【ITニュース解説】第60回 grubテーマの遊び方(その1)

2025年04月25日に「Gihyo.jp」が公開したITニュース「第60回 grubテーマの遊び方(その1)」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

Linuxが起動する際のメニュー画面「grub」の見た目をカスタマイズする方法を紹介。情報が少ないテーマ設定ファイルの書き方を、画面デザインを一新した経験を基に具体的に解説する。初心者でも独自の起動画面を作成できる。

ITニュース解説

コンピュータの電源を入れると、普段使っているWindowsやLinuxといったオペレーティングシステム(OS)が起動する。この一連の過程で、OSが動き出す前に重要な役割を担っているのが「ブートローダー」と呼ばれるソフトウェアである。Linuxディストリビューションで標準的に採用されているブートローダーが「GRUB(Grand Unified Bootloader)」だ。GRUBは、コンピュータに複数のOSがインストールされている場合に、どのOSを起動するかを選択するためのメニュー画面を表示する機能を持つ。このメニュー画面の見た目を、背景画像や文字色、レイアウトなどを自由にカスタマイズできる機能が「GRUBテーマ」である。

GRUBテーマをカスタマイズすることで、コンピュータの起動画面を自分好みのデザインに変更することが可能になる。デフォルトの簡素なテキスト表示から、好きな壁紙を背景にしたグラフィカルなメニュー画面へと変えることができるのだ。このカスタマイズは、「theme.txt」という名前のテキストファイルに設定を記述していくことで行う。このファイルは、画面を構成する様々な要素(コンポーネント)の見た目や配置を定義する設計図の役割を果たす。

「theme.txt」の中では、画面上のあらゆる部品がコンポーネントとして扱われる。例えば、OSの選択肢が並ぶメニューリストは「+ boot_menu」、特定のテキストを表示するための部分は「+ label」、起動までの残り時間を示すプログレスバーは「+ progress_bar」といった具合に、それぞれのコンポーネントが定義される。そして、各コンポーネントに対して、その位置、サイズ、色、フォントなどの詳細な属性(プロパティ)を設定していく。

プロパティの指定方法は非常に直感的である。例えば、画面の左からの位置は「left」、上からの位置は「top」、横幅は「width」、高さは「height」で指定する。これらの値は、ピクセル単位の絶対値で指定することも、画面全体に対するパーセンテージ(%)で指定することもできる。これにより、異なる解像度のディスプレイでもレイアウトが崩れにくいテーマを作成することが可能だ。また、文字の色は「color」、フォントの種類は「font」、表示するテキスト内容は「text」といったプロパティで設定する。OSの選択メニューであれば、通常時の文字色「color」と、カーソルが合わさって選択されている項目の文字色「selected_color」を別々に指定することで、視覚的に分かりやすいメニューを作ることができる。

背景画像を設定する場合は、テーマ全体に関わる設定として「desktop-image」プロパティを使用し、表示したい画像ファイルへのパスを記述する。画像ファイルは、PNGやJPG、TGA形式に対応しており、テーマファイル一式と同じディレクトリに配置しておくのが一般的だ。このように、「theme.txt」にコンポーネントとそのプロパティを記述し、必要な画像やフォントファイルを揃えることで、一つのGRUBテーマが完成する。

しかし、このGRUBテーマの作成は、初心者にとって少し難しい挑戦かもしれない。なぜなら、設定ファイルの書き方に関する詳細なチュートリアルや日本語の情報が限られているからだ。公式のドキュメントは存在するものの、専門的な記述が多く、実践的なサンプルを見つけ出すのは容易ではない。そのため、多くの場合、既存のテーマを参考にしたり、設定値を少しずつ変更しては再起動して表示を確認するという、試行錯誤を繰り返しながら理想の見た目に近づけていく作業が必要になる。

この作業には注意も必要だ。GRUBはシステムの起動を司る根幹部分のソフトウェアであるため、設定に誤りがあると、最悪の場合OSが起動しなくなるリスクがある。テーマをカスタマイズする際には、作業前に必ず設定ファイルのバックアップを取ること、そして可能であれば、いきなり実機で試すのではなく、仮想マシンなどの安全な環境でテストすることが強く推奨される。

GRUBテーマのカスタマイズは、システムの表面的な部分だけでなく、OSが起動する前の低レイヤーな領域に触れる貴重な機会となる。設定ファイルの記述を通して、コンピュータがどのように画面を描画し、要素を配置しているのかを学ぶことができる。これは、システムエンジニアを目指す上で、システムの内部構造への理解を深めるための非常に有益な経験となるだろう。困難は伴うが、それを乗り越えて自分だけの起動画面を完成させた時の達成感は大きい。