【ITニュース解説】コニカミノルタ製bizhubシリーズにおけるサービス運用妨害(DoS)の脆弱性
ITニュース概要
コニカミノルタ製複合機「bizhub」シリーズにセキュリティ上の弱点が見つかった。特殊なファイルを機器に読み込ませると、応答しなくなり印刷などができなくなる「サービス運用妨害(DoS)」攻撃を受ける可能性がある。(112文字)
ITニュース解説
コニカミノルタ株式会社が提供するオフィス向け複合機「bizhub」シリーズにおいて、セキュリティ上の弱点である脆弱性が発見された。この脆弱性は、特定の操作によって複合機のサービスが停止してしまう「サービス運用妨害(DoS)」を引き起こす可能性がある。システムエンジニアを目指す上で、このような脆弱性の情報を理解し、その影響と対策を学ぶことは極めて重要である。 まず、脆弱性とは何かを理解する必要がある。脆弱性とは、コンピュータのOSやソフトウェア、ハードウェアにおいて、プログラムの設計ミスや不具合が原因で生じる情報セキュリティ上の欠陥のことを指す。この弱点を悪意のある第三者に利用されると、不正アクセスやデータの改ざん、システムの停止といった様々な問題が発生する可能性がある。脆弱性は、開発段階で意図せず作り込まれてしまうことが多く、発見され次第、開発者によって修正プログラム(パッチやアップデート)が提供されるのが一般的である。 今回報告された脆弱性が引き起こすのは、「サービス運用妨害(DoS)攻撃」である。DoSは「Denial of Service」の略で、その名の通り、サーバーやネットワーク機器に対して過剰な負荷をかけたり、異常なデータを送りつけたりすることで、正規の利用者がサービスを使えない状態に追い込む攻撃手法を指す。例えば、ウェブサイトに大量のアクセスを集中させてサーバーをダウンさせたり、今回のように機器の特定の機能を悪用して処理を停止させたりすることが含まれる。この攻撃を受けると、bizhubシリーズの場合、印刷、スキャン、コピーといった複合機の基本的な機能が一切利用できなくなる事態に陥る。これにより、業務が滞り、大きな損害につながる可能性がある。 この脆弱性の具体的な内容は、複合機の設定などを管理するために用いられるファイルのインポート機能に起因する。複合機には、設定情報をファイルとして保存(エクスポート)したり、ファイルから読み込んで復元(インポート)したりする機能が備わっている。今回の問題は、このインポート機能において、システムが想定していない不正な形式のファイルが読み込まれた際の処理に不備があったことだ。プログラムは、正常な形式のデータが入力されることを前提に作られていることが多いが、攻撃者はあえて異常な形式のデータや、非常に大きなデータサイズのファイルを送り込む。脆弱性のあるシステムでは、このような予期せぬ入力を適切に処理できず、プログラムが異常終了したり、処理が無限に続く状態に陥ったりして、最終的にシステム全体が応答しなくなってしまう。これが、今回のDoS攻撃が成立する仕組みである。この攻撃は、ネットワークを通じて複合機にアクセスできる立場にあれば、遠隔から実行される恐れがある。 この脆弱性には、「CVE-2023-45731」という世界共通の識別番号が割り当てられている。CVEは「Common Vulnerabilities and Exposures」の略で、発見された個々の脆弱性に対して一意の番号を付与する国際的な取り組みである。この番号があるおかげで、世界中のセキュリティ専門家やシステム管理者は、言語の壁を越えて「あの脆弱性のことだ」と正確に情報を共有し、対策を議論することができる。システムエンジニアとして、このCVE番号を頼りに情報を収集するスキルは必須となる。 この脆弱性の影響を受けるのは、bizhubシリーズの複数のモデルである。対策として、開発元であるコニカミノルタは、脆弱性を修正した新しいバージョンのファームウェアを公開している。ファームウェアとは、ハードウェアを直接制御するために組み込まれた基本的なソフトウェアのことである。スマートフォンやゲーム機のOSアップデートと同様に、ファームウェアを更新することで、機能の改善やセキュリティ上の問題の修正が行われる。したがって、対象となるbizhubシリーズを利用している場合は、メーカーの公式サイトなどで情報を確認し、速やかにファームウェアを最新版にアップデートすることが最も確実な対策となる。 また、ファームウェアのアップデートがすぐに行えない場合の暫定的な対策として、複合機へのアクセスを適切に管理することも重要である。例えば、信頼できるネットワーク内からのみアクセスを許可するようにファイアウォールを設定したり、不要な限りインターネットから直接アクセスできる状態にしないといった基本的なネットワークセキュリティ対策は、未知の脆弱性からの攻撃リスクを低減させる上でも効果的である。 今回の事例は、システムエンジニアを目指す者にとって多くの教訓を含んでいる。第一に、現代のオフィス機器は単なる機械ではなく、ネットワークに接続されたコンピュータの一種であり、PCやサーバーと同様にセキュリティ対策が不可欠であるという認識を持つことだ。第二に、ソフトウェアやシステムには脆弱性が存在しうることを前提とし、セキュリティ情報を常に収集し、アップデートを迅速に適用する運用体制の重要性である。そして第三に、開発者の視点に立てば、外部からの入力データを常に疑い、予期しない値や形式のデータが入力されてもシステムが停止しないように、厳密なチェック処理(入力値検証)を実装することの重要性を示している。この脆弱性は、まさにその入力値検証の不備を突かれた典型的な例と言える。ITシステムの安定稼働と安全を守るためには、こうした日々の地道な情報収集と対策の積み重ねが不可欠なのである。