【ITニュース解説】三菱ケミカル、AVEVAのデータ連携基盤で情報を一元化し、業務効率化と安定操業を強化

三菱ケミカルが、化学プラントのDX（デジタルトランスフォーメーション）を強化するために、AVEVAという会社の「AVEVA Asset Information Management（AIM）」というソフトウェアを導入した。このソフトウェアは、プラント内に散らばっている様々な情報を一箇所に集めて管理し、業務効率の向上と安定操業を支援することを目的としている。

化学プラントは、様々な設備や機器が複雑に組み合わさって稼働している。それぞれの設備は、設計図、取扱説明書、メンテナンス記録、センサーデータなど、多種多様な情報を持っている。従来、これらの情報は、紙の書類、個別のデータベース、担当者の頭の中など、様々な場所に分散して保管されていることが多かった。

このような状況では、必要な情報を探し出すのに時間がかかったり、情報が古くなっていたり、担当者しか知らない情報があったりする。その結果、設備の点検や修理に手間取ったり、トラブルの原因究明が遅れたり、最適な運転方法を見つけ出すのが難しかったりする。

AVEVA AIMは、これらの問題を解決するために、プラント内のあらゆる情報を一元的に管理する機能を提供する。具体的には、以下の様な機能が含まれている。

まず、様々な形式のデータを統合する機能がある。設計図や取扱説明書といったドキュメントファイル、センサーから収集されるリアルタイムデータ、メンテナンス履歴などのデータベース情報など、異なる種類のデータをAIMに取り込むことができる。取り込んだデータは、メタデータと呼ばれる情報（データの種類、作成者、更新日など）とともに整理され、検索しやすい形で保管される。

次に、情報を可視化する機能がある。集められたデータを、グラフや図表、3Dモデルなどを用いてわかりやすく表示することができる。これにより、設備の状況や過去の履歴、異常の兆候などを容易に把握できるようになる。例えば、特定の設備の温度変化をグラフで表示したり、プラント全体の設備配置を3Dモデルで確認したりすることができる。

さらに、情報の共有と連携を促進する機能がある。AIMに登録された情報は、プラント内の関係者が共有できる。これにより、担当者間で情報伝達がスムーズになり、連携が強化される。また、他のシステムとの連携も可能であり、例えば、生産管理システムやERPシステムなどと連携することで、プラント全体の業務プロセスを最適化することができる。

三菱ケミカルは、まず茨城事業所にAVEVA AIMを導入した。この事業所では、化学製品の製造を行っており、多くの設備と複雑なプロセスが存在する。AIMの導入によって、設備関連の情報が一元管理されるようになり、点検作業時間の短縮、トラブル発生時の迅速な対応、データに基づいた効率的な運転が可能になったという。

具体的には、設備のメンテナンスを行う際に、AIMを使って過去のメンテナンス記録や設計図をすぐに参照できるようになった。これにより、作業者は迅速に状況を把握し、適切な処置を講じることができる。また、センサーデータと過去の運転データを比較することで、設備の異常を早期に発見し、故障を未然に防ぐことができるようになった。

さらに、AIMに蓄積されたデータを分析することで、設備の運転効率を改善するためのヒントを得ることができる。例えば、特定の設備の運転条件を変えることで、エネルギー消費量を削減したり、製品の品質を向上させたりすることができる。

このように、AVEVA AIMの導入によって、三菱ケミカルは、業務効率化、安定操業の強化、データに基づいた意思決定の促進といった効果を得ている。これは、化学プラントにおけるDXの成功事例と言える。

システムエンジニアを目指す人が今回の事例から学べることは多い。まず、実際の産業現場では、様々な種類のデータが複雑に絡み合っているということ。これらのデータを統合し、活用するためには、データ管理基盤の構築が不可欠である。

次に、単にデータを集めるだけでなく、それを可視化し、共有することが重要であるということ。データをわかりやすく表現することで、関係者が状況を把握しやすくなり、迅速な意思決定につながる。

さらに、現場のニーズを的確に捉え、最適なシステムを構築する必要があるということ。三菱ケミカルの事例では、AVEVA AIMが化学プラントの特性に合致しており、効果を発揮している。

今回の事例は、システムエンジニアが、現場の課題を解決するために、どのようにIT技術を活用できるかを示す好例と言えるだろう。今後、様々な産業分野でDXが進むにつれて、このようなデータ連携基盤の重要性はますます高まっていくと考えられる。