【ITニュース解説】Interesting 🤔
2025年09月03日に「Dev.to」が公開したITニュース「Interesting 🤔」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
初めてのAIプロジェクトとして、Minimaxアルゴリズムを用いた三目並べをPythonで開発。機械学習ライブラリを使わずAIの動きを実装する方法を解説しており、AI構築の基礎を初心者も学べる。
ITニュース解説
今回のニュース記事は、「初めてのAIプロジェクトとして、Minimaxアルゴリズムを使って三目並べ(Tic Tac Toe)を構築した。この際に機械学習ライブラリは使用していない」という開発者の取り組みを紹介している。これは、システムエンジニアを目指す初心者にとって、AI開発の具体的な第一歩として非常に参考になる情報だ。
まず、「AIプロジェクト」という言葉から考えてみよう。AI(人工知能)とは、人間のように「考える」「判断する」「学習する」といった知的な振る舞いをコンピューターに模倣させる技術の総称である。AIプロジェクトとは、そのAIの技術を使って何か特定の課題を解決したり、特定の機能を実現したりする開発のことだ。今回の例では、三目並べというゲームでコンピューターが人間と対戦し、賢く手を打つことを目指す。
なぜ数あるゲームの中から三目並べが選ばれたのか。三目並べは、〇と×を交互に盤面に置いて、自分の記号を縦・横・斜めのいずれかに3つ並べたら勝ちという非常にシンプルなルールを持つゲームである。しかし、この単純さの中に、相手の動きを予測し、自分の勝ち筋を見つけ、相手の勝ち筋を妨害するという戦略的な要素がしっかりと含まれている。このようなシンプルなルールでありながら、戦略的な思考が必要なゲームは、AIの基本的なアルゴリズムを学習し、実装するのに最適な題材となる。ゲームの盤面の状態が限られており、すべての可能な手の組み合わせを比較的容易に計算できるため、複雑な計算能力を必要とせずにAIの基本原理を理解しやすいのだ。
このプロジェクトの核となっているのが「Minimax(ミニマックス)アルゴリズム」である。Minimaxアルゴリズムは、ゲームAIが最善手を見つけるための古典的で強力な戦略の一つだ。このアルゴリズムは、将来起こりうるすべてのゲームの状態を先読みし、その中で自分にとって最も有利な手を選ぶことを目指す。
Minimaxという名前は、「Minimize(最小化)」と「Maximize(最大化)」という二つの言葉から来ている。具体的には、プレイヤーは自分の得点を「最大化」しようとし、対戦相手はプレイヤーの得点を「最小化」しようとすると仮定する。この考え方に基づいて、ゲームの次の手やそのまた次の手といった未来の展開をツリー(木)構造として描き出す。
まず、現在の盤面から、自分が次に打てるすべての手を考える。それぞれの手に進んだ場合、今度は相手が打てるすべての手を考える。これをゲームが終了するまで繰り返す。各ゲーム終了時の状態(自分が勝つ、負ける、引き分ける)に対して点数をつける。例えば、自分が勝てば高い点数(+1)、負ければ低い点数(−1)、引き分けは中間の点数(0)といった具合だ。
この点数を、ゲーム終了の状態から現在の手番まで逆算して伝播させていく。 相手の手番のときには、相手は自分の点数を最小化するような手を選ぶと仮定して、その中で一番低い点数をその分岐の点数とする(Minimize)。 自分の手番のときには、自分は自分の点数を最大化するような手を選ぶと仮定して、その中で一番高い点数をその分岐の点数とする(Maximize)。 これを繰り返して現在の盤面まで点数を計算し終えたとき、現在から打てる手の中で最も高い点数につながる手が、Minimaxアルゴリズムが導き出す「最善手」となる。つまり、相手が常に最善の手を打ってくることを前提として、その中で自分にとって最も有利な結果を得られる手を選ぶ戦略なのだ。
このアルゴリズムが注目すべきは、「機械学習ライブラリを使わない」で実装された点だ。近年、AIと聞くと「機械学習」や「深層学習」といった技術を思い浮かべることが多いだろう。これらは大量のデータからパターンを学習し、予測や分類を行う。そのため、PythonのTensorFlowやPyTorchといった機械学習ライブラリが頻繁に使われる。しかし、Minimaxアルゴリズムは、データから学習するのではなく、ゲームのルールと戦略的な思考ロジックに基づいて最善手を探す、いわば「ルールベース」のAIである。
機械学習ライブラリを使わずにMinimaxアルゴリズムを実装することは、初心者にとって非常に大きな意味を持つ。ライブラリを使うと、便利な機能がすでに用意されているため、簡単に高度な処理を記述できる反面、その裏側で何が動いているのかが見えにくくなる。一方、ライブラリに頼らずゼロからアルゴリズムを実装することで、Minimaxの各ステップ(ツリー構造の構築、点数の評価、点数の伝播など)を深く理解し、プログラミング言語の基本的なデータ構造や再帰処理といった重要な概念を実践的に学ぶことができるのだ。これは、プログラミングの基礎を固め、アルゴリズム的思考力を養う上で非常に貴重な経験となる。
システムエンジニアを目指す初心者にとって、このようなプロジェクトは最適な学習機会を提供する。複雑なAIシステムを一から構築するのは大変なことだが、三目並べのようなシンプルなゲームから始めることで、AIの基本的な考え方やアルゴリズムの設計、実装方法を段階的に学ぶことができる。この経験を通じて、問題解決能力や論理的思考力、そしてプログラミングスキルを確実に向上させることが可能だ。また、Pythonが使われていることも、初心者が学び始める上でハードルが低いプログラミング言語であるため、学習の敷居を下げている。
このニュース記事が示唆するのは、AI開発は必ずしも最先端の機械学習技術や膨大なデータ、複雑なライブラリを必要とするわけではないということだ。基礎的なアルゴリズムの理解と実装能力があれば、自分自身の力で「賢く」振る舞うプログラムを作り出すことができる。この経験は、将来的にどのような分野のシステムエンジニアになるにせよ、論理的なシステム設計や効率的なコード記述の基盤となる力を育むだろう。小さな一歩が、大きな技術的理解へと繋がることを示す素晴らしい事例と言える。