【ITニュース解説】第236回 MySQLで即時に完了するNative ALTER TABLE操作のまとめ

2024年12月24日に「Gihyo.jp」が公開したITニュース「第236回 MySQLで即時に完了するNative ALTER TABLE操作のまとめ」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

MySQLのALTER TABLE操作には、データベースの構造変更に時間がかかる場合と、瞬時に完了するNativeな操作がある。この記事では、データ量が多くても即座に終わるNative ALTER TABLE操作の種類と、それらの利用法について、システムエンジニアを目指す初心者にも分かりやすく解説しまとめている。

ITニュース解説

システムエンジニアを目指す上で、データベースの知識は非常に重要だ。特にWebサービスでは、MySQLのようなリレーショナルデータベースが広く利用されている。データベースの運用では、サービスの成長に合わせてテーブルの構造を変更する必要が生じることがよくある。例えば、新しい情報を保存するためにカラムを追加したり、検索性能を向上させるためにインデックスを作成したりといった作業だ。このようなテーブル構造の変更を行うSQL文を、まとめて「ALTER TABLE」と呼ぶ。

しかし、このALTER TABLE操作は、テーブルに大量のデータが格納されている場合、非常に時間がかかるという大きな課題を抱えている。一般的なALTER TABLEの実行プロセスは、次のような手順を踏むことが多い。まず、元のテーブルと同じ構造を持つ新しい空のテーブルを一時的に作成する。次に、元のテーブルから新しいテーブルへ、すべてのデータをコピーする。このデータコピーの途中で、元のテーブルへの書き込み操作が行われると、コピー中のデータと元のテーブルのデータとの間で不整合が生じる可能性があるため、多くの場合は元のテーブルに対する書き込み操作を一時的にロックしたり、サービスを停止したりする必要がある。データコピーが完了したら、元のテーブルを削除し、新しいテーブルの名前を元のテーブルの名前に変更する。この一連の作業は、テーブルのサイズが大きくなればなるほど、そしてテーブルへのアクセス頻度が高ければ高いほど、長時間にわたるサービス停止や性能劣化を引き起こす可能性があり、システム運用者にとって大きな負担となっていた。

このような背景から、MySQLの開発チームは、特定のALTER TABLE操作をより高速に、そしてサービスへの影響を最小限に抑えて実行できる仕組みを導入してきた。それが、今回のテーマである「即時に完了するNative ALTER TABLE操作」だ。Nativeという言葉は、MySQLの内部処理に最適化されており、効率的に実行されることを意味する。つまり、通常の時間がかかるALTER TABLEとは異なり、テーブルのコピーを伴わず、データファイル全体を再構築することなく、瞬時またはごく短時間で完了する操作群を指している。

MySQL、特にInnoDBストレージエンジンでは、ALTER TABLE操作にALGORITHM句を指定することで、その実行方法を制御できる場合がある。このALGORITHM句には、主にCOPYINPLACE、そしてINSTANTという三つのモードが存在する。COPYは前述したように、一時的なテーブルを作成してデータをコピーする従来の方式であり、最も時間がかかる。一方、INSTANTは最も高速なモードで、テーブルのメタデータ(テーブルの構造に関する情報)のみを変更し、データファイル自体にはほとんど触れないため、ほぼ瞬時に完了する。INPLACEINSTANTほどではないものの、COPYに比べてはるかに高速で、テーブルのデータファイルを直接変更するものの、新しいテーブルへのデータコピーは行わないため、サービス停止時間を大幅に短縮できる。

具体的に、どのようなALTER TABLE操作が即時に完了するINSTANTモードで実行できるのだろうか。MySQL 8.0以降のバージョンでは、以下のような操作がINSTANTで実行可能となった。例えば、テーブルに対するコメントの追加や変更、カラムのデフォルト値の変更(ただしNULLを許可するカラムに限るなど一部制約あり)、カラムの属性にVISIBLEまたはINVISIBLEを追加・変更する操作、既存のカラム名を変更する操作などだ。これらの操作は、テーブルの実際のデータには影響を与えず、テーブルの定義情報だけを更新すれば良いため、瞬時に処理が完了する。これは、テーブルの構造を定義するファイル(.frmファイルなど)や、InnoDBのデータディクショナリにあるメタデータを更新するだけで済むためだ。サービス稼働中にこれらの変更を行っても、アプリケーションからの読み書きにほとんど影響を与えず、非常に便利だ。

また、INPLACEモードで実行される操作も多岐にわたる。例えば、既存のテーブルに新しいインデックスを追加したり削除したりする操作、カラムのNULL制約を変更する操作(NOT NULLからNULLへ、またはその逆)、カラムのデータ型を互換性のある範囲で変更する操作(例えば、整数型からより大きな整数型へ)、カラムの長さを短くする操作(データ損失がないことを確認できる場合)などがこれに該当する。これらの操作はデータファイルに何らかの変更を加える必要があるものの、テーブル全体をコピーするのではなく、既存のデータファイルを直接修正するため、COPYモードよりもはるかに高速だ。INPLACEモードでは、多くの場合、ALTER TABLEの実行中に元のテーブルへの読み書きを許可する「オンラインDDL」という仕組みが活用されるため、サービスへの影響を最小限に抑えることができる。

即時に完了するALTER TABLE操作を理解し活用することは、現代のシステム運用において極めて重要だ。これらの機能を利用することで、サービス停止時間を限りなくゼロに近づけ、システムの可用性を高めることができる。開発者は、新しい機能を追加するためにデータベーススキーマを変更する際も、より迅速かつ安全に作業を進められるようになる。運用担当者も、大規模なテーブルの変更に際して計画的な長時間停止を設ける必要がなくなり、運用負荷を大幅に軽減できる。これは、リリースサイクルの短縮にも繋がり、ビジネスの変化に素早く対応できるアジリティ(俊敏性)をもたらす。

しかし、すべてのALTER TABLE操作が即時に、あるいはINPLACEで実行できるわけではない。例えば、カラムのデータ型を互換性のないものに変更する場合や、主キーを変更するような複雑な操作は、依然としてテーブルコピーが必要なCOPYモードで実行されることが多い。また、どの操作がどのモードで実行されるかは、MySQLのバージョンや使用しているストレージエンジン(主にInnoDB)の機能によって異なるため、常に最新の公式ドキュメントで確認することが不可欠だ。誤った認識でALTER TABLEを実行すると、予期せぬ長時間停止やデータ不整合を招く可能性もあるため、事前の調査とテストは決して怠ってはならない。

まとめると、MySQLが提供する即時完了するNative ALTER TABLE操作は、大規模なデータベースを運用する上で非常に強力なツールだ。これらの機能を理解し、適切に利用することで、システムエンジニアはより堅牢で、より運用しやすいシステムを構築・維持できるようになる。進化を続けるデータベース技術の動向を常に把握し、日々の業務に活かしていく姿勢が、これからのシステムエンジニアには求められている。

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