【ITニュース解説】Learning Scala with chess #1 - Color and coordinates
2025年09月15日に「Dev.to」が公開したITニュース「Learning Scala with chess #1 - Color and coordinates」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
Scalaでチェスゲームの基本的な概念を実装する体験記だ。チェスの「色」や「座標」を題材に、Scalaの列挙型、case class、Option、パターンマッチといった特徴的な機能を解説する。ドメイン駆動で開発を進める過程で、Scalaの構文や強力な機能の活用法を学べる。
ITニュース解説
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、新しいプログラミング言語の学習は自己成長に欠かせない要素だ。今回紹介する記事は、チェスゲームの実装を通じて、関数型プログラミング言語であるScalaの基本的な概念と強力な機能を解説している。筆者は大学時代にScalaに触れ、その可能性に魅力を感じていたが、今回改めて本格的に学習し、その知識を定着させるために趣味であるチェスを題材に選んだという。これは単なるステップバイステップのチュートリアルではなく、チェスという具体的な「ドメイン」(領域、分野)の考え方をプログラムにどう落とし込んでいくか、その試行錯誤のプロセスが記録されたジャーナルのようなものだ。実際のコードはGitHubで公開されており、誰でも自由に参照できる。
まず、チェスにおける最も基本的な概念の一つ「色」、すなわち白と黒の駒の区別をScalaでどのように表現するかを見ていこう。記事ではこれを「列挙型(enum)」としてモデル化している。列挙型とは、事前に決まった限られた選択肢(例えば、曜日や月の名前、そしてチェスの白と黒など)を表現するためのデータ型で、プログラム内で扱う値を明確にし、間違いを防ぐのに役立つ。Scalaでは、Javaなどの他の言語と同様にpackageやenumといったキーワードを使用するが、文法には特徴がある。例えば、ほとんどの場所で波括弧{}やセミコロン;を省略できる。これは、Scalaがインデント(字下げ)や式の終わりを判断する仕組みを備えているため、コードをより簡潔に記述できるという利点がある。
次に、チェス盤上のマス目を特定するための「座標」の概念に進む。チェス盤には「ファイル」(縦の列、AからHの文字で表される)と「ランク」(横の行、1から8の数字で表される)があり、それぞれのマス目は「A1」のようにファイルとランクの組み合わせで識別される。記事では、これらファイルとランクも列挙型として表現している。Colorの列挙型が単に名前を持つだけなのに対し、FileとRankの列挙型はそれぞれ「文字としてのA、B、C…」や「数字としての1、2、3…」といった「パラメータ」を持つ点が特徴だ。このようにパラメータを持つ列挙型は、ただの選択肢ではなく、それぞれの選択肢に固有のデータを持たせたい場合に非常に便利だ。
さらに、これらの列挙型には「メソッド」(特定の処理を行う関数)も定義できる。例えば、チェス盤上のあるマス目から一つ次のファイルやランクを移動するnextメソッドや、一つ前のファイルやランクに戻るpreviousメソッドが実装されている。ここでScalaの重要な特徴の一つである「Option型」が登場する。チェス盤の端にいるマス目(例えばファイルH)には、それ以上「次のファイル」は存在しない。このような場合、従来のプログラミング言語では「null」(何も指さない値)を返してしまい、後でそのnullを扱う際にエラー(NullPointerException)が発生するリスクがあった。しかしScalaでは、値が存在しない可能性を明示的に示すためにOption型を使用する。Option型は「Some(値)」(値が存在する場合)または「None」(値が存在しない場合)のいずれかを取り、プログラマに値の有無を意識させることで、予期せぬエラーを防ぐ手助けをする。また、Scalaではreturnキーワードを明示的に書かなくても、メソッド内の最後の式が自動的に返り値となる。if/elseのような条件分岐の式も値を返すため、より簡潔で表現力豊かなコードを書くことができる。
最後に、これまでに定義したFileとRankを組み合わせて、チェス盤の特定のマス目「Coordinate」(座標)を表現する「case class」が導入される。case classはScalaの非常に便利な機能で、主にデータを保持するために使われる特別なクラスだ。Javaのrecordに似ており、定義するだけで、データの比較やハッシュ値の計算、文字列表現の生成といった、データクラスとして必要な多くの機能が自動的に提供される。記事では、Coordinateが自身のファイルとランクの組み合わせ(例: A1)を返すtoStringメソッドをオーバーライドしている。ここで使われている「文字列補間」は、文字列の中に変数の値を簡単に埋め込むための機能で、s"ファイルは${file}で、ランクは${rank}です"のように書くことで、コードが読みやすくなる。
Coordinateクラスには、チェス盤上を上下左右に移動するメソッドが実装されている。これらのメソッドでは、Scalaの強力な「パターンマッチング」機能が駆使されている。パターンマッチングは、与えられた値の形(パターン)に基づいて、それぞれ異なる処理を実行する仕組みだ。従来のswitch文よりもはるかに強力で、複雑な条件分岐を非常に簡潔かつ安全に記述できる。例えば、移動先のファイルやランクが存在するかどうかをOption型で受け取り、それがSome(値)であればその値を使って処理を続け、Noneであれば移動できないことを示す、といった処理をスマートに記述できる。さらに、複数のOption型を組み合わせた「タプル」に対してもパターンマッチングを適用することで、より複雑な条件を柔軟に扱うことが可能になる。
この記事を通じて、チェスの基本的な概念をプログラムで表現する過程で、Scalaの様々な強力な機能が紹介された。列挙型による選択肢の表現、Option型による安全な値の取り扱い、case classによるデータ構造の効率的な定義、そしてパターンマッチングによる柔軟な条件分岐は、いずれも堅牢で読みやすいコードを書く上で非常に役立つ。これらの機能は、システムエンジニアが実務で直面する様々な問題解決において、強力なツールとなるだろう。次回の記事では、オブジェクトやトレイトといったさらに高度な概念が紹介され、このチェスプログラムの設計がさらに洗練されていくとのことだ。