【ITニュース解説】日本のECとECプラットフォームの過去・現在・未来についてGMOペパボ寺井秀明氏に訊く――「カラーミーショップ byGMOペパボ」提供20周年を迎え
2025年03月26日に「Gihyo.jp」が公開したITニュース「日本のECとECプラットフォームの過去・現在・未来についてGMOペパボ寺井秀明氏に訊く――「カラーミーショップ byGMOペパボ」提供20周年を迎え」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
GMOペパボの寺井氏が、ECプラットフォーム「カラーミーショップ」の20周年を機に、日本のEC市場の変遷と未来を語る。専門知識が必要だった時代から、API連携やAI活用が重要となる現在・未来までの技術的な進化と展望について解説する。
ITニュース解説
インターネット上で商品やサービスを売買する電子商取引、いわゆるECは、今や私たちの生活に欠かせないものとなった。このECサイトを個人や企業が手軽に構築・運営できるようにするサービスが「ECプラットフォーム」である。国内で20年の歴史を持つECプラットフォーム「カラーミーショップ」の変遷を辿ることで、日本のEC市場が技術と共にどのように進化してきたか、そしてこれからどこへ向かうのかを理解することができる。システムエンジニアを目指す上で、ECシステムの構造やその発展の歴史を知ることは、現代のWebサービス開発を理解するための重要な視点となる。
2005年頃、ECサイトを立ち上げることは専門的な知識を持つ一部の人々に限られていた。当時は、自分でレンタルサーバーを契約し、HTMLやCSSでウェブページを作成し、PerlやPHPといったプログラミング言語を使って注文処理や在庫管理の仕組みを自作する必要があった。これは、ウェブ開発のスキルを持たない個人商店や中小企業にとって非常に高いハードルだった。この課題を解決したのが、「カラーミーショップ」のようなASP(Application Service Provider)型のECプラットフォームの登場である。ASPとは、事業者が提供するソフトウェアやアプリケーションを、インターネット経由でユーザーが利用するサービス形態を指す。利用者はサーバーの管理や複雑なプログラミングを行う必要がなく、ブラウザ上で必要な情報を入力し、デザインテンプレートを選ぶだけで、自分だけのネットショップを開設できるようになった。このASPという技術モデルの普及が、日本のEC市場の裾野を大きく広げ、誰もがオンラインでビジネスを始められる時代の幕開けとなった。システム的には、サーバーサイドのアプリケーションを多くのユーザーで共有することで、低コストでのサービス提供を実現した点が画期的だった。
2010年代に入ると、スマートフォンの急速な普及がEC市場に大きな変革をもたらした。人々はパソコンの前に座らなくても、通勤中や休憩中など、いつでもどこでも気軽にオンラインショッピングを楽しむようになった。この変化に対応するため、ECプラットフォームにはスマートフォンでの表示に最適化されたデザイン、いわゆるレスポンシブWebデザインへの対応が必須となった。また、単に商品をオンラインで販売するだけでなく、「どのようにして顧客を集め、購入してもらうか」というマーケティングの重要性が高まった。特にInstagramやTwitterといったSNSが強力な集客ツールとなり、ECプラットフォームにはSNSとの連携機能が不可欠となった。商品の投稿からシームレスに購入ページへ誘導する仕組みや、顧客の購買データを分析して効果的な販促メールを送る機能など、より高度で複雑な機能が求められるようになった。さらに、競合サービスの増加により価格競争も激化し、初期費用や月額利用料が無料のプランも登場した。これにより、EC参入のハードルはさらに下がり、市場は拡大を続けたが、同時にプラットフォーム側は単なる機能提供だけでなく、事業者の売上向上を支援する総合的なサポート力が問われる時代へと移行した。
そして今、ECプラットフォームは次のステージへと進化しようとしている。その中心にあるのが「柔軟性」と「拡張性」であり、それを実現する技術がAPI(Application Programming Interface)である。APIとは、異なるソフトウェアやサービス間で機能を連携させるための接続仕様のことだ。ECプラットフォームが商品管理や注文処理といった中核機能のAPIを公開することで、外部の多様なサービスとシームレスに連携できるようになる。例えば、会計ソフトがECの売上データを自動で取り込んだり、倉庫管理システムがリアルタイムで在庫情報を同期したりすることが可能になる。このように、APIを介して様々なサービスがつながり、新たな価値を生み出す経済圏は「APIエコノミー」と呼ばれる。この流れをさらに推し進めた概念が「ヘッドレスコマース」だ。従来のECプラットフォームは、商品の見た目を表示する部分(フロントエンド、通称ヘッド)と、在庫や決済などを管理する裏側のシステム(バックエンド)が一体化していた。ヘッドレスコマースは、このバックエンド機能のみをAPIとして提供する仕組みである。これにより、開発者はプラットフォームが用意したテンプレートに縛られることなく、フロントエンドを自由に、ゼロから構築できる。ウェブサイトはもちろん、スマートフォンアプリ、IoTデバイス、デジタルサイネージなど、あらゆるデジタル接点で商品を販売することが可能になり、ブランドの世界観を表現した独自の購買体験を提供できる。これは、システムエンジニアにとって、APIを活用したシステム連携設計や、最新のフロントエンド技術を駆使した開発など、活躍の場が大きく広がることを意味している。ECの未来は、プラットフォームが提供する機能を「利用する」時代から、APIを「活用して創造する」時代へと移り変わっていくのである。