【ITニュース解説】約26%の企業で生成AI利用不可――IPA、営業秘密管理に関する実態調査を公開

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ITニュース概要

情報処理推進機構(IPA)は、国内企業の営業秘密管理に関する実態調査結果を公開した。この調査で、約26%の企業が生成AIを利用できない状況にあることが判明。情報漏えい対策の重要性と企業の情報セキュリティ課題が浮き彫りになった。

ITニュース解説

情報処理推進機構(IPA)は先日、「企業における営業秘密管理に関する実態調査2024」の結果を公開した。この調査は、国内企業がどのように営業秘密を管理しているか、どれくらいの頻度で漏えいが発生しているか、そしてどのような対策を講じているのかを把握することを目的としている。システムエンジニアを目指す人にとって、情報セキュリティ、特に企業秘密の管理は非常に重要なテーマであり、この調査結果は将来の仕事に直結する内容を含んでいるため、ぜひ理解を深めてほしい。 まず、IPAとは何かを説明する。IPAは「Information-technology Promotion Agency, Japan」の略で、政府の情報政策をITの側面から推進する中心的な組織である。情報セキュリティ対策の推進、IT人材の育成、先端技術に関する調査研究など、IT国家戦略の実現に向けて幅広い活動を展開している。IT業界を目指す者にとって、IPAが公開する各種ガイドラインや情報セキュリティに関する知見は非常に役立つものばかりだ。 次に、「営業秘密」とは何か。これは企業が他の競争相手に差をつけるために、秘密にして管理している重要な情報全般を指す。具体的には、新製品の設計図や製造方法のノウハウ、顧客リスト、開発中の技術、マーケティング戦略、独自の研究データなどが含まれる。これらの情報が外部に漏れてしまうと、企業は多額の経済的損失を被るだけでなく、競争力を失い、最悪の場合、事業の継続が困難になることもある。そのため、企業は営業秘密を厳重に管理し、漏洩を防ぐための対策を講じる必要がある。 今回の調査で特に注目すべき点は、約26%の企業で生成AIの利用が禁止または厳しく制限されているという結果だった。生成AIとは、ChatGPTのようなテキスト生成ツールや、画像生成AIなど、人間の指示に基づいて新しいコンテンツを自動的に作り出す人工知能のことだ。これらのツールは業務の効率化やアイデア創出に大きな可能性を秘めているが、同時に新たな情報セキュリティリスクも生み出しているため、企業は慎重な姿勢を示しているのだ。 なぜ生成AIの利用が制限されるのか。最大の懸念は、企業が保有する機密情報が意図せず生成AIのシステムに取り込まれ、外部に漏洩するリスクがあるためだ。例えば、社員が業務上の機密情報を生成AIに質問として入力した場合、その情報がAIの学習データとして利用されたり、他のユーザーへの回答に間接的に反映されたりする危険性がある。生成AIの利用規約やデータ取り扱いに関する情報が不明瞭な場合も多く、企業としては安易な利用を容認できない状況にある。このような不注意による情報漏洩は、内部犯行や外部からのサイバー攻撃とは異なる新たな脅威として認識されている。 利用を禁止している企業がある一方で、多くの企業では生成AIの活用を模索している段階だ。利用を許可している企業においても、情報漏洩リスクを考慮した厳しいガイドラインを設けていることが多い。具体的には、「機密情報を入力しない」「個人情報を扱わない」「生成された情報の正確性を必ず確認する」といったルールが設けられ、社員に徹底が求められている。しかし、生成AIは比較的新しい技術であるため、セキュリティ対策や社員への教育が十分に追いついていない企業も少なくない。これが、利用禁止という判断につながる一因となっている場合もある。情報漏洩だけでなく、生成された情報の著作権問題、誤情報の生成、倫理的な問題なども企業の懸念事項として挙げられる。 システムエンジニアを目指す人にとって、このIPAの調査結果は非常に重要な意味を持つ。将来、企業でシステム開発や運用に携わる際、必ず企業の営業秘密や顧客の個人情報など、機密性の高い情報を扱うことになるからだ。そのため、情報セキュリティに対する高い意識と知識は、システムエンジニアにとって不可欠なスキルとなる。 生成AIの導入が進む現代において、システムエンジニアは単に便利なツールとしてAIを導入するだけでなく、その潜在的なリスクを正確に評価し、情報漏洩を防ぐためのシステム設計や運用ルールを構築する重要な役割を担うことになる。具体的には、機密情報を保護するためのアクセス制御、データの暗号化、ログ監視といった技術的な対策を講じるだけでなく、社員が安全に生成AIを利用するためのガイドライン作成を支援したり、セキュリティ教育を実施したりすることも重要な業務の一部となる。情報セキュリティの専門家として、常に最新の技術トレンドだけでなく、それに伴うセキュリティリスクや関連法規制の動向にも目を向け、学び続ける姿勢が求められる。 今回のIPAの調査は、現代の企業活動において情報セキュリティ、特に営業秘密の管理がいかに重要であるかを改めて浮き彫りにした。生成AIのような革新的な技術の恩恵を享受しつつ、そのリスクを適切に管理することは、企業の存続と成長に直結する喫緊の課題だ。システムエンジニアとして、この複雑な課題に対応できる専門知識と倫理観を身につけることが、これからのキャリアにおいて極めて重要となるだろう。

【ITニュース解説】約26%の企業で生成AI利用不可――IPA、営業秘密管理に関する実態調査を公開