【ITニュース解説】Building Flexible MCP Tools with GraphQL and Rust

2025年09月05日に「Dev.to」が公開したITニュース「Building Flexible MCP Tools with GraphQL and Rust」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

AIが外部サービスと連携する際、APIが複雑だと非効率になる。Rust製のApollo MCPサーバーは、GraphQLを利用し、複雑なAPIをAI向けの簡単なツールに変換する。これにより、必要な機能だけをAIに提供でき、開発効率とAIの性能が向上する。

ITニュース解説

現代のAI、特にチャットAIなどで利用される大規模言語モデル(LLM)は、単に人間と会話するだけでなく、外部のデータやサービスと連携する能力がますます重要になっている。例えば、AIに「特定の会社の株価を調べて」と指示した場合、AIはリアルタイムの株価情報を提供している外部のウェブサイトやデータベースにアクセスする必要がある。このようなAIと外部システムとの連携を円滑に進めるための標準的な規約として「Model Context Protocol (MCP)」が存在する。MCPは、AIが外部の機能を「ツール」として発見し、一貫した方法で利用するための枠組みを定めている。

AIが外部システムと連携する際には、一般的にAPI(Application Programming Interface)という仕組みが使われる。しかし、既存のシステムが提供するAPI、例えば伝統的なREST APIやデータベースへの直接アクセスなどをそのままAIに提供するには課題がある。特に大規模で複雑なAPIの場合、その仕様書(スキーマ)は膨大な情報量になり、AIが一度に処理できる情報量には限りがあるため、非効率になったり、余計なコストがかかったりする原因となる。このAIが一度に扱える情報量の限界を「コンテキストウィンドウ」と呼ぶ。

この問題を解決する有力な技術として「GraphQL」が注目されている。GraphQLは、APIとの通信方法の一種で、最大の特徴はクライアント(この場合はAI)が必要なデータだけを具体的に指定してリクエストできる点にある。これにより、サーバーとのやり取りが最小限に抑えられ、AIのコンテキストウィンドウの消費を節約し、より効率的な連携が可能になる。

この記事で紹介されているのは、このGraphQLの利点を活かし、AI向けのツールを柔軟に構築するためのオープンソースソフトウェア「Apollo MCPサーバー」である。このサーバーは、プログラミング言語Rustで開発されており、既存のGraphQLの機能をAIが使いやすいMCPツールとして提供する役割を担う。

Apollo MCPサーバーの具体的な活用法の一つは、巨大な既存APIから必要な機能だけを切り出し、AI専用のシンプルなツールとして提供することだ。例として、非常に多機能で複雑なGitHubのGraphQL APIが挙げられている。このAPIの全機能をAIに渡すのではなく、「特定のリポジトリから最新のIssueを5件取得する」という特定の目的に絞ったツールを作成する。開発者は簡単な設定ファイル(YAML)を記述するだけで、どのGraphQLの操作をツールとして公開するかを定義できる。これにより、AIは複雑なAPIの全体像を理解する必要がなくなり、与えられたツールを呼び出すだけで目的を達成できるようになる。

さらに、Apollo MCPサーバーの強力な点は、異なるデータソースを組み合わせて一つのツールとして統合できることだ。例えば、あるイベントの登壇申し込みを管理するツールを考える。応募データは「Superbase」というデータベースに保存され、Superbaseはデータベースの構造から自動的にREST APIを生成する機能を持つ。一方で、応募内容が妥当かどうかを検証するような複雑なビジネスロジックは、JavaScriptなどで作られた別の「Apollo Server」で実装する。Apollo MCPサーバーは、これら二つの異なるシステム(SuperbaseのREST APIとカスタムロジックを持つGraphQLサーバー)に接続し、それらを一つの統合されたツールセットとしてAIに提供できる。このように、各機能に最適な技術を使い分けながら、AIに対してはシンプルで統一されたインターフェースを見せることが可能になる。

AIエージェント(AIを搭載したアプリケーション)がこのサーバーと連携する際の処理の流れは次のようになる。まず、AIエージェントはMCPサーバーに問い合わせ、利用可能なツールの一覧とその仕様を取得する。次に、ユーザーが「〇〇リポジトリの最新Issueを取得して」といった自然言語で指示を出すと、AIエージェント内のLLMがその意図を解釈し、どのツールを使うべきかを判断する。そして、AIはツールを実行するために必要な情報(リポジトリ名など)を含んだGraphQLクエリ(命令文)を生成し、MCPサーバーに送信する。サーバーはクエリを実行し、結果を返す。このとき、GraphQLの特性により、AIが必要とする最小限のデータだけが返されるため、通信は非常に効率的だ。

この仕組みは、開発者にとっても大きなメリットがある。特に「ホットリローディング」機能は強力で、開発者はAIが生成したGraphQLクエリを自分のPC上で確認し、不要な情報が含まれていれば即座に修正できる。その変更はサーバーを再起動することなくAIの動作に反映されるため、ツールの開発とチューニングを非常に素早く繰り返すことが可能になる。

結論として、Apollo MCPサーバーを用いたこのアプローチは、AIに巨大なAPIをそのまま与えるのではなく、特定のユースケースに合わせたツールを意図的に作成することで、AIの動作を効率的かつ予測可能にするという重要な設計思想に基づいている。AIがツールを正しく選択できるかはユーザーの指示に依存する部分が残るものの、このようにツール層を堅牢に構築することで、AIエージェント開発における多くの課題に対処できる。今後は、企業での利用を促進するために、OAuthなどの認証・認可機能を組み込み、ツールのセキュリティを強化することが重要なステップとなるだろう。

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