【ITニュース解説】Microsoft、「6502 BASIC」をオープンソースとして公開

2025年09月04日に「Gihyo.jp」が公開したITニュース「Microsoft、「6502 BASIC」をオープンソースとして公開」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

Microsoftが1977年に開発したプログラミング言語環境「6502 BASIC」をオープンソースとして公開した。Apple IIなど初期のパソコンで使われた歴史的なソフトウェアのソースコードがGitHubで公開され、誰でも閲覧・利用できる。

ITニュース解説

Microsoftが、1977年に開発した「6502 BASIC」というソフトウェアのソースコードを一般に公開した。これは、コンピュータの歴史やプログラミングの基礎を学ぶ上で非常に価値のある出来事である。システムエンジニアを目指す上で、このニュースが持つ意味を理解することは、技術の成り立ちを知る良い機会となる。

まず、「6502 BASIC」という言葉を分解して理解する必要がある。「BASIC」とは、プログラミング言語の一種であり、「初心者向け汎用記号命令コード」を意味する英語の頭文字を取ったものである。その名の通り、プログラミング初心者でも比較的簡単に学べるように設計されており、1970年代から80年代にかけて、多くのパーソナルコンピュータに標準で搭載されていた。次に「6502」だが、これはCPUの型番である。CPUは「中央演算処理装置」とも呼ばれ、コンピュータの頭脳にあたる非常に重要な部品だ。この「6502」というCPUは、Apple IIやコモドールPETといった、パーソナルコンピュータの黎明期を代表する多くのマシンに採用された歴史的なCPUである。つまり、「6502 BASIC」とは、「6502」というCPUを搭載したコンピュータ上で動作する「BASIC」言語のプログラム、ということになる。さらに、この「6502 BASIC」は「インタプリタ」と呼ばれる種類のプログラムである。プログラミング言語で書かれたソースコードは、そのままではコンピュータが理解できない。そのため、コンピュータが理解できる機械語に翻訳する必要がある。この翻訳と実行の方法には大きく分けて二つの方式があり、一つがインタプリタ方式、もう一つがコンパイラ方式である。コンパイラ方式は、ソースコード全体をあらかじめ一括で機械語に翻訳してから実行する。一方、インタプリタ方式は、ソースコードを1行ずつ翻訳しながら実行していく。6502 BASICは後者のインタプリタ方式を採用しており、当時の限られたメモリ容量でも対話的にプログラムを実行できるという利点があった。

今回のニュースの核心は、この「6502 BASIC」が「オープンソース」として公開された点にある。「オープンソース」とは、ソフトウェアの設計図にあたる「ソースコード」が、誰でも自由に閲覧、利用、修正、再配布できるように公開されている状態を指す。通常、企業が開発したソフトウェアのソースコードは企業秘密として厳重に管理されるが、オープンソースにすることで、世界中の開発者がそのソフトウェアを研究したり、改良に参加したり、自身の学習に役立てたりすることが可能になる。公開された場所は「GitHub」というWebサービス上である。GitHubは、ソースコードを保存・管理・公開するためのプラットフォームとして、世界中の開発者に利用されており、現代のオープンソースプロジェクトの拠点となっている。また、公開にあたっては「MITライセンス」という利用許諾契約が適用されている。オープンソースソフトウェアには様々なライセンス形態があるが、MITライセンスはその中でも特に制限が緩やかなことで知られている。これにより、個人が学習目的で利用することはもちろん、企業が商用製品に組み込むことなども含めて、非常に自由にソースコードを扱うことができる。

では、40年以上も前の古いソフトウェアのソースコードが公開されたことには、どのような意味があるのだろうか。第一に、コンピュータの歴史を物語る貴重な資料としての価値がある。この6502 BASICは、Microsoftの創業者であるビル・ゲイツ氏らが直接開発に関わったものであり、後の巨大IT企業の原点ともいえる製品だ。当時のコンピュータは、現代のスマートフォンやパソコンとは比較にならないほどメモリ容量が小さく、CPUの処理能力も低かった。そのような厳しい制約の中で、どのような工夫をしてプログラムが作られていたのかを、ソースコードから直接読み解くことができる。これは、ソフトウェア工学の歴史を学ぶ上で非常に貴重な機会となる。第二に、プログラミングの根源的な仕組みを学ぶための優れた教材としての価値がある。現代のプログラミング言語やオペレーティングシステムは、非常に巨大で複雑な構造をしており、初心者がその全体像を理解することは困難である。しかし、6502 BASICのような初期のソフトウェアは、基本的な機能に絞られているため、構造が比較的シンプルで理解しやすい。特に、プログラミング言語がどのようにして動作するのか、つまり言語処理系の仕組みに興味がある者にとって、実際のインタプリタのソースコードは最高の教科書となる。コンピュータが人間の書いた命令をどのように解釈し、実行していくのかという根本的なプロセスを学ぶことができるだろう。最後に、この出来事は、知識と技術を共有するという現代のオープンソース文化を象徴している。Microsoftはかつてオープンソースに対して批判的な立場を取っていた時期もあったが、近年はその姿勢を大きく転換し、オープンソースコミュニティへの貢献を積極的に行っている。自社の歴史的な資産を、学習や研究のためにコミュニティ全体へ提供するという今回の動きは、その姿勢を明確に示すものと言える。過去の技術遺産を未来の技術者育成のために活用するという、オープンソースの理想的な姿がここにある。

結論として、Microsoftによる「6502 BASIC」のオープンソース化は、単なる昔のソフトウェアの再公開ではない。これは、システムエンジニアを目指す初心者にとって、コンピュータとプログラミングの基本原理を歴史的な文脈とともに学ぶ絶好の機会を提供するものである。ソースコードという一次資料を通じて、コンピュータサイエンスの基礎に触れることで、より深い技術的理解を得るための礎となるだろう。

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