【ITニュース解説】[25卒] キャッチアップをするために新人エンジニアが生成AIとレスバしてみた話
ITニュース概要
新人エンジニアが、配属後の製品コード理解に苦戦。文系卒の筆者が、生成AIとの対話(レスバ)を通して疑問を解消し、コードキャッチアップを進める方法を紹介する。システム開発現場での実践的な学習法だ。
ITニュース解説
新人エンジニアが直面する大きな課題の一つに、配属先のプロジェクトで既存の膨大なコードベースを理解することがある。特に、文系出身者やプログラミング経験が浅い新卒の場合、製品がどのように機能しているのか、コードの一つ一つがどのような役割を果たしているのかを把握するのは非常に困難な作業となり、多くの新人がその複雑さに圧倒されがちだ。このような状況下で、一人の新人エンジニアが生成AI、具体的にはChatGPTのようなツールを、既存コードの理解を深めるための強力な学習パートナーとして活用した事例がある。 この新人エンジニアは、まず理解できないコードブロックや、製品開発中に遭遇したエラーメッセージを、生成AIにそのまま提示することから学習を始めた。生成AIは、提示されたコードの機能概要や、エラーが発生する可能性のある原因について、迅速かつ概略的な説明や一般的な解決策を提供する。しかし、重要なのはここでAIの回答を鵜呑みにせず、さらに深く掘り下げていく点にある。例えば、AIが示した説明に対して「なぜこの部分でこのような処理が必要なのか」「このコードの別の書き方はあるか、あるとすればそれぞれのメリットとデメリットは何か」といった具体的な疑問を投げかける。 この一連の質問と回答のやり取りは、あたかも人間同士が議論を交わすように進められるため、記事では「レスバ」(レスポンスバトル)と表現されている。この対話を通じて、新人エンジニアは単にコードの表面的な意味を知るだけでなく、その背景にある設計思想や、なぜその実装が選択されたのかという深い理由に迫ることができる。AIの回答が自分の理解と食い違ったり、不明瞭な点があったりする場合には、さらに質問を重ねて明確化を図る。時にはAIがあえて間違った情報を生成することがあるため、それを自分で見つけ出し、正しい情報源を探す過程も重要な学習となる。このプロセスは、自分の知識の穴を発見し、それを埋めるための具体的な行動を促す。 生成AIとのこのような能動的な対話を通じて得られるメリットは多岐にわたる。まず、コード理解の速度と深さが格段に向上する。一人でドキュメントを読み込んだり、コードを追いかけたりするよりも、疑問が生じたときに即座に質問し、多角的な視点から回答を得られるため、学習効率が大きく高まる。次に、エンジニアとして非常に重要な「質問力」が磨かれる。曖昧な表現ではなく、何が分からなくて何を解決したいのかを具体的に言語化し、AIに伝える練習を繰り返すことで、的確な質問を構築する能力が向上する。これは、チームメンバーや先輩、顧客とのコミュニケーションにおいても非常に役立つスキルとなるだろう。さらに、AIが提供する情報が常に完璧ではないことを認識し、公式ドキュメントや信頼できる技術記事を参照して情報の正確性を検証する習慣が身につく。これにより、与えられた情報を鵜呑みにせず、自ら情報を吟味し、判断する「情報リテラシー」が向上する。 もちろん、生成AIの活用には注意点も存在する。生成AIは時に誤った情報を生成する「ハルシネーション」と呼ばれる現象を起こす可能性があるため、AIの回答を盲目的に信じるのは危険だ。必ず複数の情報源と照らし合わせたり、自分の理解と論理的に矛盾がないかを検証したりする姿勢が求められる。また、AIに質問するだけで思考停止に陥ってしまうと、本来自分で考えるべき機会を失い、深い学習には繋がらない。AIはあくまで学習を補助するツールであり、最終的にコードを理解し、問題を解決するのは自分自身であるという意識が重要だ。 この新人エンジニアの事例は、これからシステムエンジニアを目指す初心者にとっても大いに参考になる。生成AIは、単なる最新技術というだけでなく、具体的な学習ツールとして、既存コードのキャッチアップや新たな技術習得において強力なパートナーとなり得ることを示している。能動的にAIと対話し、その限界を理解した上で活用することで、学習効率を高め、より深い理解へと導き、エンジニアとして不可欠な多角的なスキルを習得する手助けをしてくれるだろう。未来のエンジニアは、このような新しいツールを効果的に使いこなし、自らの学習能力を最大化していくことが求められる。