォームを構築することも可能だ。これはreact-jsonschema-formのようなライブラリと組み合わせることで実現する。さらに、特定のコンポーネント(部品)のリストとそれぞれの機能(プロパティ)をGPTに教えることで、ユーザーの要望に応じてWebページのレイアウトや要素の配置を記述するJSONを生成し、動的なユーザーインターフェース(UI)を構築する応用も考えられる。
他にも、ユーザーが普段の言葉で「最も高価で、現在購入可能で、おすすめ品ではない製品をリストアップしてほしい」と尋ねるだけで、データベースから情報を検索するための「ElasticSearchクエリ」という、特定の形式の検索命令を自動生成できる。これにより、専門的なクエリ言語を知らないユーザーでも、必要な情報を引き出せるようになる。ただし、この用途ではセキュリティ上の注意が必要だ。同様に、データの可視化においても、ユーザーが「各銘柄の時系列での株価推移を折れ線グラフで見たい」といった要望を伝えるだけで、グラフの描画方法を記述する「Vega-Lite」というJSON形式の定義を生成し、それを基にチャートを自動描画することもできる。
しかし、GPTを実用的なシステムに組み込む際には、いくつか重要な考慮点がある。
まず、「信頼性」を確保するため、GPTの応答は常に検証する必要がある。GPTが出力したJSONやXMLが、あらかじめ定義したスキーマ(設計図)に正しく合致しているか、「バリデータ」と呼ばれるツールで自動的にチェックする。期待通りの結果が得られない場合は、再度プロンプトを送り直す(リトライ)ことで解決することもある。
次に、「複雑さ」への対応だ。GPTが一度に処理できる情報の量には限界がある。非常に複雑な指示を一度に与えると、情報を見落としたり、文脈を失ったりすることがある。そのため、大きなタスクは「プロンプトエンジニアリング」という手法を用いて、小さく論理的なステップに分割してGPTに指示を出すのが効果的だ。例えば、まずレシピの文章を手順ごとに分解させ、次にその手順を特定のJSONスキーマに沿って構造化させる、といった段階的なアプローチが考えられる。
「パフォーマンス」も重要な要素だ。GPTによる応答の生成は、現在のところ時間がかかる場合が多い。将来的にハードウェアの進化で改善されることが期待されるが、現状では、ユーザー体験(UX)を損なわないよう工夫が必要となる。処理が完了するまで待機状態を表示したりするが、JSON全体のように完全な出力が必要な場合は、この方法は難しい。
「コスト」の管理も重要だ。特に高性能なGPT-4のようなモデルを利用する場合、大規模な運用ではかなりの費用がかかる可能性がある。長期的に見ればコストは下がるだろうが、当面は、GPTに渡す入力データを事前に可能な限り絞り込むなど、前処理を工夫してGPTの利用量を抑えることが費用を節約する賢明な方法となる。
また、「信頼性」をさらに高めるためには、多様なユーザー入力に対応できるよう「ファインチューニング」が必要となる。開発者は特定のユースケースを想定してプロンプトを作成しがちだが、実際にユーザーがどのような表現を使うかは予測が難しい。そのため、様々な入力データで徹底的にテストし、必要に応じてプロンプトを改善していくことが重要だ。
最後に、セキュリティ上の懸念として、「プロンプトインジェクションリスク」がある。ユーザーが悪意のある指示をプロンプトに含めることで、予期せぬ動作をさせたり、機密情報を引き出したりする可能性がある。そのため、GPTの応答は常に検証し、システムへの影響がないか慎重に確認する必要がある。
これらの経験から、GPTをデータ解析に利用するためのシンプルなフレームワークが導き出される。それは、まず「どのような形式のデータが欲しいか」というスキーマを明確に定義し、必要に応じて「利用可能なフィールドの詳細」を伝え、次に「処理対象の入力データ」を与え、最後に「応答はJSONのみ」のように出力形式に関する重要な詳細を強調することだ。GPTは、単にAI主導の全く新しいアプリケーションを開発するためだけでなく、既存のシステムに組み込むことで、ユーザーの生産性を大きく向上させる可能性を秘めている。