【ITニュース解説】ローコードで「倉庫管理システム」を4カ月で内製リプレース 調味料メーカーのダイショーが語る、非エンジニア中心で成功に導けた理由、実践のポイント

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ITニュース概要

調味料メーカーのダイショーが、倉庫管理システムをローコード開発で刷新。非エンジニア中心のチームがわずか4ヶ月で内製リプレースに成功した。専門知識が少なくてもシステム開発を成功させるための実践的なポイントがわかる事例である。

ITニュース解説

調味料メーカーのダイショーが、自社の倉庫管理システムをローコード開発でわずか4カ月という短期間で刷新し、しかもその中心を非エンジニアが担ったという事例は、システムエンジニアを目指す初心者にとって非常に興味深い内容だ。この成功事例から、現代のシステム開発における新たなアプローチと、その成功の鍵を学ぶことができる。 まず、倉庫管理システム(WMS)について簡単に説明する。これは、企業が倉庫内で行うあらゆる業務、例えば商品の入庫、保管、出庫、在庫管理、棚卸しなどを効率的に行うためのシステムだ。正確な在庫情報を把握し、商品のロケーションを最適化することで、物流コストの削減や出荷ミスの防止、顧客への迅速な対応が可能になる。ダイショーのような調味料メーカーにとって、製品の鮮度やロット管理は非常に重要であり、WMSはビジネスの根幹を支える重要なシステムと言える。 次に、ローコード開発とは何か。これは、従来のプログラミング言語を使ってコードを一から記述するのではなく、視覚的なインターフェース(画面)上で、あらかじめ用意された部品を組み合わせたり、設定を行ったりすることで、アプリケーションを開発する手法だ。この方法の最大の利点は、専門的なプログラミング知識が少なくてもシステムを開発できるため、開発期間の大幅な短縮やコスト削減が期待できる点にある。また、非エンジニアである業務部門の担当者が直接開発に参加しやすくなるのも大きな特徴だ。 ダイショーがローコード開発を選んだ背景には、既存の倉庫管理システムが抱えていた課題があったと推測される。多くの場合、古いシステムは老朽化が進み、維持管理に多額のコストがかかったり、最新の業務プロセスや外部環境の変化に対応しきれなくなったりする。特定のベンダーに依存している場合、システムの修正や機能追加に時間がかかり、柔軟性に欠けることもある。このような状況で、ダイショーはシステムの刷新を検討し、内製化によって自社の業務に最適化されたシステムを迅速かつ低コストで構築することを目指したのだろう。 この事例で特筆すべきは、「非エンジニア中心」で開発が進められた点だ。これは、システムの利用者である業務部門の担当者が、開発の現場に積極的に参加したことを意味する。通常、システム開発では業務部門が「何をしたいか(要件)」をIT部門に伝え、IT部門がそれをシステムとして実現する、という分業体制がとられる。しかし、この過程で誤解や認識のずれが生じ、結果として現場のニーズに合わないシステムができ上がってしまうことも少なくない。ダイショーの場合、業務の知識を最もよく知る非エンジニアがローコードツールを使って直接システムを作り上げることで、このようなミスマッチを防ぎ、現場の要望をダイレクトに反映できたと考えられる。 ダイショーがローコード開発を成功に導いた実践のポイントはいくつか考えられる。まず、業務部門が「自分たちのシステム」として主体的に開発に関わったことが挙げられる。これにより、当事者意識が高まり、責任感を持って開発に取り組むことができた。また、業務に精通しているため、要件定義の精度が向上し、手戻りが少なくなった可能性が高い。 次に、IT部門の適切なサポートとガバナンスも重要だっただろう。非エンジニアが開発の中心になるとはいえ、セキュリティやシステムの整合性、今後の拡張性といった専門的な視点からのアドバイスやガイドラインは不可欠だ。IT部門は、ローコードツールの選定、開発標準の策定、技術的な困りごとへの支援などを通じて、開発全体を裏側から支えたと想像できる。 さらに、「4カ月」という短期間でのリプレースは、アジャイル開発のようなスピーディなサイクルで開発を進めたことを示唆している。つまり、一度に全ての機能を完璧に作り上げようとするのではなく、必要最小限の機能からスタートし、実際に使いながら改善を加えていくというアプローチが取られた可能性が高い。これにより、早期にシステムを稼働させ、現場からのフィードバックを素早く取り入れ、より実用的なシステムへと育てていくことができたのだろう。 また、開発を始める前に既存業務フローの徹底的な棚卸しと可視化を行ったことも重要な成功要因だ。現在の業務がどのように行われているかを明確にすることで、システム化すべき点や改善点が見えてくる。これにより、ローコードツールで開発する範囲と方法を効率的に計画できたはずだ。 この事例は、システムエンジニアを目指す初心者にとって、多くの示唆を与えてくれる。プログラミングスキルは確かに重要だが、それと同じくらい、あるいはそれ以上にビジネスの現場で何が求められているのか、業務がどのように動いているのかという「業務知識」の重要性を浮き彫りにしている。また、ローコード開発のような新しいツールや手法を理解し、活用することで、専門のエンジニアだけでなく、より多くの人がシステム開発に携われる時代が来ていることを示している。ITと業務の境界線が曖昧になり、両者が連携することで、より早く、より柔軟にビジネスの課題を解決できるようになるのだ。システムエンジニアは、単にコードを書くだけでなく、こうした新しい開発手法をリードし、業務部門と協力しながら、最適なソリューションを提供できるような役割が今後ますます求められるだろう。このダイショーの事例は、技術的な知識だけでなく、コミュニケーション能力やビジネス理解の深さも、システム開発の成功には不可欠であることを教えてくれる好例と言える。

【ITニュース解説】ローコードで「倉庫管理システム」を4カ月で内製リプレース 調味料メーカーのダイショーが語る、非エンジニア中心で成功に導けた理由、実践のポイント