【ITニュース解説】「考え方」を変えたら、悩む時間が減ってプロダクトへの向き合い方が変わった話
ITニュース概要
「世界で一番やさしい考え方の教科書」をきっかけに、システム開発の悩みやプロダクトへの向き合い方が変わった話。考え方を変えることで業務の効率が上がり、日々の仕事が改善される。SEを目指す人も、この思考法を日々の学びや実践に応用できるだろう。
ITニュース解説
システムエンジニア(SE)として働く上で、技術的な知識やスキルはもちろん重要だが、物事をどのように捉え、考えるかという「思考法」も同じくらい、あるいはそれ以上に重要となる。あるSEの経験談として、一冊の書籍「世界で一番やさしい考え方の教科書」との出会いをきっかけに、自身の思考法を大きく見直し、それによって日々の業務における悩みが減り、プロダクトに対する向き合い方も大きく変わったという話が語られている。この経験は、これからSEを目指す初心者にとって、技術学習と並行して身につけるべき重要な視点を提供してくれるだろう。 著者が特に感銘を受け、業務に取り入れることで変化を感じたのは、客観的思考、構造的思考、多角的思考、本質的思考、論理的思考といった、いわゆる基本的な思考法である。これらの思考法をシステム開発の現場でどのように活用できるか、具体的に見ていこう。 まず「客観的思考」だ。SEの仕事では、個人的な感情や思い込みに流されず、事実に基づいて判断することが求められる。例えば、ユーザーから「システムが使いにくい」という漠然としたフィードバックがあった場合、感情的に反発するのではなく、「どのような操作をしたときに」「具体的に何がどのように使いにくかったのか」という事実を、冷静に、具体的な情報として確認することが重要となる。また、システムでバグが発生した際も、「なぜか動かない」と感情的に捉えるのではなく、エラーメッセージ、再現手順、入力データなど、客観的な情報を収集し、共有することで、問題解決の糸口が見つかりやすくなる。感情と事実を切り離して考える習慣は、冷静かつ正確な状況把握と、的確な対応を可能にする。 次に「構造的思考」についてだ。システムは、多くの部品や機能が複雑に組み合わさって構成されている。構造的思考とは、この複雑なシステムや問題を小さな要素に分解し、それぞれの要素が全体の中でどのような役割を果たしているのか、どのように連携しているのかを理解する考え方である。例えば、大規模なシステム開発において、一度に全てを理解しようとすると途方に暮れてしまうだろう。しかし、システムを機能ごとに分割したり、データベース、アプリケーション、ネットワークといった層に分けたりして、それぞれの部分を深く掘り下げていくことで、全体像を把握しやすくなる。この思考法を身につけることで、問題の根本原因を発見しやすくなり、また、システムに変更を加える際の影響範囲を予測しやすくなる。 「多角的思考」も非常に重要だ。これは、一つの物事を複数の異なる視点から捉えることである。システム開発では、開発者自身の視点だけでなく、実際にシステムを使うユーザーの視点、システムの運用・保守を行う担当者の視点、さらにはビジネス的な視点など、様々な立場からシステムを評価する必要がある。例えば、新しい機能を設計する際、開発者としては効率的なコードを書くことに注力しがちだが、ユーザーの視点から見れば操作が複雑になっていないか、運用担当者から見れば監視やメンテナンスが容易か、といった観点も考慮に入れなければならない。多様な視点を取り入れることで、より多くの人に価値を提供し、長く使われるシステムを設計・開発できるようになる。 「本質的思考」とは、表面的な問題解決に留まらず、物事の根本にある原因や目的を深く掘り下げて考えることだ。例えば、「システムが遅い」という問題が発生したとする。一時的にサーバーのスペックを上げることで解決したように見えても、それが本質的な解決策とは限らない。もしかしたら、データベースの設計に非効率な部分があるのかもしれないし、アプリケーションの処理ロジックに問題があるのかもしれない。本質的思考を用いることで、表面的な対処療法ではなく、根本的な原因を取り除き、同様の問題が再発しないような持続的な解決策を見出すことができる。これにより、システムの品質を長期的に向上させることが可能になる。 そして「論理的思考」である。これは、物事を筋道を立てて考え、明確な根拠に基づいて結論を導き出す能力を指す。システム設計の際、なぜそのアーキテクチャを採用するのか、なぜその技術を選定するのか、といった問いに対して、明確で一貫した根拠を示す必要がある。また、プログラムのデバッグにおいても、エラーが発生した状況から考えられる原因を複数洗い出し、仮説を立て、それを一つずつ検証していくプロセスは、まさに論理的思考の典型である。論理的に考えることで、無駄な試行錯誤を減らし、効率的に問題解決を進めることができる。また、自身の考えを他者に正確に伝え、納得してもらうためにも、論理的な説明は不可欠なスキルとなる。 これらの思考法を意識的に業務に取り入れた結果、著者は多くのポジティブな変化を経験したという。まず、問題に直面した際に感情的になることが減り、冷静に状況を分析できるようになった。これにより、不必要に悩む時間が大幅に減少し、前向きな姿勢で問題解決に取り組めるようになった。また、プロダクトに対する見方も変わり、単に技術的な要件を満たすだけでなく、その機能がユーザーにどのような価値を提供するのか、なぜその機能が必要なのかといった、より深いレベルでプロダクトを理解しようと努めるようになった。この変化は、結果としてより良いプロダクト開発に繋がっている。チームメンバーとのコミュニケーションにおいても、客観的で論理的な説明ができるようになったことで、誤解が減り、建設的な議論ができるようになったとも述べている。 システムエンジニアとして成長していくためには、技術学習はもちろん大切だが、それと同時に「どのように考えるか」という思考法を磨き続けることが不可欠である。客観的、構造的、多角的、本質的、論理的といった思考法を意識し、日々の業務の中で実践することで、初心者であっても複雑な問題を解きほぐし、より良いシステムを開発する力が着実に養われる。これらの思考法は、一度身につければどんな開発現場でも役立つ普遍的なスキルであり、SEとして長く活躍していく上で非常に重要な財産となるだろう。常に自分の思考パターンを意識し、より良い考え方を追求する姿勢が、SEとしての成長を加速させる鍵となる。