【ITニュース解説】LayerX、三菱UFJ銀行と戦略的提携--シリーズBで150億円調達も発表 その使い道は

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ITニュース概要

法人向けSaaS「バクラク」を提供するLayerXが、150億円の資金調達と三菱UFJ銀行との戦略的提携を発表。調達資金は主力サービスの機能強化や新事業開発に活用し、事業拡大を加速させる。大手銀行との連携で、金融領域でのサービス展開も期待される。(119文字)

ITニュース解説

法人向けクラウドサービスを提供する株式会社LayerXが、シリーズBラウンドで総額150億円という大規模な資金調達を実施し、同時に三菱UFJ銀行との戦略的提携を締結したと発表した。この出来事は、今後のIT業界、特に企業向けSaaSや金融とITが融合したFinTech分野の動向を理解する上で非常に重要な意味を持つ。 まず、LayerXという企業が提供するサービスについて説明する。同社の中核事業は、法人支出管理サービス「バクラク」である。これは、企業活動におけるお金の流れ、特に請求書の処理、経費精算、法人カードの管理といった一連の業務をデジタル化し、効率化するためのクラウドシステムだ。多くの企業では、これらのバックオフィス業務が依然として紙の書類や手作業に依存しており、時間と手間がかかる非効率な領域となっている。「バクラク」は、こうした課題を解決するSaaS(Software as a Service)の一種であり、ソフトウェアをインストールすることなく、インターネットを通じて利用できる手軽さが特徴だ。このサービスにより、企業は間接業務の負担を大幅に削減し、より生産的な活動にリソースを集中させることが可能になる。 次に、今回の資金調達の背景にある専門用語を解説する。ニュースにある「シリーズB」とは、スタートアップ企業の成長ステージを示す言葉である。一般的に、スタートアップは創業から事業拡大の過程で、エンジェルラウンド、シード、シリーズA、B、Cといった段階を踏んで投資家から資金を調達する。シリーズBは、製品やサービスが市場である程度の成功を収め、事業モデルが確立された後、さらなる市場拡大や事業規模の拡大を目指すフェーズで行われる。150億円という調達額は、日本のスタートアップにおけるシリーズBとしては非常に大きく、これはLayerXの提供する「バクラク」の価値と将来性が、投資家から極めて高く評価されていることを示している。 今回の資金調達を主導した「リード投資家」は、米国の著名なベンチャーキャピタルであるTCVだ。ベンチャーキャピタル(VC)とは、高い成長が見込まれる未上場の新興企業に投資を行う専門の投資会社のことである。TCVは、過去にNetflixやAirbnbといった世界的な巨大企業が成長する初期段階で投資を行ってきた実績を持つ。このような世界トップクラスのVCから大規模な投資を受けたという事実は、LayerXがグローバルな基準で見ても非常に有望な企業であると認められたことを意味する。 そして、今回の発表で特に注目すべきは、三菱UFJ銀行との「戦略的提携」である。これは、単に同行が投資家として出資したという関係に留まらない。両社が事業面で深く連携し、互いの強みを活かして新たな価値を創造していくことを目指す協力関係を意味する。具体的には、LayerXの「バクラク」が持つ支出管理の機能と、三菱UFJ銀行が持つ金融サービスを連携させることが想定される。例えば、ユーザー企業が「バクラク」のシステム上で請求書の支払い承認を行えば、そのまま三菱UFJ銀行のインターネットバンキングを介して自動的に振込が完了するといった、よりシームレスな業務体験の提供が可能になる。これは、ITサービスの中に金融機能を組み込む「Embedded Finance(組み込み金融)」という、FinTech領域における最新のトレンドを具現化する動きである。システム開発の観点からは、外部のSaaSと銀行の勘定系システムとをAPI(Application Programming Interface)などを通じて安全かつ安定的に接続する高度な技術が求められる。 調達した150億円という潤沢な資金の使途は、主に「バクラク」事業の非連続な成長の実現に充てられる。具体的には、自社での開発に加えて、M&A(企業の合併・買収)を通じて新たな技術やサービスを迅速に取り込み、プロダクトの機能を拡充していくことが計画されている。また、事業の急拡大を支えるための人材採用、特にプロダクトを開発する優秀なシステムエンジニアやデザイナー、事業を推進するビジネス人材の獲得も強化される。このような成長企業は、エンジニアにとって最先端の技術に触れながら自身のスキルを試し、キャリアを大きく飛躍させる絶好の機会を提供してくれる場となる。 この一連のニュースは、一つのSaaSスタートアップが、世界的な投資家と国内最大手の金融機関をパートナーとして迎え、企業の業務プロセスを根底から変革しようとしていることを示している。LayerXが目指すのは、単一の業務ツールではなく、企業のあらゆる支出情報を一元管理し、経営判断に活用できる統合的なプラットフォームとなることだ。今回の提携と資金調達は、その壮大なビジョンを実現するための力強い推進力となるだろう。IT技術が金融と融合し、企業の生産性向上にどう貢献していくのか、その未来を占う象徴的な出来事として注目に値する。

【ITニュース解説】LayerX、三菱UFJ銀行と戦略的提携--シリーズBで150億円調達も発表 その使い道は