【ITニュース解説】キンドリル、「AIプライベートクラウド」を国内提供--「Kyndryl Consult」が概念実証を支援

作成日: 更新日:

ITニュース概要

キンドリルが日本で「AIプライベートクラウドサービス」の提供を開始した。企業が自社内でAIを使えるよう、まず「プライベートAI基盤PoC支援サービス」を提供し、日本におけるAI活用を加速させる。

ITニュース解説

キンドリルという会社が、日本でAI(人工知能)を活用したい企業向けに、新しいサービス『Kyndryl AIプライベートクラウドサービス』の提供を開始した。キンドリルは、かつてIBMのITインフラ部門だったが、数年前に独立した企業で、企業の情報システム基盤の設計、構築、運用、保守などを専門としている。今回のサービスは、企業の重要なデータを安全に管理しつつAIを動かせる専用のシステム環境を提供し、日本におけるAI活用を加速させることを目的としている。 近年、AI技術はチャットボットや画像生成など、様々な分野で進化を遂げ、企業活動においても大きな注目を集めている。顧客データの高度な分析、生産プロセスの最適化、新しい製品やサービスの開発など、AIはビジネスの可能性を大きく広げる。しかし、AIを実業務で活用するには、大量のデータを処理し、複雑な計算を行うための高性能なコンピューターの基盤が不可欠となる。 このようなAI基盤の構築には、『クラウド』の利用が一般的だ。クラウドとは、インターネット経由でコンピューターのリソース(サーバー、ストレージ、ネットワークなど)を利用できるサービスのことだ。クラウドは大きく『パブリッククラウド』と『プライベートクラウド』に分けられる。パブリッククラウドは、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureのように、不特定多数のユーザーが共有して利用するサービスで、手軽に導入できる利点がある。一方、『プライベートクラウド』は、特定の企業や組織だけが占有して利用できるクラウド環境を指す。これは自社のデータセンター内に構築することも、外部のデータセンターに専用環境を構築してもらうこともある。プライベートクラウドの最大の利点は、セキュリティの高さとカスタマイズの自由度だ。企業がAIを活用する際、特に機密性の高い顧客情報や企業秘密といったデータを扱う場合、外部との共有がないプライベートクラウドは、データ漏洩のリスクを抑え、企業の厳格なセキュリティポリシーに適合させやすい。また、特定の高性能なAIモデルを効率良く動かすために、ハードウェア構成を自由に最適化できる点も重要となる。 キンドリルが今回提供する『Kyndryl AIプライベートクラウドサービス』は、まさにこのプライベートクラウドのメリットを活かし、企業がAIを導入するための強固な基盤を、設計から構築、運用まで一貫してサポートするものだ。企業は、AI基盤の構築にかかる手間や専門知識の不足といった課題に悩むことなく、本来のビジネスに集中し、AIの導入を加速できるようになる。 このサービスの中でも、まず第一弾として提供されるのが『プライベートAI基盤PoC支援サービス』だ。PoCとは『Proof of Concept(概念実証)』の略で、新しい技術やアイデアが、実際に期待通りの効果を発揮できるのか、技術的に実現可能なのかを、本格的な開発に入る前に小規模に試す段階のことだ。AIの導入は、新しい分野であり、どんな成果が得られるか、どんな課題があるかを事前に予測しにくい側面がある。そのため、いきなり大規模な投資を行うのではなく、PoCを通じて、本当に自社のビジネスに役立つのか、技術的な実現可能性はあるのかなどを検証することが非常に重要となる。キンドリルのPoC支援サービスは、この初期検証の段階で企業をサポートする。具体的には、プライベートクラウド上にAIを動かすための検証環境を構築し、企業が実現したいAI活用のアイデアが技術的に可能か、効果が見込めるかなどを、専門家が一緒に確認していく。これにより、企業は無駄な投資を避け、リスクを最小限に抑えながら、AI導入の次のステップに進むべきかを慎重に判断できるようになる。 このPoC支援の中心となるのが、キンドリルのコンサルティング部門である『Kyndryl Consult』だ。Kyndryl Consultは、ITインフラに関する深い知識と経験を持つ専門家集団であり、企業のビジネス課題を理解した上で、最適なAI導入戦略を立案する段階から関わる。単に技術的な基盤を提供するだけでなく、AIが企業のビジネスにどう貢献できるか、どのようなデータを活用すべきか、といった戦略的な部分まで含めて支援することで、企業がAIから最大限の価値を引き出せるように導く。 このように、キンドリルは『Kyndryl AIプライベートクラウドサービス』を通じて、日本企業がAIを安全かつ効果的に活用できる環境を提供しようとしている。特に、PoC支援に注力することで、企業がAI導入に伴う初期のリスクや不確実性を減らし、AI活用のハードルを下げることが期待される。多くの企業がAIの可能性に注目しながらも、導入の難しさやセキュリティへの懸念から、具体的な一歩を踏み出せないでいる現状がある。キンドリルのこのサービスは、そのような企業にとって強力な支援となり、日本の産業におけるAI活用の加速に大きく貢献することが期待される。

【ITニュース解説】キンドリル、「AIプライベートクラウド」を国内提供--「Kyndryl Consult」が概念実証を支援