【ITニュース解説】LINE × GAS × DifyでQR会員証機能付きRAGチャットボットを作る
2025年09月04日に「Qiita」が公開したITニュース「LINE × GAS × DifyでQR会員証機能付きRAGチャットボットを作る」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
LINE、Google Apps Script(GAS)、Difyを使い、QRコードで使える会員証機能とAIチャットボットを組み合わせたシステムを作る。LINE公式アカウント上で、会員証・ポイント管理、問い合わせ対応を完結させ、利用者の利便性を高めるのが目的だ。
ITニュース解説
この解説では、LINE公式アカウントを活用し、QRコードによる会員証機能、ポイント管理、そしてAIチャットボットによる問い合わせ対応を統合するシステムについて説明する。これは、LINE、Google Apps Script(GAS)、そしてDifyという三つの主要な技術を連携させることで実現される。ユーザーは普段使っているLINEアプリを通じて、デジタル会員証の表示、ポイント残高の確認、店舗への問い合わせといった一連のサービスをスムーズに利用できるようになる。これにより、店舗は顧客管理や顧客対応の効率化を図り、顧客はより手軽で便利なサービス体験を得られるようになる。
まず、このシステムの土台となるのが「LINE公式アカウント」だ。これは企業や店舗が顧客と直接コミュニケーションを取るためのプラットフォームであり、メッセージの送受信や情報の提供、クーポンの配布など様々な機能を持つ。今回のシステムでは、ユーザーが会員証の提示や質問を行う際の窓口となり、システムからの情報やAIの回答を受け取るインターフェースとして機能する。
次に、システムの心臓部とも言えるのが「Google Apps Script(GAS)」だ。GASはGoogleが提供するプログラミング環境で、JavaScriptというプログラミング言語を使ってコードを記述する。GoogleスプレッドシートやGoogleドライブ、Gmailなど、Google Workspaceの各サービスと連携し、それらの機能を自動化したり、拡張したりできるのが大きな特徴だ。このシステムにおいてGASは、全体の「司令塔」として機能する。具体的には、LINE公式アカウントから送られてくるユーザーのリクエスト(例えば「会員証を表示してほしい」という要求や質問メッセージ)を受け取り、そのリクエストの内容に応じて適切な処理を行う。会員情報のデータベースからの取得や更新、ポイントの計算、QRコードの生成指示、そして後述するDifyへの問い合わせの転送と、Difyからの回答をLINEに返すといった、データ処理と各サービス間の連携を担う重要な役割を果たす。GASがこれらの複雑な処理を自動的に実行することで、システム全体の円滑な動作が保証される。
そして、AIチャットボットの核となるのが「Dify」だ。Difyは、プログラミングの専門知識がなくても、AIアプリケーションを簡単に開発・運用できるプラットフォームである。特に、対話型AI、つまりチャットボットの構築に強みを持つ。このシステムでDifyが採用される最大の理由は、「RAG(Retrieval Augmented Generation)」という技術を効率的に利用できる点にある。RAGとは、AIが質問に回答する際に、あらかじめ用意された特定の情報源(例えば店舗のマニュアル、FAQ、ウェブサイトの内容など)の中から関連性の高い情報を探し出し、その情報に基づいて回答を生成する仕組みのことだ。一般的なAIモデルは広範な知識を持つが、特定の店舗の営業時間、限定キャンペーン、特定の商品の在庫といった「店舗固有」の最新かつ正確な情報には対応しにくい場合がある。DifyのRAG機能を使うことで、店舗が持つ独自の情報をDifyに登録し、ユーザーからの質問に対して、その登録された情報に基づいて正確で具体的な回答を生成できるようになる。これにより、「この店の今週のランチメニューは?」や「駐車場の割引はありますか?」といった具体的な質問にも、AIが適切に、かつ迅速に答えられるようになる。
システム全体の具体的な動作の流れを見てみよう。まず、ユーザーがLINEで会員証の表示を求めたり、店舗に関する質問を入力したりする。このユーザーからの操作はLINEを通じてGASに送られる。もしユーザーが会員証の表示を要求した場合、GASは会員情報が格納されているデータベースから該当ユーザーの情報を取得し、QRコードを生成する外部サービスと連携して、一時的なQRコード画像を生成する。生成されたQRコードはLINEを通じてユーザーに返され、ユーザーはそれを店舗で提示することで、会員としてのサービスを受けられる。
ユーザーが質問をした場合は、GASはその質問内容をDifyに送信する。Difyは、登録されている店舗のナレッジベース(RAG用の情報源)を参照し、質問に最も適した回答を生成する。Difyから生成された回答は再びGASを経由し、LINEを通じてユーザーに表示される。このように、LINEがユーザーインターフェース、GASがシステムの中核処理と各サービスの連携役、そしてDifyが高度なAIによる情報処理と回答生成を分担することで、全体として一つの多機能なシステムが構築される。
会員証機能においては、ユーザーはLINEアプリで手軽にQRコード会員証を表示でき、店舗側はそれを読み取ることで顧客を識別し、購入履歴やサービス利用状況をスムーズに管理できる。これにより、物理的なカードの発行や管理が不要になり、双方にとって利便性が向上する。
ポイント管理もこのデジタル会員証の仕組みと連携する。店舗側がLINE上のQRコードを読み取ることで、GASが会員データベース内のポイント情報を更新し、加算や利用を記録する。ユーザーはLINEアプリからいつでも自分のポイント残高を確認できるため、ポイントの透明性が高まり、利用促進にも繋がる。
RAGチャットボットは、顧客からの多様な問い合わせに対して、スタッフを介さずに自動で対応できる点が大きな利点だ。営業時間、定休日、サービス内容、特定の商品の有無、キャンペーン詳細など、店舗に関するあらゆる質問に対し、Difyに登録された正確な情報に基づいて即座に回答する。これにより、店舗スタッフは顧客対応にかかる時間を削減し、より重要な業務に集中できるようになる。また、顧客は待ち時間なく、24時間いつでも必要な情報を得られるため、顧客満足度の向上に大きく貢献する。
このように、LINE、GAS、Difyというそれぞれの技術が持つ強みを組み合わせることで、顧客への利便性向上と店舗運営の効率化を同時に実現する、多機能で実用的なシステムが構築される。特に、GASはGoogleサービスとの連携が容易であり、DifyはAI開発を直感的に行えるため、プログラミング初心者でも比較的取り組みやすく、実践的なシステム開発の良い学習機会となるだろう。