【ITニュース解説】【基本情報技術者試験向け】エンジニアも知っておきたい財務会計
2025年09月05日に「Qiita」が公開したITニュース「【基本情報技術者試験向け】エンジニアも知っておきたい財務会計」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
基本情報技術者試験で問われる財務会計の要点を解説。会社の財政状態や経営成績を示す財務諸表の読み方や、経営分析の基礎を学べる。試験対策はもちろん、エンジニアがビジネス視点を養いキャリアアップするためにも役立つ知識だ。
ITニュース解説
システム開発に携わるITエンジニアが、企業の経済活動の根幹である財務会計の知識を持つことは、自身のキャリア形成において大きな強みとなる。特に、国家試験である基本情報技術者試験では、ストラテジ系の分野で財務諸表や経営分析に関する問題が出題されるため、基本的な理解が不可欠である。企業の活動はすべてお金の動きと結びついており、エンジニアが開発するシステムも、最終的には企業の利益創出に貢献するための投資活動の一環と位置づけられる。そのため、会計の仕組みを理解することは、自らの業務が企業全体の中でどのような意味を持つのかを把握し、より高い視座で物事を考えるために役立つ。
企業活動の成果を数値でまとめた公式な報告書が財務諸表であり、その中でも特に重要なのが「財務三表」と呼ばれる貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書である。これらは、企業の財政状態や経営成績を異なる側面から明らかにするための書類だ。
まず、貸借対照表(B/S)は、企業の特定の時点における財産状況を示すものである。決算日時点での「スナップショット」と考えると理解しやすい。表は左右に分かれており、左側には企業が保有する資産が、右側にはその資産をどのように調達したかを示す負債と純資産が記載される。資産とは、現金や預金、製品、土地、建物、そしてエンジニアが開発したソフトウェアなども含まれる。一方、負債は銀行からの借入金など、将来返済義務のある他人資本を指す。純資産は、株主からの出資金や過去の利益の蓄積など、返済義務のない自己資本である。このとき、「資産の合計 = 負債の合計 + 純資産の合計」という関係が必ず成り立つ。これは、企業が調達した資金(負債と純資産)が、何らかの資産として運用されていることを示しており、このバランス関係を理解することが貸借対照表を読み解く第一歩となる。
次に、損益計算書(P/L)は、ある一定期間における企業の経営成績、つまりどれだけ儲かったかを示す書類である。貸借対照表が一点のスナップショットであるのに対し、損益計算書は会計期間という幅を持った「ビデオ」のようなものだ。収益から費用を差し引いて利益を計算する構造になっており、段階的に利益が算出される点が特徴である。最も上に記載される「売上高」から、製品の仕入れや製造にかかった「売上原価」を引くと「売上総利益」が求められる。ここから、人件費や広告宣伝費などの「販売費及び一般管理費」を差し引いたものが、企業の本業での儲けを示す「営業利益」である。さらに、本業以外の財務活動などで生じた収益や費用を加減算したものが「経常利益」となり、企業の総合的な収益力を示す指標として重視される。最終的に、一時的な損益や税金を差し引いて、その期間の最終的な利益である「当期純利益」が計算される。
三つ目のキャッシュフロー計算書(C/S)は、一定期間における現金の流れを明らかにする書類である。損益計算書上の利益は、必ずしも手元にある現金の増減と一致しない。例えば、商品は売れたが代金は未回収(売掛金)という場合、利益は発生しても現金は増えていない。このような会計上の利益と実際の現金の動きのズレを補完するのがキャッシュフロー計算書である。現金(キャッシュ)の増減を「営業活動」「投資活動」「財務活動」の三つの区分で表示する。営業活動によるキャッシュフローは本業による現金の増減、投資活動によるキャッシュフローは設備投資や資産売却による現金の動き、財務活動によるキャッシュフローは借入れや返済、増資による現金の出入りを示す。これにより、企業がどの活動で現金を獲得し、何に使っているのかを把握できる。
これらの財務諸表の数値を活用して、企業の経営状態を分析する手法が財務分析である。例えば、収益性を測る指標として自己資本利益率(ROE)があり、自己資本に対してどれだけ効率的に利益を生み出しているかを示す。安全性を測る自己資本比率は、総資本に占める自己資本の割合であり、この比率が高いほど財務的に安定していると評価される。
また、会計の具体的な概念として損益分岐点と減価償却も重要である。損益分岐点とは、売上高と費用が等しくなり、利益がゼロになる点の売上高を指す。これを把握することで、事業が黒字化するために最低限必要な売上目標を設定できる。減価償却は、パソコンやサーバー、ソフトウェアといった長期間使用する固定資産の取得費用を、購入した年に一括で費用計上するのではなく、耐用年数にわたって分割して費用として計上していく会計手続きである。これにより、資産を使用した期間に応じて費用を適切に配分することができる。これらの知識は、エンジニアがプロジェクトの採算性を考えたり、必要なIT投資の費用対効果を説明したりする際にも応用できる、実践的なスキルとなる。